リスク性金融商品販売にかかる顧客意識調査2

<昨日の続き>

金融庁のアンケート調査

2019年、金融庁はリスク性金融商品販売に関し、顧客ロイヤルティを数値化した指標等も活用した顧客アンケート調査を実施しました。その内容を確認しています。

リスク性金融商品とは、以下の商品です。

外貨預金、仕組預金、投資信託、貯蓄性保険(終身保険や個人年金保険、養老保険など、貯蓄性を重視した保険)、仕組債、外貨建て債券、株式(含む自社株式、従業員持株)

買ってはいけない赤い字の商品

これらの商品のうち、赤い字の商品は、手を出さない方が良い商品です。銀行訪問記でも記事にしましたので、それをご参照ください

黒い字の商品も半分は危ない

残る商品は、投資信託、外貨建て債券、株式(含む自社株式、従業員持株)の3種類ですが、これらについても注意しながら選別した方が良い商品です。そのポイントは以下の通りです。

投資信託の一部はOK

アクティブファンドは避け、インデックスファンドとETFに絞って投資する。その選択基準は信託報酬(0.2%以下)、純資産総額(日本のインデックスファンドは1000億円以上、内外のETFは1兆円以上)の二つです。

外貨建て債券の一部はOK

現在のような低金利では、少額を外貨MMFで一時的に保有することもありえます。長期金利が2~3%以上になれば、債券購入の可能性も出て来ると思います。

株式(含む自社株式、従業員持株)の一部はOK

個別株式よりは、ETFやインデックスファンドの方が資産形成には有効だと思いますが、もし少し保有するのであれば、複数銘柄を買い、頻繁に売り買いするのではなく、長期保有に心がける。従業員持株会は買うとしても少額にとどめ、しかも数年ごとに売却して、ETF等に変換した方が安全です。

手数料が高くリスクは顧客が引き受けるタイプの商品

金融機関は、上記で説明した、良い投資信託、良い外貨建て債券、良い株式を提案することはありません。このような商品を売っても、金融機関が儲からず、社員の高い給料を払えないからです。そのため、金融機関の勧める商品は、手数料が高く、リスクは顧客が引き受けるタイプの商品です。

危険な金融機関

それでは、そのような商品を提案する金融機関は、どのようなものでしょうか。金融庁のアンケート調査で、確認しましょう。

提案を受けた金融機関 人数 構成比率 (%)
主要行等 672 9
ネット銀行 108 1
地方銀行・第二地方銀行 940 12
その他預金取扱等金融機関 599 8
証券会社(対面) 830 11
証券会社(ネット) 191 3
生命保険会社 329 4
その他 135 2
提案や勧誘、アドバイスなどを受けたことがない 3616 47
覚えていない/わからない 336 4

郵送調査とインターネット調査(60歳以上)の比較

個々の質問項目について、郵送調査の対象者(インターネットに馴染みがない60歳以上の個人)とインターネット調査における60歳以上の対象者の回答を比較したところ、以下の項目で差異が認められました。

郵送調査の回答者の数値の特徴は次の表の通りです。

質問項目 郵送調査の回答者の数値の特徴
1 金融商品の選び方 金融機関の担当者に相談する割合が高い
2 「顧客本位の業務運営」の認知度 認知度が低い
3 「取組方針」・「自主的なKPI」を知った手段 新聞や金融機関の担当者から情報を入手する割合が高い
4 金融機関の比較に有用な情報 金融機関の担当者の知識・説明力・接客態度に係る情報を重視
5 保有している金融商品・購入理由 貯蓄性保険の割合が高く、元本保証を重視
6 メイン利用金融機関の選定理由 コストが低いからよりも、担当者の対応が良いからとの回答の方が多い
7 メイン利用金融機関の変更理由 担当者の対応が悪いからとの回答が多い
8 NPS®(顧客推奨度)・追加購入意向 NPS®は▲73と更に低いが、追加購入意向は▲63と同水準
9 投資をしない理由(投資未経験者) 預金の方が安心だからとの回答が多い

この表を見ると、60歳以上でインターネットを活用していない人の特徴が出ているように思います。これらの項目について、原因や留意点を一つ一つ確認することにします。

1. 金融商品の選び方: 金融機関の担当者に相談する割合が高い

金融機関の給料の源泉は何か?

金融機関の担当者の給料は高いのです。その給料は、もうかる商品、つまり手数料の高い商品を顧客に販売することによって稼いでいます。金融機関の担当者に相談すれば、顧客が損をする商品を勧めるに決まっています。

アクティブファンドは全部拒否

以前、私の知り合いである山一證券の社員の方に、「どんな商品を買えば良いか」と尋ねたところ、「投資信託だけはやめた方が良い。あれは、証券会社が儲かって、お客が損をするから。」と教えてくれました。そのころ、投資信託はすべて、アクティブファンドしかありませんでした。信託報酬が2~3%、売買手数料が1%程度でした。証券会社の営業員は、頻繁に旬の投資信託、つまり、流行りの投信に買い替えを勧めます。すると、年間で3~4%の手数料が証券会社に入ります。現在は低コストのインデックスファンドが普及してきましたから、10年間長期保有すれば、年間のコストは、ネット証券なら0.1%、対面証券でも0.5%以下で済みます。

銀行の方がもっと危険

証券会社よりも銀行の方がさらに高コストの商品を勧めますから、銀行、証券の担当者に相談するのはやめるべきです。

<明日に続く>