確定拠出年金:2021年10月

9月下降の理由

私の確定拠出年金は、昨年の3月を底にしてほぼ一本調子で上昇してきましたが、9月に少し下がりました。その理由は、

  • 中国の恒大集団問題、
  • 米国の債務上限問題、
  • 岸田新首相の1億円の壁問題

などがあります。

一億円の壁問題

岸田新首相は、成長と分配の好循環に向けた政策の1つとして、「金融所得課税」の見直しを掲げており、足元の株安はこれを嫌気した反応のようです。

金融所得課税とは、株式譲渡益や配当金などの金融所得に課される税金で、現在、税率は一律20%(所得税15%、住民税5%)です。岸田首相は当初の記者会見で、改めて金融所得課税の見直しを検討する意向を示していて、今後は年末の2022年度税制改正で、一律20%の税率を引き上げる案や、高所得者の負担が重くなるよう累進的に課税する案などについて、議論されると受け止めた人が多かったようです。

この問題は

下の図で、金融所得税率が一律のため年間所得1億円超で所得税負担率が低下する1億円の壁が発生し、1500万円の所得の人と、1億5000万円の所得の人が同じ税率になってしまうということです。

詳しく説明すると以下の通りです。

金融所得の税率は、前述の通り一律20%に定められています。そのため、金融所得の割合が相対的に高い高所得者層は、株式譲渡益がいくら大きくなっても、累進的に課税されることはなく、税率は20%で変わらないということになります。このような状況から、現行の金融所得課税は、金持ちを優遇する制度になっているという批判が根強くみられます。

一方、給与所得の税率は、所得が増えるほど累進的に課税され、最高税率は課税所得4,000万円超について設定されている45%です。そのため、年間所得の増加につれ、給与所得が多く金融所得が少ない場合は所得税の負担率が上昇し、給与所得が少なく金融所得が多い場合は負担率が低下することが起こり得ます。実際、所得税の負担率は、年間所得が1億円を超えると低下しており、これを「1億円の壁」といいます。

さて、年金の話に戻ります。

私の周りには、様々な年金の種類を受け取っている、あるいは、将来受け取ることになる人がいます。

例えば、私の年金は、

  • 厚生年金
  • 確定給付年金
  • 企業型確定拠出年金
  • 財形年金

で、連れ合いは、

  • 厚生年金

だけです。私と連れ合いは、このほかに退職金を受け取り、それ以外には、勤務期間が短いために年金受給資格がないため、代わりに一時金を受け取っています。

家族の中には、退職金や確定給付金がなく、

  • 退職金
  • 確定給付年金

の者もいますし、

  • 企業型確定拠出年金だけ

の者もいます。この企業型確定拠出年金は選択制なので、それについて確認します。

企業型確定拠出年金では通常、全社員に拠出を義務付け、企業側が掛金を負担します。一方、選択制企業型確定拠出年金では社員が拠出を選択でき、拠出する場合は社員が掛金を負担することが特徴です。拠出する場合の掛金は企業型確定拠出年金と同様に扱い、拠出しない場合は給料として支払うため、社員としては以下のような選択肢が生まれます。

・選択制確定拠出年金を拠出して、60歳以降に受け取る年金(もしくは一時金)を企業で管理してもらう
・選択制確定拠出年金を拠出しないで、給料を毎月全額受け取る

選択制確定拠出年金は企業・社員に多くのメリットがある年金制度のため、導入しない手はありません。しかし、社員にとってはいくつかのデメリットも存在するため、導入の際は社内担当者の正しい理解と慎重な準備が必要です。

以下は、JTB benefitの説明です。


【選択制企業型確定拠出年金】会社側のメリット

費用負担なく年金制度を導入できる

会社側が掛金を拠出する企業型確定拠出年金と異なり、選択制確定拠出年金は社員の給与の一部を掛金として拠出するため、会社に掛金の拠出で負担が出ることはありません。「社員の将来をサポートするために、企業独自の年金制度を導入したい」という場合は、選択制企業型確定拠出年金を導入することで年金制度にまつわる悩みを解消できるでしょう。

社会保険の削減

選択制確定拠出年金を導入すると加入者の課税所得が減り社会保険料が軽減されることも多く、企業が納めるべき法定福利費も軽減させることができます。

【選択制企業型確定拠出年金】社員側のメリット

選択制確定拠出年金のデメリットを会社側・社員側に分けて解説します。

ライフプランに合わせた選択ができる

選択制企業型確定拠出年金は社員自身が拠出を選択できるため、具体的な計画があれば無理に拠出する必要はありません。拠出しない場合は本来の給料が全額支給されることとなるため、選択しない場合でも後ろめたさやマイナスイメージを抱える心配がありません。

税制優遇を受けられる

選択制企業型確定拠出年金で拠出する場合、3つの税金が非課税となる税制優遇措置が適用されます。これらは節税対策に効果を発揮します。

<選択制企業型確定拠出年金で受けられる税制優遇>
・拠出する掛金にかかる税金(所得税・住民税)
・資産運用で得た利益にかかる税金
・将来、年金もしくは一時金として受け取る確定拠出年金に対する税金

社会保険料が軽減される

選択制企業型確定拠出年金に拠出した給与の一部は、社会保険料を算出する際の報酬額から除外されます。そのため、毎月差し引きされる社会保険料(自己負担分)を軽減効果も期待できます。

積み立てた年金は転職や退職時も引き継げる

選択制企業型確定拠出年金により積み立てた給与の一部は個人の資産となるため、転職や退職の際も引き継ぐことが可能です。また、企業型確定拠出年金といっても運用自体は社員が選択できるため、資産額をWebなどから確認できるのも選択制確定拠出年金のメリットといえます。

選択制確定拠出年金のデメリット

【選択制企業型確定拠出年金】会社側のデメリット

念入りな準備や説明が必要

選択制企業型確定拠出年金を導入するうえで回避したいのが、社員の混乱を招くことです。後述するように、社員にとってはメリットだけでなくデメリットも考えられることから、社内担当者はわかりやすく社員へ説明することが大切です。マイナスイメージを与えないためにも、制度そのものの仕組みを図解したり、拠出シミュレーションをサポートしたりして正しく伝えられるよう導入準備を整えましょう。

【選択制企業型確定拠出年金】社員側のデメリット

社会保険料の軽減により将来受給する年金額や各種手当が減る

社会保険のなかでも厚生年金額を重視する社員は多いでしょう。選択制確定拠出年金の拠出により社会保険料が軽減されることはメリットのひとつですが、将来受給できる年金額が減ることはデメリットともいえます。
また、社会保険料の等級ダウンは遺族年金や障害年金、失業保険や傷病手当金などの減額にもつながるため、選択制確定拠出年金を拠出するにあたり、緻密な計画を練る必要があります。

個人で運用するリスクがある

給与に応じて社会保険料が確定する厚生年金とは異なり、選択制企業型確定拠出年金では掛金や、それによる税額の変動を社員自らシミュレーションしなければなりません。社員が手間や労力を懸念して選択制企業型確定拠出年金制度の利用を避けている場合、メリットが正しく伝わっていない可能性もあるため、社内担当者はこうした事態を想定した対策を練っておくことが重要です。

選択制確定拠出年金と退職金の違い

選択制確定拠出年金は退職金制度の1つに含まれますが、退職金制度との違いはどこにあるのでしょうか。
一番大きな違いは運用方法です。選択制確定拠出年金は個人が主体となって運用しますが、退職金制度は企業が主体となって運用します。

また、選択制確定拠出年金は掛金(原資)を企業と個人で用意し、受給できる金額はこれまで拠出した額と商品を運用した実績の元利合計で変動します。もし、企業が倒産した場合であっても、社外へ積み立てをおこなっていますので、倒産が原因で受け取り金額が減額されることはありませんし、前項のメリットで述べたとおり、税制上の優遇措置も受けられます。

一方で退職金制度は掛金(原資)を企業が用意し、受給できる金額は社内規定であらかじめとり決められていますので、企業が倒産した場合、社外へ積み立てしていなければ受け取り金額の減額は免れず、最悪の場合、受け取りそのものができなくなる場合があります。