「資産運用業高度化プログレスレポート2023」 のファンドラップ、投資信託の指摘

金融庁は、令和5年4月21日「資産運用業高度化プログレスレポート2023」として取りまとめました。そのうち、ファンドラップ等、私から見て問題のある商品について確認します。


わが国の販売会社が、アドバイスに対して対価を得るビジネスモデルへの転換を目指すのであれば、顧客の資産運用の目的の実現を支援するアドバイス提供のための人材育成やツール開発に取り組むとともに、営業現場が長期的な視点で顧客へのアドバイスを提供できる人事・評価制度となっているか検証する必要がある。

ファンドラップの付加価値の明確化

貯蓄から資産形成への移行をサステナブルな形で進めるには、金融機関が顧客の資産形成に資するアドバイスを適切に提供し、顧客資産の持続的な成長によって金融機関の収入も増える、という仕組みを構築する必要がある。ファンドラップの提供は、金融機関各社がそうした方向性を目指すための取組みであると考えられる。近年、ファンドラップの提供金融機関数、残高はともに増加しており、2022年12月末の提供金融機関数は23社、残高合計は13兆9,030億円(前年同期比7%増、日本投資顧問業協会調べ)となっている。一部の提供金融機関は、最低利用金額を100万円に設定するなど、マス向けにサービスの提供範囲を拡大している。

しかしながら、幅広い投資家に対して提供されることを目指すサービスとしては、ファンドラップには、現状、以下のような課題もある。 ① 複数の投資信託を組み合わせた商品なのか、アドバイスも含むサービスなのかが明らかではないものも少なくない。 ② 顧客が負担する手数料が、運用ポートフォリオの提供以外にどのような付加価値に対する対価なのかの説明が十分でなければ、投資家はコスト負担に見合った便益を得られていないと感じ、顧客満足度の低下に繋がる可能性がある。一部で提供付加価値の説明や手数料構造の定義と明確化に向けた取組みが進んではいるものの、業界全体では、説明が十分ではない例も見受けられる。

③ 運用体制やリスク許容度に応じた運用コース別のコスト控除後のパフォーマンス、手数料の定義・構成等の重要情報が、各社ホームページで公開されていないため、投資家の裾野が広がっているにも関わらず、投資家は、金融機関のサービスの内容を比較することが出来ない。一方、一部の金融機関では、複数金融機関で連携して、コスト控除後のパフォーマンスや推定リスクを開示する等、サービスの透明性を確保しているところもある。

金融機関が、今後、ファンドラップの普及・拡大を目指すにあたっては、バランス型の投資信託との付加価値の相違を含むサービスの具体的内容を明確化するとともに、運用体制やコース別のコスト控除後のパフォーマンス、顧客が負担するコストの定義・構成等に関する情報開示の充実に取り組むことが期待される。

投資信託の手数料の明確化

わが国で投資信託を購入する顧客が負担する主なコストには、購入時に販売会社に支払う「購入時手数料」に加え、運用期間中、信託財産の中から残高に応じて間接的に支払う「信託報酬」がある。後者は運用管理にかかる費用等をまかなうもので、資産運用会社、販売会社、信託銀行の3者に分配されている。

信託報酬のうち、投資信託の財産の保管・管理、指図の実行等を行う信託銀行の取り分は、通常、信託財産の残高の0.1%未満であり、残りの信託報酬のうち、資産運用会社取り分である運用会社報酬と販売会社取り分である代行手数料は、おおよそ半分ずつとなっていることが多い。また、マザーファンドが同じで、販売チャネルが異なる場合であっても、ETFやDC専用商品、ラップ専用商品を除き、信託報酬の水準は変わらない。

 

 

投資信託の交付目論見書によると、代行手数料は、「購入後の運用報告書等各種書類の送付や口座内でのファンドの管理、購入後の情報提供等」の対価と位置づけられ、パッシブ運用であってもアクティブ運用であっても説明は同じであることが多い。しかしながら、通常、アクティブ運用の投資信託はパッシブ運用の投資信託と比べ、信託報酬が高く設定されており、代行手数料も比例的に高くなる。この点については、「アクティブ運用の方が、基準価額の変動が大きく、顧客へのアフターフォローに労力を要するため」との説明もあるが、全ての販売会社で、アクティブ運用の投資信託を購入した顧客へのアフターフォローに同程度のリソースを割いているわけではなく、販売会社のアフターフォローの頻度等に応じた代行手数料の設定とはなっていないようである。 例えば、対面や電話での顧客対応が原則ないインターネット専業証券で販売されている投資信託についても、同じ投資信託であれば代行手数料は対面販売の場合と信託財産残高に対して同率となっている。

なお、米国籍の米国株式に投資を行うミューチュアル・ファンドについて、残高に対するファンドからの販売会社取り分(12b-1手数料)の平均値を調査したところ、アクティブ運用もパッシブ運用も同一であった。

更に、米国では、販売会社に対する報酬をファンドの運営管理費用から支払うのではなく、販売会社がアドバイスに対して残高連動手数料を取る方式が主流となっている。このため、ファンドの運営管理費用から販売会社に支払う12b-1手数料が含まれる「バンドル型」のミューチュアル・ファンドは減少している。代わりに、12b-1手数料をゼロにした「アンバンドル型」のミューチュアル・ファンドが主流となり、残高連動手数料の設定は、販売会社やフィナンシャル・アドバイザーによって異なり、差別化されている。

「顧客本位の業務運営に関する原則」の原則4において、「金融事業者は、名目を問わず、顧客が負担する手数料その他の費用の詳細を、当該手数料等がどのようなサービスの対価に関するものかを含め、顧客が理解できるよう情報提供すべきである。」との記載がある。販売会社及び資産運用会社は、当該原則に沿って、代行手数料の位置づけを明確化することが望ましい。

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