リスク性金融商品販売にかかる顧客意識調査5

<昨日の続き>

金融庁のアンケート調査

2019年、金融庁はリスク性金融商品販売に関し、顧客ロイヤルティを数値化した指標等も活用した顧客アンケート調査を実施しました。その内容を確認しています。

郵送調査の対象者(インターネットに馴染みがない60歳以上の個人)とインターネット調査における60歳以上の対象者の回答を比較したところ、郵送調査の回答者の数値は以下の特徴ありました。

3.「取組方針」・「自主的なKPI」を知った手段は、新聞や金融機関の担当者から情報を入手する割合が高い

昨日の投資信託・ファンドラップの運用損益別顧客比率に続き、今日は、投資信託のコスト・リターンです。

◎投資信託のコスト・リターン

野村證券

パッシブはアクティブに勝る

コストとリターンはともに重要ですが、主にアメリカにおける数十年にわたる研究成果の結果、パッシブ運用(インデックス運用)がアクティブ運用より良い成績をおさめることができることがはっきりしてきましたので、残る要素であるコストに焦点が絞られつつあります。野村證券の場合は、リターンは0%~17%の間に入っています。そして、コストは、ほぼ、2~3%に収まっています。

  • コスト=購入時手数料/5+信託報酬
  • 2019年3月末時点で、預かり残高上位20銘柄を対象(設定5年以上)
  • リターンは過去5年間のトータルリターンを使用
  • ファンドラップ専用投信、上場ETF、上場REIT、公社債投信、私募投信等は除く
  • 残高加重平均値は、コストが2.49%、リターンが8.1%

なぜ購入時手数料を5で割るか?

コストの計算式で、購入時手数料を5で割っているのは、5年間保有し続けると、1年間の負担分が5分の1になるという考え方なのでしょう。しかしこれは理論値であって、私のように10年、20年と長期保有する人は、購入時手数料を10、20で割ることになりますから、ほぼゼロになります。理論値と実績値は異なるということになります。また、証券会社側でも、頻繁にアクティブファンドの乗り換えを勧めないようにすると、実績値はもっと低くなります。

信託報酬はインデックス0.1%、アクティブ2~3%

計算式の残りの部分は信託報酬です。コストが2~3%にあるということから、このグラフの信託報酬は、インデックス(パッシブ)型ではなく、アクティブ型の投資信託であるということが分かります。アクティブ型が投資信託の上位を占めているというのは、日本の特徴で、個人資産運用の先進国であるアメリカでは、アクティブ型が減り、ETFやインデックス投信がどんどん伸びています。日本においても、近い将来、ETF型、インデックス型が主流になるでしょう。

大和証券

コストは2~3%が中心だが1%以下も増加

リターンは変動するので気にしない

2018年と2019年を並べて公表しています。リターンは、2018年5.00%、2019年5.14%でほぼ同じですが、年によって変動しますから、あまり気にする必要はありません。

コストは微減だが、大和証券の問題はラップファンド

問題のコストは、2018年1.96%、2019年1.93%で、わずかながら減っていますが、ほとんど変わりありません。野村證券の2.49%に比べると、かなりコストを抑えていることが分かります。しかし、大和証券はラップファンドのシェアが高いので、そちらで儲けているのでしょう。ラップファンドは、コストばかり高くて、あまり価値がない、というか、高コストなので使ってはいけない商品です。

コストは1%でも高い

コストが1%未満の商品が3銘柄になり、そのうちの一つは0.5%以下ですから、このようにKPI(重要な業績評価の指標)を見える化することによって、経営の方針と実績が現れるようになります。

SBI証券

コスト平均は0.1%未満

コストが1.3から0.9へ下落

最初の図が2018年3月末、次の図が2019年3月末のコスト・リターンです。コストが1.3から0.9へと、大幅に下がっています。インデックスファンドのコスト引き下げ競争が激しいので、それを反映していると思われます。また、コストの高い商品を中心に販売している野村、大和等の顧客や新規購入する若者がSBI証券にどんどん流入しているのです。

リターンの減少は不可抗力

リターンは、2018年の14.7%から9.0%へと下がっていますが、これは証券会社の努力では何ともし難い面があるので、あまり気にせずに、10年、20年の長期運用に心がけましょう。

ひふみプラスは独立系アクティブファンド

投資信託預り残高上位20銘柄(2019年3月末現在)は、以下の表の通りです。1位のひふみプラスは、独立系のアクティブファンドで、この時点では実績が良かったのですが、この後、急激に下落しています。これはアクティブファンドの特徴で、コストが高いことが問題です。2位、3位にインデックスファンドがランク・インしてます

順位 ファンド名
1 ひふみプラス
2 <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド
3 ニッセイ日経225インデックスファンド
4 ワールド・リート・オープン(毎月決算型)
5 SMT グローバル株式インデックス・オープン
6 SBI資産設計オープン(資産成長型)
7 世界経済インデックスファンド
8 ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)
9 フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)
10 ニッセイグローバル好配当株式プラス(毎月決算型)
11 好配当グローバルREITプレミアム・ファンド通貨セレクトコース
12 eMAXIS新興国株式インデックス
13 SBI小型成長株ファンド ジェイクール
14 外国株式インデックスe
15 SBI中小型割安成長株ファンド ジェイリバイブ
16 明治安田J-REIT戦略ファンド(毎月分配型)
17 eMAXISバランス(8資産均等型)
18 グローバル・リート・トリプル・プレミアム・ファンド(毎月分配型)
19 朝日Nvestグローバル バリュー株オープン
20 eMAXIS先進国株式インデックス

楽天証券

楽天は2020年まで3年分を公表しています。上から順に、2018年、2019年、2020年3月末のデータです。

2020年はコスト増

コストは、1.21% ⇒ 0.82% ⇒ 0.93% となっています。0.93%へと上昇したのは、コストの高いアクティブファンドのウエイトが大きくなったからだと思われます。

リターン減少はコロナショック

リターンは、12.06% ⇒ 6.81% ⇒ 0.13% と徐々に下がっていますが、2018年の数値が高すぎ、2020年はコロナショックで一時的に下落したものです。