最低限身に付けるべき金融リテラシー4

<昨日の続き>

2013年4月に金融庁金融研究センターは、金融経済教育研究会の研究会報告書として、「最低限身に付けるべき金融リテラシー」をまとめました。それについて、昨日に引き続き考えたいと思います。

(c)金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択

項目4:情報の入手先や契約の相手方である業者が信頼できる者であるかどうかの確認の習慣化

金融分野は、専門的で複雑なため、悪質な者による詐欺的行為が発生しやすい分野です。そうした悪質な者が一定数存在することを前提に、金融取引を行う前に、情報の入手先や取引の相手方が信頼できる業者であるかどうかを確認することが重要です。少なくとも登録業者等であるか、自主規制機関に加入している業者であるか否かは、金融庁や自主規制機関のウェブサイト等により確認することが可能です。

登録業者であることに確認とは?

この報告書には上記のように書いてありますが。このような注意喚起は、現実的ではありません。詐欺にあう人の多くは高齢者ですが、その人たちがウェブサイトで登録業者であること確認することが、本当にできると思っているのでしょうか。少なくとも私は、このようなウェブサイトで確認したことは一度もありません。また、ここで言う登録業者とは何であるかも分かりません。

郵便局の集団詐欺

それ以上に問題なのは、郵便局による『集団詐欺』ともいわれるような行為です。長年の信頼関係を悪用して、高齢者の金融資産を食い物にするような行為が、長期間にわたって行われてきました。

金融機関による合法的問題行為

加えて、気を付けなければいけないのは、銀行、証券会社、保険会社による手数料稼ぎの行為です。法律上は問題ないけれど、金額的にはもっと巨額で、利用者が知らない間にかすめ取られていることに気がつかなければいけません。

代表的ETFを長期保有すればよい

証券会社で、日本やアメリカのETFを買って、5年、10年と保有し続ければ、購入時、売却時に手数料がかかるでだけで、毎年のコストはあまりかかりません。例えば、日本なら1306(TOPIX連動型上場投資信託(ETF))、アメリカならSPY(アメリカSPDRのS&P500のETF)等を買えばいいのです。

証券会社のアクティブファンド、銀行の外貨預金・保険

ところが、証券会社でアクティブファンドを買ったり、銀行で外貨預金や保険に入ると手数料ばかり払うことになります。証券会社のアクティブファンドは、毎年信託報酬が2~3%かかるうえに、頻繁に買い替えを勧められるので、高額の手数料を払うことになります。昔、「アクティブファンドだけは買ってはいけない」と、証券会社の人がアドバイスしてくれました。その理由は、利用者から手数料をかすめ取る営業をしているからです。銀行の実態については、私が実際に調べた「 銀行訪問記 」をご覧ください。証券会社より、もっとひどいかも知れません。法律違反はしていなくても、利用者が損をする落とし穴はたくさんあります。

項目5:

インターネット取引は利便性が高い一方、対面取引の場合とは異なる注意点があることの理解

近年、インターネット取引が急速に普及し、金融分野においても、より簡易で利便性が高い取引が可能となっています。一方で、知らないうちに暗証番号が盗まれたり、誤発注をしてしまうといった対面取引の場合とは異なる様々な危険が伴うことを理解し、金融取引には安全が確認されていない端末は利用しないこと等に注意することが必要です。

暗証番号、ご発注、端末?

この項目では、文章全体の整合性が取れていないように思います。タイトルでインターネット取引の危険性を言い、説明の途中では暗証番号管理と誤発注を列挙し、最後の結論では端末に気をつけろと言っています。また、この端末とはいったい何のことを言っているのでしょうか。もし、ワイヤレス接続なら、端末ではなくワイヤレス接続と書かないといけないと思います。あるいは、他人の所有する端末は危険だと言っているのでしょうか。説明不足で良く分かりません。

既にインターネット取引がどんどん増加する時代に、対面取引は安全で、インターネット取引が危険だというような言い方は、実情に合致していないように思います。

【金融分野共通】

項目6:

金融経済教育において基礎となる重要な事項(金利(単利、複利)、インフレ、デフレ、為替、リスク・リターン等)や金融経済情勢に応じた金融商品の利用選択についての理解

金融商品を利用選択するにあたり、基礎となる金利(単利、複利)、インフレ、デフレ、為替、リスク・リターンといった重要な事項を十分に理解することが必要です。

とりわけ、「リスク」という用語は、金融商品を利用選択する場面によって異なる意味合いで用いられることから、それぞれの場面でどのような意味であるかについて、理解できるようにしておくことが重要です。

また、金融商品を利用選択する場合には、インフレやデフレ、金利や為替の動向、株式市況等の金融経済情勢を十分に考慮することが重要です。

難しいことを知らなければならないなら買えない

ここに書いてあることを、十分に理解して考慮することは重要だということはわかります。しかし、これらのことを本当に理解できている人は、いったいどのくらいいるのでしょうか。数十人に一人、あるいは、数百人に一人くらいかもしれません。私自身、ある程度は理解できていると思っていますが、人に説明できるほどではありません。それほど豊富な知識がなくても利用できる金融商品を用意してもらいたいものです。