最低限身に付けるべき金融リテラシー3

<昨日の続き>

2013年4月に金融庁金融研究センターは、金融経済教育研究会の研究会報告書として、「最低限身に付けるべき金融リテラシー」をまとめました。それについて、昨日に引き続き考えたいと思います。

(c)金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択

項目3:

契約にかかる基本的な姿勢の習慣化

投資、保険加入などに関するトラブルの原因の一つは、営業員や勧誘員の言われるがままにすることです。その理由の一つは、細かい字の注意書きです。保険の約款をちゃんと見たことのある人は、日本に何人いるでしょうか。投資信託の目論見書を全部読む人は、どれだけいるのでしょうか。金融行政は、自分の責任が問われないように、いろいろと書かせていますし、金融機関は行政に言われたとおりに書けば、責任を免れます。

重要事項は利用者の目に飛び込むように

大事なことはもれなく書くことでなく、大事なことを、最も目の付きやすい場所に、大きな字で書くことです。

例えば、投資信託(ETF、インデックスファンド、アクティブファンド)で重要な項目は、

  1. コスト(信託報酬、売買手数料等)
  2. リターン
  3. リスク

などです。特に信託報酬は、保有している間は毎年かかるのですから最も重要ですが、各商品の月次レポートなどでは、一番後ろの方のページに小さな字で書いてあります。これを、1ページ目の一番上に大きな字で書くことが必要です。

フォント等の基準

他の商品を見ると、厳しい基準を作っています。酒類の広告の基準は以下の通りですが、量が多いので小さいフォントで掲載します。文字の大きさ等重要な点は赤字で表示します。

広告・宣伝関係
1 未成年者の飲酒防止に関する事項
表示内容

国税庁告示「未成年者の飲酒防止に関する表示基準」に基づく場合に準拠するものとし、文言については、例えば「未成年者の飲酒は法律で禁じられています」、「お酒は二十歳になってから」などとする。
注意表示の方法等

イ 適用媒体
新聞、雑誌、ポスター、テレビ、ラジオ、インターネット、消費者向けチラシ(パンフレット類を含む)とする。

ロ 文言の大きさ等

次の大きさ・露出秒数等以上で明瞭に判読できるよう表示する。

(イ) 新聞については、全5段以上は14ポイント以上、半3段以上全5段未満は10.5ポイント以上とする。 

(ロ) 雑誌については、B5以上は14ポイント以上、B5 1/2以上B5未満は10.5ポイント以上とする。 

(ハ) ポスターについては、B3以上は20ポイント以上、B3未満は14ポイント以上とする。ただし、駅ばり等の大型ポスターの場合においては、当該ポスターの大きさを考慮したものとする。

(ニ) テレビについて
注意表示の露出秒数は、次のとおりとする。
(A)  15秒以下の広告  1.5秒以上
(B)  15秒超30秒以下の広告  1.75秒以上
(C)  30秒超の広告  2.0秒以上
(ホ) インターネットについては、表示可能スペースを考慮し、明瞭に判読できる大きさで表示する。
(ヘ) チラシについては、B5以上は14ポイント以上、B5 1/2以上B5未満は10.5ポイント以上とする。
ハ 字体等
(イ) 字体については、明瞭に判読できる字体とする。
(ロ) 注意表示は、色等に配慮し、見やすい場所に明瞭に表示する。
(ハ) テレビについては、更に次の点に特に注意する。
A 未成年者飲酒防止の注意表示については原則として広告の最後に実施することとし、広告の途中で実施する場合には、明瞭に判読できるよう十分配慮する (例えば、白抜き等)。
B 「未成年者の飲酒は法律で禁止されています。」等の長い文言の使用は避ける等配慮する。
(ニ) ラジオについては、次の点に特に注意する。
A 未成年者飲酒防止の注意表示については、原則として広告の最後に実施する。ただし、広告の放送の秒数が短い場合は、これを省略することができる。
B 明瞭に聞き取れるよう十分配慮する。
(ホ) テレビ及びラジオのスポンサーは、視聴者の70%以上が成人であるという企画のもとに制作されたことが確認できた提供番組において、酒類の広告を行うよう配慮する。
ニ 表示省略
調味料として用いられること又は薬用であることが明らかであるもの及び専ら酒場、料理店等に対する引渡しに用いられるものについては、表示を省略することができる。
広告・宣伝の際の留意事項
イ 未成年者の飲酒を推奨、連想、誘引する表現は行わない。
ロ 未成年者を対象としたテレビ番組、ラジオ番組、新聞、雑誌、インターネット、チラシには広告は行わない。
ハ 未成年者を対象としたテレビ番組、ラジオ番組の直前直後にはスポット広告は極力行わない。
ニ 未成年者を広告のモデルに使用しない。
ホ テレビ広告において、25歳未満の者を広告のモデルに使用しない。また、25歳以上であっても、25歳未満に見えるような表現は行わない。
(注)広告出演者の中で、エキストラ等は対象外とする。
へ 主として未成年者にアピールするキャラクター、タレントを広告のモデルに使用しない。
ト 主として未成年者が使用する衣類、玩具、ゲーム等に酒類の商品ロゴ、商標を使用しない。
チ 酒類を清涼飲料と誤認させる表現は行わない。
リ 未成年者を対象としたキャンペーンは行わない。
ヌ 公共交通機関には、次の広告は行わない。
(イ) 車体広告
(ロ) 車内独占広告
(ハ) 自動改札ステッカー広告
(ニ) 階段へのステッカー広告 (駅改札内を対象)
(ホ) 柱巻き広告 (駅改札内を対象)
ル 小学校、中学校、高等学校の周辺100m以内に、屋外の張替式大型商品広告板は設置しない。

金融商品もコストなどはフォント基準設定へ

以上、長くなりましたが、他の業界は、これだけ厳しい基準を設けているのです。金融商品も野放しではなく、コストなどの掲載場所、活字の大きさなどを規制するか自主基準を設けるべきだと思います。

利用者サイドの言葉へ変更を

また、信託報酬などという金融機関サイドに立った用語を使わず、利用者サイドの言葉を使うべきです。金融初心者は、信託すると報酬を受け取れると勘違いする人もいます。報酬などというソフトな表現ではなく、コスト、費用という、明確な表現をすべきです。

このように、金融行政、金融機関がやるべきことをやった上で、利用者の金融リテラシーを論じるべきだと思います。