老後資金2000万円報告書5

◎今日のテーマ:老後資金2000万円報告書5

昨日に続いて資産形成に関する金融庁の報告書を検討します。

資産形成・資産承継制度の充実

「ライフステージを通じた長期の資産形成における長期・積立・分散投資の有効性についてはこれまで述べてきたとおりであるが、こうした長期に亘る資産形成を支援する制度として、税制面で一定の優遇が行われている「つみたて NISA」と「iDeCo」がある。
つみたて NISA は年間 40 万円までの積立投資について運用益が非課税(2037 年までの時限措置)であり、手数料等が安い公募株式投資信託商品などに限定されている。20 歳以上の国内居住者であれば誰でも利用でき、その資産はいつでも引き出し可能である。iDeCo は、掛金の上限は年間 14.4万円~81.6 万円であり、運用益は課税停止中であることに加え、掛金も全額所得控除、年金受給時も一定の税優遇がある。商品は各金融機関等により異なるが、国内外の株式・債券や投資信託など幅広く取り扱う。加入可能年齢は 20 歳から 60 歳までとなっており、その資産は年金という制度趣旨に鑑み、60 歳になるまで中途引き出しは原則不可となっている。」

つみたてNISA、 iDeCo

「ライフイベントに応じて引出すことが可能なつみたて NISA と、年金制度として所得控除が認められている iDeCo とは、両者を併用することで、住宅購入などの計画的に準備が必要な支出や、病気、事故、失業などの予想外の支出への備えをしつつ、老後に向けた資産形成が可能となるものである。よって、お互いが補完しあう関係として活用が進むことが望ましい。このように、制度面では、個人の資産形成を促す制度が相応に整備されてきているといえる。
また、保有可能期間は5年間と短いが同じく個人の資産形成に資する制度として一般 NISA が存在する。制度開始からの5年間で口座数が 1,100 万口座を上回り、つみたて NISA に先行して個人投資家の増加に寄与してきた。これから長寿社会を迎えるに当たって、退職金の受け皿としての機能も期待される。
つみたて NISA と iDeCo の両制度ともまずは順調に利用者が増加しているものの、その利用は国民の一部に留まっている。わが国の成人人口を考えれば、今後さらに広く普及が進む余地も大きいが、未だ十分に制度の存在を知らない層や、知っていたとしてもその意義を十分理解していない層も多いと考えられる。金融庁と厚生労働省は、それぞれが連携し、今後より一層の制度の周知に努めるとともに、若年期から資産形成に取り組むことの重要性についても、広報していくべきである。」

そうした普及に向けた取組みと並行して、つみたて NISA、iDeCo ともに、利用者の声を聞きながら、制度そのものの改善にも努めていくべきである。つみたて NISA については、まずもって国民が長期のライフプランに沿った資産形成に安心して活用できるよう、時限を撤廃し、恒久的な措置とすることが強く望まれる。