インフレへの対策

インフレのアメリカ

米国労働省は8月11日、2021年7月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比5.4%上昇したと発表しました。変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は4.3%上昇となりました。新型コロナ対策の財政政策、金融政策の結果、インフレが進んでいるようです。

デフレの日本

一方、日本の消費者物価指数は2021年8月にマイナス0.4%になりました。インフレ率2%の目標には届きません。

新型コロナ: 消費者物価3カ月ぶり下落 8月、GoToで宿泊料下がる: 日本経済新聞

リーマンショック以降の推移

リーマンショックのあった2008年以降の推移を見てみましょう。2014年に2%を超えましたが、その後は1%以下に低迷しています。

20年の消費者物価 4年ぶり下落 0.2%、コロナ禍響く: 日本経済新聞

50年間の推移

更に、昭和の高度経済成長の時からの推移を見ましょう。昭和中期は5%前後で、第一次石油危機の時は20%を超えていました。2000年まではプラスのインフレ率を維持していましたが、21世紀になるとマイナスの期間が続きます。

統計局ホームページ/統計Today No.11

インフレにならない理由

なぜ、異次元金融緩和政策を続けてもインフレ率2%を実現できないのでしょうか。その理由は、日本人がお金を使わずに銀行預金として貯蓄したり、株式のまま保有して、そのお金を使わないからです。もしお金をたくさん使えば、人件費、原材料費、経費のコストが上昇してインフレになります。日本人と違ってアメリカ人は、お金を使うのでインフレになります。アメリカはそのインフレにどう対応すればよいと考えているのでしょうか。フォーブスの2021年8月31日の記事をもとに考えてみましょう。以下は拙訳です。

インフレに勝つための個人資産の考え

インフレがやって来て、すぐには消えそうにありません。消費者は、食品、ガソリン、家賃、その他多くの日用品、サービスの物価上昇を経験しています。多くの家族が、投資戦略を変更して、アパートの建物や金やビットコインなどの交換可能通貨に資産を振り分けています。

当面の投資戦略はともかくとして、消費者としてインフレに打ち勝てることが他にあるでしょうか?できることは、実はたくさんあります。

インフレが変化すると、それに応じてお金に対する時間選好が変わります。もし、将来インフレが低くなると予測した場合、将来のために貯蓄・投資することによって、満足を先延ばしにする傾向があります。逆にインフレが増大すると予想すれば、おそらく今日お金を使う傾向が強まりますが、その理由は、将来、自分のお金で買えるものが少なくなるからです。したがって、個人の資金計画方法に常識的変化を与えることを検討することはとても価値があり、その範囲は自宅の資金調達方法、買う自動車の種類、食品の購入方法にまでわたります。

今もし、インフレが高いままでなく、1%~2%の間に落ちると考えるのなら、今の生活を変化させることは多分意味がありません。しかし、価格上昇が平均して3%を上回り、実質金利(インフレ調整後)がマイナスだとしましょう。この場合には、個々人の資金状況やどれだけリスクに耐えられるかを確認しつつ、資金計画決定を考え直したくなるかもしれません。

1.借りるより買う

インフレになっている間は、賃貸と購入に関しては一般的に住居は借りるより買う方が好ましい。もしあなたが賃借人で、毎年賃借期間が来ると、家主はインフレの水準に応じて家賃を上げてきそうで、インフレ率が低ければよいかも知れませんが、インフレ率が高いければ望ましいとはとても言えません。賃借人であれば、住居費はインフレから守れません。逆に家を買う強い理由が二つあります。一つ目は、住居所有者として、住宅ローンは一般的に固定です。2番目は、土地の費用、原材料、人件費がインフレの間上昇するので、住居の再取得価額が上昇しそうです。住居所有者であればインフレから守られます。

2.住宅ローンで資金調達する

投資家がインフレ分を埋め合わすために十分高い利子率になっていないので、貸し手や債券投資家にとって恐ろしい期間です。しかし、手に負える範囲以上の借り入れをしていないのであれば、借り手にとっては理想的な期間です。耐えることのできる長期固定住宅ローンであれば、うまく利用できます。住居所有者の中には30年ローンを3%未満の金利支払いの人もいて、しかもそれが金利支払いの課税控除を考慮する前なのです。しかし、住宅ローンに関して最も良いことは、住宅ローン支払いのインフレ調整後の価値が、インフレ上昇と同じ割合で減少することです。

3.カーローンを利用する

カーローンの金利も現在は信じられないほど低い。もしインフレが高いままで推移すると期待するなら、住宅購入の資金調達と同様の理由で自動車購入資金を調達することは意味があります。できるだけ長い固定金利のローンを確実に探し出すことです。もし3%未満の金利で責任をもって借りることができれば、安いお金で将来の借金を支払うことになるでしょう。

4.エネルギー効率を改良する

もし、ガソリンをたくさん使う自動車を持っているなら、将来にわたってより高額なガソリン価格を支払うことについて、心とお金の準備をする必要があります。将来のガソリン代を引き下げるには、もっと燃料効率の良い車、あるいはさらに良いのは電気自動車にするのが良いでしょう。冷暖房費を引き下げるためにはたくさんのレバーを引いてウィンドウやドアを密閉しなければなりません。エネルギー効率化制作によって、エネルギーコストが急騰するインフレ環境において、投資に対するリターンがかなり増えることになるでしょう。

5.不足に備える

高インフレ環境下では物品の不足はとてもよくあることです。このため、お店が自ら補充できない間、保存食やその他必需品の非常用の品を備え維持しておいた方が良いでしょう。これには予備のトイレット・ペーパーを含みますが、特価で買える缶詰や保存食も該当します。幸いにも、物価は急上昇しているので、非常用の品物を買うことは高利回りの貯蓄をすることになります。おそらく、商品の価格は当座預金口座の金利よりもずっと早く上昇するでしょう。

6.長持ちする丈夫な製品を買う

洗濯機や乾燥機などの耐久製品を買うことを検討するときは、近い将来買い替えや保守が必要になりそうでない高品質の製品を買うことです。購入価格は少し高くなるかもしれませんが、そのような投資をすることで、保有している間、支出を管理可能なレベルに抑えることができます。

7.予算に従う

予算を編成し、交通、食品、交易、教育等、将来インフレの影響を受けやすい支出項目に特に注目するのです。コストコなどの低価格の店やまとめ買いの店で買い物をすることによって、予算を長持ちさせる方法を考えるのです。さらに、生活の質に影響しないで、切り詰めたり引き下げたりしないことのできる支出を検討するのです。

私たち消費者はインフレを心配しますが、備えることは可能です。もしインフレが増大すると信じているのであれば、今、大きな買い物をしたり、もし可能なら低利子の借金を適度の金額でしたり、住宅や家族が費用増加に備えることで、影響を軽減することができます。インフレの上昇下降をコントロールすることはできませんが、自分自身のお金の決定をコントロールしたり、明日のインフレをコントロールするのに役立つ選択を今日することは可能です。