過去100年のアメリカ株式相場を10年毎の単位で考える

40年後

今年は2020年代の最初の年です。2020年の株式相場はどうなるのか、という見方は1年という短期の見方です。個人投資家にとって大切なのは、そんな短期ではなく、10年後、20年後、30年後、40年後です。60歳代半ばの私にとって、40年後は100歳を超えていますから、関係ないと思われる人もいるでしょうけど、自分の子供たちに資産を相続することを考えれば、関係ないわけでは有りません。私の両親も、連れ合いの両親も、私たちの家を建てるときには1千万円、2千万円単位で応援してくれました。親から相続された財産も多少は私たちの老後の安心材料として役立っています。親というものはありがたいものです。

40年経つとどういうことが起こるのでしょうか。

その前に72の法則をおさらいしたいと思います。

72の法則

お金が2倍になる期間が簡単にわかる便利な算式のことです。

お金が2倍になる期間 ≒ 72 ÷ 金利

たとえば、外国株式のETFを中心に複利で運用すると10年後にはどうなるかという計算をします。計算を簡単にするために、年率7.2%で運用できるとします。7.2%というと非常に高く思われるかもしれませんが、SPY(アメリカSPDRのS&P500のETF)の設定来過去27年間の平均年率は9.65%です。SPYをメインにして、それ以外に日本やヨーロッパのETFで運用すれば、年率7.2%というリターンは、あながち非現実的な数字では有りません。この数字を上の式に入れると、

お金が2倍になる期間 ≒ 72 ÷ 7.2% =10年間

ということになります。10年間で2倍ですから、20年で4倍、30年で8倍。40年で16倍になります。1千万円を40年間、複利で運用すれば1億6千万円になります。そこまでうまくいかなくても、10倍の1億円は難しい数字ではないかも知れません。

それでは、SPYに連動しているS&P500の過去の動きは実際にどうだったのでしょうか。

S&P500各の10年代ごとのリターンの内訳(年率換算)

総合リターン 配当
2010年代 13.6% 2.3%
2000年代 -0.9% 1.8%
1990年代 18.2% 2.9%
1980年代 17.5% 5.0%
1970年代 5.9% 4.3%
1960年代 7.8% 3.4%
1950年代 19.3% 5.8%
1940年代 9.5% 6.5%
1930年代 -3.4% 1.9%
1920年代 14.6% 5.4%
1910年代 4.5% 5.9%
1900年代 9.9% 4.4%

2010年代、2000年代

過去10年間の2010年代の総合リターン(年率換算)は13.6%でした。先ほどの7.2%の2倍近い数字ですが、それには理由があって、スタートが低すぎたのです。2008年にリーマンショックが起きて、2009年代半ばに株価が底値を付けました。2010年の初めにはまだ相当低い水準でしたから、2010年代の10年間は結果的に高いリターンになりました。逆に2000年代はスタートがITバブル、最後がリーマンショックだったので、年率換算で-0.9%というひどい数字です。従って、その20年間を平均してみると、6.4%になりますから、妥当な水準に落ち着きます。

1990年代

1990年代は、マイクロソフト社のWindows95が登場し、IT通信が爆発的に躍進した時代でした。当時、「自動車の普及と同じような産業の革命をもたらす、という説明を聞いたとき、「何を馬鹿なことを言っているのか。自動車ほどすごい革命をもたらすはずはない。」と私は思いました。しかし現実は、その通りになりつつあります。その1990年代は年率で18.2%の年率リターンだったのです。それは7.2%を遥かに上回っています。

1980年代

1980年代は、日本が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われ、バブルに浮かれていた時代です。逆にアメリカは、高インフレ、双子の赤字に苦しんでいました。日米貿易摩擦が激しく、ジャパン・バッシングが激しかった時代です。金利が十数パーセントだった時代でしたので、株式はそれを上回るリターンでなければいけません。配当も5.0%という高い水準でした。

1970年代

1970年代は、ベトナム戦争の後遺症と無理を重ねた宇宙開発競争の結果、「株式は死んだ」といわれるほど、株式相場が低迷した時代でした。総合リターンは年率で5.9%ですが、配当が4.3%なので、株価自体はほとんど上昇しなかったことが分かります。

1960年代、1950年代

1950年代は世界の先進国の中で唯一戦争の被害をほとんど受けなかったため、19.3%という圧倒的なリターンをもたらしました。この時代の繁栄は、映画「バック・トゥー・ザ・フューチャー」や「アメリカン・グラフィティ―」で描かれたように、我が世の春を謳歌していた時代でした。しかし1960年代に、ベトナム戦争がはじまり、一方で、日本、ドイツなどの敗戦国が必死で経済復興に努めた結果、製品のシェアを奪われ、アメリカの繁栄に陰りが見え始めました。そして1970年代の株式低迷時代に入るのです。

1940年代

第2次世界大戦中の1940年代も、戦争の被害が少なかったため、総合リターンは9.5%と比較的高めでした。

1930年代、1920年代

1929年10月に起きた世界大恐慌の後遺症で、1930年代は総合リターンが年率ー3.4%で低迷しましたが、1920年代の14.6%と平均すれば5.6%と、当時としてはある程度の水準だったと思えます。

アメリカの100年を振り変えると、1929年代の世界大恐慌、2008年のリーマンショック以外の時期は、一桁台後半の年率だったようです。2020年代の10年間に、この流れが突然止まるとは考えにくいのではないでしょうか。