顧客本位の業務運営に関する原則

40年の主流商品

私は、40年以上前から給料をもらい始めてから、銀行預金、財形貯蓄、公社債投信、一時払い養老保険、転換社債、ワリコー、企業型確定拠出年金、従業員持株会、個別株式、日本株式ETF、外国株式ETF、MMF、MRF、外貨MMF、外国株式インデックスファンド、NISA、つみたてNISA、生命保険、団体生命保険等数多くの金融商品を購入してきました。

業務上の経験

一方で、私は従業員持株会理事長、確定給付年金制度および確定拠出年金制度のの人事部門の責任者、厚生年金基金の役員、協同組合における各種保険商品の事務局も担当してきました。

儲けているのは誰?

これだけ多くの金融商品に携わってくると、誰がどこでどのくらい儲けているのかが、少しずつ分かって来ました。

ETFとインデックスファンドがベスト

顧客にとって、一番実質的リターンが多いのは、ネット証券のETFとインデックスファンドです。この商品は、金融機関の中抜きがほとんど行われていません。私の金融資産の8割はETF、1割はインデックスファンド、残りの1割は預金、MRF、外貨MMFです。

銀行には近づかない

一方で、金融機関に中抜きされて実質的なリターンが少ないのが、銀行の保険、保険会社の保険、証券会社のアクティブファンドなどです。

中抜き

今から20年以上前は、中抜きされていない商品は、個別株式以外にはほとんどありませんでした。ただし、この個別株式についても、証券会社の営業の勧めで買い替えを頻繁に行うと、売買手数料が発生して証券会社に儲けられてしまいます。

期待リターンは5%

現在でも、内外のETF、インデックスファンドを購入して、バイ・アンド・ホールドを貫けば、中抜きをされることなく、リターンは5%程度期待できます。しかし、金融機関の誘いに乗ってしまうと、顧客本位ではなく、金融機関本位の営業によって、ほとんどを金融機関に持っていかれてしまいます。

フィデューシャリー・デューティー

平成 28 年4月 19 日の金融審議会総会において、金融担当大臣より、「情報技術の進展その他の市場・取引所を取り巻く環境の変化を踏まえ、経済の持続的な成長及び国民の安定的な資産形成を支えるべく、日本の市場・取引所を巡る諸問題について、幅広く検討を行うこと」との諮問が行われました。この諮問を受けて、金融審議会に市場ワーキング・グループが設置され、国民の安定的な資産形成と顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)等について審議が行われたのです。

顧客本位の業務運営に関する原則

その内容を見てみましょう

【顧客本位の業務運営に関する方針の策定・公表等】

原則1.金融事業者は、顧客本位の業務運営を実現するための明確な方針を策定・公表するとともに、当該方針に係る取組状況を定期的に公表すべきである。当該方針は、より良い業務運営を実現するため、定期的に見直されるべきである。

【感想】:書いてあることは、なかなか良いと思いますが、顧客が実際に公表されたものを見ることはあるのでしょうか。こういったことを、わかりやすく解説するのがメディアの仕事だと思うのですが、新聞・雑誌などは広告主である金融機関の方に目を向けていますので、一般消費者向けの説明はしてくれそうもありません。新聞・雑誌等、メディアの方々は、顧客に向かって、顧客の役に立つ情報を分かりやすく伝えてほしいものです。

【顧客の最善の利益の追求】

原則2.金融事業者は、高度の専門性と職業倫理を保持し、顧客に対して誠実・公正に業務を行い、顧客の最善の利益を図るべきである。金融事業者は、こうした業務運営が企業文化として定着するよう努めるべきである。

【感想】:「顧客の最善の利益」を図ってくれるとありがたいのですが、実際には、金融機関は社員に高い給料を払わなければなりませんし、株式会社は利益を上げなければなりません。そういった企業の中で、例外として上げられるのがアメリカのバンガード社です。バンガード社のホームページには以下の説明があります。

「バンガード・インベストメンツ・ジャパン株式会社の親会社であるザ・バンガード・グループ・インクは、自らの運用する米国籍ファンドおよびETF(上場投資信託)によって所有されています。そして、これらのファンドを所有しているのは、ファンドへの出資者(投資家)です。ファンド運用会社がファンドの出資者(投資家)によって所有される構造は、バンガードと投資家の皆様の利益を合致させます。日本においても、バンガードのミッションに則り、プロの機関投資家、また個人投資家と接点を持つ外部の運用機関・販売機関との協力のもと、投資家のニーズに応える商品を開発しています。」

株式会社は利益を上げると、その利益は株主に還元されますが、バンガード社は、利益を上げると、それがETF等の所有者に還元されるのです。ですから、ETF所有者と株主の利益は相反しないのです。日本の生命保険会社も、相互会社なので、バンガード社と同じ仕組みですが、実際にはバンガード社の経営方針とは図分と違っています。

【利益相反の適切な管理】

原則3.金融事業者は、取引における顧客との利益相反の可能性について正確に把握し、利益相反の可能性がある場合には、当該利益相反を適切に管理すべきである。金融事業者は、そのための具体的な対応方針をあらかじめ策定すべきである。

【感想】:金融機関は、法に触れないギリギリの範囲内で顧客の利益をかすめ取っていますが、そのギリギリの常識の無かった郵便局は、集団で壁を乗り越えてしまいました。営業の口車に乗ってはいけません。

【手数料等の明確化】

原則4.金融事業者は、名目を問わず、顧客が負担する手数料その他の費用の詳細を、当該手数料等がどのようなサービスの対価に関するものかを含め、顧客が理解できるよう情報提供すべきである。

【感想】:手数料は各種報告書の後ろの方のページに小さい字で書くのではなく、1ページ目に大きい字で書いてほしいものです。

【重要な情報の分かりやすい提供】

原則5.金融事業者は、顧客との情報の非対称性があることを踏まえ、上記原則4に示された事項のほか、金融商品・サービスの販売・推奨等に係る重要な情報を顧客が理解できるよう分かりやすく提供すべきである。

【感想】:金融事業者には努力をしてほしいのですが、顧客の方も、ETF、インデックスファンド等、優良商品に絞って契約しなければなりません。