◎今日のグラフ:財形の動向
財形は貯めるのが得意でも増やすのが不得意
最近財形(「勤労者財産形成促進制度」)についての記事を新聞、テレビなどのマスメディアで、ほとんど見なくなりました。また、インターネットでも話題に上ることがあまり多くありません。このグラフには、「財形貯蓄の利用件数・貯蓄残高は引き続き減少の傾向にあります。」と書かれています。その理由は何でしょうか。この制度は、給与天引きなので、貯めるのは得意なのですが、その後の増やすことに優位性がないのではないかと思います。昭和の時代には利回りが5%を超えていた時代もあったのですが、現在の利回りは1.0%から1.5%程度です。iDeCoやつみたてNISAが、低コストのインデックスファンドを用意して、貯めるだけでなく、増やす方にも力を入れている状況下では、なかなか現状を維持することさえ難しいと思われます。
しかし、もし、ユーザーのニーズとして、近い将来、支出する金額と時期が決まっていて、その支払いに向けて毎月積み立てたい場合には、一つの有効な貯蓄方法の一つかもしれません。しかも一定期間以上貯めれば、元本割れしません。しかし、利回り1%程度では、あまりに低水準ですから、もし財形を利用する場合でも、その割合は少なくして、長期でインデックスファンドを積み立てる方法が賢明だと思います。
◎今日のテーマ:資産運用のモデルパターン⑪
<昨日に引き続いて、資産運用のモデルパターンの説明をします。>
⑧ 財形、小規模企業共済、国民年金基金
財形(ざいけい)
財形とは勤労者財産形成貯蓄制度のことです。
財形の特徴
- 給与から天引きされますので、忘れている間にも増えていきます。
- 銀行、生命保険会社などの商品があります。ただし、自分の勤めている会社が、この制度を導入していないと加入できません。また、転職した場合に、転職先の会社が導入していない場合は、自動的に解約になります。
- 銀行は定期預金の金利で運用しますのできわめて低利となります。従って、銀行の財形には入らない方が得策です。財形をするなら、生命保険会社の方が金利が良いので、もし自分の勤めている会社に生命保険の財形がなければ、財形はあきらめて、他の貯蓄・資産運用を考えた方が良いと思います。
- 財形には、住宅財形、年金財形、一般財形があります。
- 保険会社の住宅財形は、払込保険料累計550万円までが非課税です。年金財形は、払込険料385万円までが非課税です。
- 生命保険会社の場合、2017年現在、金利は大手保険会社が1.0%、中小保険会社が1.5%です。なお、1980年代以前は予定金利が5%以上の時もありましたから、現在のような超低金利の時代が終われば、もう少し金利は上昇することが期待できそうです。ちなみに銀行の場合は定期預金の金利ですから、ほぼゼロです。
- 中長期で行えば元本割れは有りません。
財形を行うかどうかの判断基準
- 元本割れしない金融資産がどうしても欲しいか。それは、銀行預金でも構わないか。これらのことを検討すべきです。
- 給与天引きでなければ、なかなか貯蓄ができそうにないか。使ってしまうくらいなら、超低金利に甘んじられるかを考えるべきです。
- 現在のような低金利の状況で、金利1.0~1.5%の金利でも我慢できるか。外国株式の投信積立との利回りを比較すべきです。
財形を行う場合の留意点
- 元本割れが原則的にないのですが、ETFやインデックスファンドと比べて金利が大幅に低いことから、貯蓄全体の1割~2割の範囲内に収めること。
- 銀行の財形ではなく、保険会社の財形にすること。
- 加入する前に予定金利を確認して、各社を比較した後に入ること。
変動10年との比較
元本割れのない商品としては、変動10年という国債があります。この商品は現在の低金利の状況では、金利はほぼゼロですから、それに比べれば、金利が1%以上ある保険会社の財形貯蓄の方が有利だと思います。
ちなみに私の場合の財形の利用
私は、1980年代から富国生命の財形を利用しました。最初は、住宅財形を申し込み、払込金額が550万円になったところで、一般財形に切り替えて引き続き払い込みました。合計で数千万の払込になりました。50歳で住宅財形と一般財形を全額払いだして家を購入しました。同時に財形年金に切り替えました。金利は1980年代、5%を超えていましたが、その後徐々に減少して、現在は1.5%です。現在は60歳を超えたので、払い込みはせず、財形年金を受給しています。この財形年金の受給には税金がかかりません。1980年代には日米ともにETFは生まれていませんでしたし、1990年代も日本にはETFは存在していませんでしたので、私の場合は財形貯蓄一本やりでした。もし、1980年代にiDeco、つみたてNISA、ETFが存在していたら、私の資産は現在の2倍以上になっていたでしょう。この3つの商品はできるだけ活用したいものです。
小規模企業共済
小規模企業の経営者などが、廃業時の生活資金などのために積み立てる制度です。掛金が全額所得控除できるなどの税制メリットがある、小規模企業の経営者のための「退職金制度」です。ただし、予定金利は2017年現在で1.0%ですから、あまり高くありません。これだけに頼らず、つみたてNISA、投信積立などの制度、商品も利用したうえで、総合的に考えた方が良いかもしれません。
国民年金基金
国民年金基金制度は、公的な年金で、自営業者など国民年金の第1号被保険者の老後の所得保障の役割を担うものです。ただし、予定金利は2017年現在で1.5%ですから、あまり高くありません。これだけに頼らず、つみたてNISA、投信積立などの制度、商品も利用したうえで、総合的に考えた方が良いかもしれません。
(おしまい)