為替レートの行方 2021年4月

資産評価額大幅増加の理由

私の投資評価額が最近大幅に増加しています。今年に入って各月の評価額は、3か月連続で1,000万円ずつ増加しました。株価が上昇したことがその理由の一つですが、もう一つの理由は、外国為替の変動です。2020年末には1ドル103円だったものが、一時的に約111円になり、現在は少し戻して108円前後です。

為替レートの過去・現在の解説

私は投資の約7割をドルで持っているので、ドル円レートに大きく左右されます。私には将来の見通しを持つ能力はありませんので、専門家がどう考えているかを勉強してみましょう。ただし、専門家も将来のことは正しく予想できませんので、あまり過度な期待を持つのは禁物です。勉強することは、将来のことというよりは、為替レートがどのような原因で動き、現在、どういう状況になっているかということです。つまり、現在、過去、未来の中で、現在と過去について勉強するのです。

様々な人の見通しを確認しましょう。

内田稔 三菱UFJ銀行

「 現在、米経済はかつてない危機を乗り越え、未曾有のショックからの回復途上にある。その行く先には以前の力強い米経済が待ち受けているとの期待が強い。

しかし、コロナショック前の米経済を振り返ると、失業率が3%台まで低下した好況期でさえ、インフレ率が安定的に2%台を上回ったのは、原油先物相場が前年比で大きく伸びた時期に概ね限られる。

労働市場のスラックが長期間、残存する可能性を踏まえると、インフレ圧力は高まりにくいはずだ。利上げ開始後の天井が、2018年の水準を下回るとの見方が優勢となれば、自ずと米ドルの金利上昇は控え目な範囲にとどまろう。

ドル金利の上昇が限定的な範囲にとどまることは、米国の株式相場のみならず、新興国を含むグローバル経済にとっても追い風だ。ある程度のリスク選好地合いが続くと期待でき、あまり極端なドル安/円高とはなりにくいだろう。

しかし、その場合、あまり上がらない金利水準と拡大傾向をたどる経常赤字が重しとなって、ユーロや円、スイスフランのほか人民元といった経常黒字国通貨に対し、緩やかなドル安が再開する可能性が高い。

このため、今年の年末から2022年3月の年度末に向けて、ドル/円も105円程度に向け、徐々に軟化していく可能性が高いとみる。」

植野大作  三菱UFJモルガン・スタンレー証券

「『令和の日本で起きている国際収支の構造変化が、極端な為替変動を抑制している』という筆者の見立てが正しければ、今後も大同小異の状況が続くだろう。

今年度の予想レンジについて、キリが良いので10円値幅で提示しているが、実際にはそんなに動かないかもしれない。105円前後から下は押し目買い、110円前後より上は戻り売りで臨みたいと考えている。」

尾河眞樹  ソニーフィナンシャルホールディング

「総じてみれば、先進国の中で、緩和からの出口に到達するのは米国が最も早いはずである。2020年の世界景気後退はパンデミック(世界的な感染大流行)によって人為的に経済活動を止めたためであり、人々の活動が再び始まれば、経済は元に戻る。ワクチン普及と景気回復期待、金融政策の見通しが絡み合い、それがこうした通貨の強弱感に現れているのだ。したがって、足元でドル/円が軟化したとしても、中長期の上昇トレンドは変わらないだろう。

ただ、そうした見通しには落とし穴もある。いくらパウエル議長が「インフレが加速したとしても一時的だ」と述べたところで、大事なのは金融市場がどう受け止めるかだ。経済指標が好転したなかで、米バイデン政権のバラマキ政策やFRBの強力な金融緩和が続いた場合、市場参加者がインフレリスクを織り込みはじめれば、米長期金利が再び急騰するリスクもある。

筆者はFRBが来年1-3月にもテーパリングを開始すると予想しているが、もしそうであれば、今年の半ばから後半には、テーパリングの方向を市場に刷り込む対応が必要になってくるだろう。足元でパウエル議長があまりにも「緩和維持姿勢」を強調しているのは、後々の出口戦略へのコミュニケーションを難しくしているようで、気がかりな面もある。」

日経新聞のコラム

「ドル、実力より14円高 揺り戻しに市場動揺の火種

4月16日時点の円相場は1ドル=108円。経済の実体から算出する理論値「日経均衡為替レート」は94円で、14円分のドル高になっている。

均衡レートは、各国の政府債務や経常収支の状況から算出する。一般的に債務を抱えこみ、経常赤字の大きい国の通貨は相対的に評価を落とす。

日本経済新聞社と日本経済研究センターが算出した2020年10~12月期の均衡レートは1ドル=94円だ。新型コロナウイルスの感染が拡大する前の19年10~12月期は110円だった。冷え込んだ米景気を支えるために巨額の財政出動に動いた結果、政府債務が一段と膨れ上がった。対円でみれば、ドルは16円分の価値を落とした計算になる。

さらにこの先、米国の財政支出を考えれば、均衡レートを押し下げる圧力がかかるのは不可避だ。バイデン政権は約2兆ドルの追加経済対策を発表し、インフラ投資も検討している。増税など財源が確保できなければ債務は一段と膨らむ。」

105円、100円でそれぞれドルを追加購入

このように、人によって将来予測はさまざまです。ここで挙げた4通りの味方の幅は、94~110円です。そこで今後の方針としては、もし1ドルが105円以下になったら、少しドルを買い、さらに100円まで下がったら、もう一度買い増そうかと思います。

均衡為替レート

均衡為替レートとは、過去の為替相場やマクロ経済の指標などからみて「適正」とみられる為替相場を推計した数値のことです。実際の為替相場は日々のニュースや投資家の思惑などで上下に振れることが多いのですが、長い目でみれば内外の経済実態に沿って決まるという考え方に基づいています。実際の相場は短期的には均衡レートから離れて推移することもあるが、やがては均衡に近い水準に戻っていくとの見方にもつながります。

購買力平価

単純な均衡レートの求め方としては、一定期間の相場の平均値を均衡水準とみなすものがある。同じモノの価格は世界中どこでも同じになるはずだという「一物一価の法則」に基づく「購買力平価」も有名です。ハンバーガーなど単一の品目を使って計算したり、消費者物価などの指数を用いたりすることが多く、世界銀行などが定期的に公表しています。私は1年前まで、良く海外旅行をしていましたが、外国のハンバーガーは日本の1.3~1.5倍の値段でした。

政府債務、経常収支も紙

物価だけでなく金利差や政府債務、経常収支など経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を映す幅広い指標も加味して推計精度を高める手法も提案されている。国際通貨基金(IMF)は対外収支などから試算しており、米財務省も為替報告書で参照している。現時点では推計作業の煩雑さなどから定期的に公表している機関は多くありません。

  • ビックマック指数(各国のハンバーガーの価格を比べる):英エコノミスト誌
  • 各国の物価指数からはじく購買力平価:世界銀行など
  • 外貨を稼ぐ力を示す経常収支などの指標を幅広く加味して試算する均衡レート、日経センターなど