円安の行方

私のポートフォリオの8割は外国株式だが、それは日本の円が信頼できないからです。

いくら日本国民が頑張って働いても、日本政府が金をばらまき続ければ、日本円の価値は損なわれます。

日米の金利差の変動によって、多少為替レートが動くことはありますが、もっと大きな変動は、氷河がゆっくりと気づかれずに進みつつあります。

その要因は次の三つだと考えます。

  1. 増えつつある国債残高
  2. 国民、企業によるキャピタルフライト
  3. 大地震の発生

1.増えつつある国債残高

膨大する国債残高と個人ができるインフレ対策(2022改訂版)

2.国民、企業によるキャピタルフライト

NISA(つみたて投資枠+成長投資枠)の買付金額ランキングの1位、2位は、

  • eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
  • eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)

です。これからも着実に日本円はUSドルに代わって行くでしょう。

3.大地震の発生

大地震は突然起こりますし、どこで起こるか分かりません。しかし日本の地震はエネルギーが溜まって行って確実に起こるのです。

大地震が起これば、住宅立て直しや復興のために、現金預金を使い出します。すると、資材や建築関係の人件費が高騰し、インフレが急激に進みます。この結果、円安が加速されます。

日本の円安について、2024/12/09の東洋経済ONLINEの記事を読んで見ましょう。


ジム・ロジャーズ「日本の円安が心配でならない」「日本は大丈夫」という考えは間違いである

17年ぶりの「利上げ」は金融正常化へつながるか

2024年3月、日銀は2016年の1月に導入され、大規模な金融緩和策の屋台骨でもあったマイナス金利政策を解除、17年ぶりに利上げを行った。同じく金融緩和の正常化プロセスの一つとして、こちらも2016年に導入した政策「イールドカーブ・コントロール(YCC)」も終了した。

イールドカーブ・コントロールとは、短期金利に加えて長期金利も低く抑え込む長短金利操作のスキームである。

さらには、こちらも同じく金融緩和策の一つとして取り組んでいた、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)の新規の購入もやめた。これは、金融市場に大量の資金を供給する目的で実施してきたものである。

マイナス金利からの脱却は、多くの人々の経済に対する不安を和らげる可能性があるだろう。しかし、金利水準はまだまだグローバルな、歴史的な標準と比べるとかなり低い。

植田総裁の就任直後からのスタンスや、関係者とのコミュニケーションから考察するに、急激な変化は望まないことが窺える。これから徐々に、時間をかけて正常化のプロセスを推し進めていくのかもしれない。

つまり、今回のマイナス金利からの脱却は、あくまでも始まりに過ぎず、日本経済の本格的な立て直しには、さらなる改革と長期的な視点に立った政策が必要不可欠だ。現在の政策が維持され、金利がさらに引き上げられるかどうかは、まだわからない。

いずれにせよ本当の意味での金融正常化、景気回復には痛みが伴うものだ。一方で、誰も痛みは望まない。植田総裁はそこを、押し切れるのかどうか。

一時的だったとはいえ、株価が大暴落するといった、一部の痛みも出始めているように思える。しかし、株価の大暴落はあくまでも別の要因によるものに私には見える。長年にわたりゼロ金利政策を続けてきたことに端を発する、異常とも言える株価の高騰による投資家からの反発、経済の歪みによるものだ。

投資や貯蓄を呼び込まなければ、日本経済は衰退の一途

日銀が取るべき選択肢、日本が再興するための取り組みについて、結論から言えば、まずは自国の経済基盤を健全化することが不可欠だ。実現のためには現状を正確に認識し、勇気ある決断を下す必要がある。これは、日本だけでなく世界経済全体の未来にも関わる重要な課題でもある。

日銀がなすべきことは明確だ。まずは日銀がお金を刷ることをやめること。さらに、日本国内で投資を奨励するためにできることは、何でも実行に移していくこと。ここでは特に、投資について言及する。

投資は国の経済成長にとって非常に重要だ。投資は、貯蓄を生産性の向上、新しいビジネスの創出に利用することを意味する。

これらの活動によって経済全体の需要を高め、雇用機会を創出し、経済成長を促進することができる。また投資は技術革新やインフラ整備にも貢献し、長期的な経済発展に寄与する。つまり日本は、投資意欲を呼び戻すことができなければ、経済再興はおろか、さらなる衰退の一途をたどることになる。

まずは、親世代が投資を積極的に行っていくことが大事だ。一方、ゼロ金利が当たり前の時代に育った貯蓄・投資意欲の低い若い世代も、日本の将来のために、投資が重要であることを理解する必要がある。

日本ではタンス預金と呼ばれるように、ゼロ金利政策が実施される以前、特にシニア層における貯蓄率は高いとのイメージがある。

しかし、あくまでイメージであり、実際には、日本人が海外の状況や他国の人々の行動や実態を、十分に把握していないと私は見ている。

貯蓄率は「総貯蓄率」とも呼ばれる指標であり、「貯蓄額÷可処分所得(手取り収入)×100」で計算することができる。

利子が少ない、ゼロ金利政策が長く続くことで貯蓄意欲が減退したとの議論は当然あるが、それを差し引いても日本の貯蓄率は低いと言わざるを得ない。

資産における現金・預金と、株式・投信、保険・年金といった商品の割合を、日本、欧米とで比較したグラフ(下図参照)を見ると、このあたりの事情が垣間見えてくる。確かに、日本人の資産における現金・預金の割合は多い。そのため、現金・預金は多く貯金している、とイメージしがちだ。

さらに、日本ではシニア世代が投資をあまり行ってこなかったとのイメージもある。しかしこちらもあくまでイメージであり、実際には数十年前から日本人のシニア層が国内はもちろん、海外のマーケットに投資する機会は開かれており、投資に積極的であったシニアの人たちも大勢いる(下図参照)。

ところが、日本から資金が流出することを危惧した日銀がメディアに対して、そのようなトピックスやニュースを伝えないように働きかけていたのではないか、と考えることもできる。ただこのような取り組み、いわゆる情報操作は日本に限ったことではないのではなかろうか。

多くの国ならびに、各国の中央銀行でも似たような状況が見られることがある。たとえば、アメリカにおいて、国内メディアが国民に対して、「アメリカよりもドイツのマーケットで株を買ったほうがいい」と助言し、強い反発を受けるようなことだ。

ただし今述べたことは、何十年も前の話だ。今では、国内外のありとあらゆる正確な情報を誰でも簡単に入手できるようになった。いずれにせよ私が言いたいことは、日本のマーケットに積極的に投資を呼び込むことが重要であり、実現できなければ日本衰退の一途をたどるだろう、ということである。

円安で訪れる「通貨危機」の可能性

円安が止まらない。現在の円安相場は、2022年3月ごろから始まった。当時110円台半ばで推移していた円ドル相場は、3月下旬になると120円台まで下落。さらに下落を続け、2022年10月には150円台に迫る。

このような急激な円安局面を受けた政府は、2022年9月と10月に、大規模な為替介入に踏み切った。具体的には2022年9~10月の間で6兆3499億円を投入し、円を買った。

政府が為替に介入したのは24年ぶりであった。先の投入金額が前回の金額を大幅に上回る、1カ月の間の為替介入額としては過去最大の金額であることからも、歴史的な円安であったことが窺える。

その後、一度は円安は収まりかけたように見えた。だが、2023年から24年にかけて再び円安傾向となる。2024年の4月29日には34年ぶりという160円台の大台を突破。本稿を書いている8月8日現在では、世界中で株価が急落している状況も関係し、140円台に戻っているが、円安状態は依然として進んでいる、と言えるだろう。

今、世界は、通貨よりも物価が上昇するインフレ傾向にある。ロシア・ウクライナ戦争の影響も大きい。このような状況のもと円安が加速し、世界中の投資家たちから日本円は捨てられ始めたのである。

円安の原因と日銀政策の見直しの必要性

現在の日本の状況を見ていると、イギリスが破綻したときの状況と似ているように感じられ、私は心配でならない。

そもそも今回の円安の原因は何なのか、考察してみたい。短期的な原因は、アメリカの中央銀行であるFRBが、大幅な利上げを実施したことだろう。日本のメディアや専門家にもそのような論調が多く見られるし、実際にアメリカの利回りの情報や状況により、円の相場が影響を受けていたことは事実だ。

しかし、円安の根本原因は他にあると私は見ている。日銀の政策である。金融緩和政策と称し、日銀が日本円を刷り続けた結果、日本円の価値が下がったと考えているからだ。日銀は2016年以降、金融緩和政策を強化するために、指定した利回りで国債を際限なく買い入れることを決定。その原資として、日本円を際限なく印刷し続けた。

自国の通貨を刷り続ければ、価値が下がるのは必然であり、これは経済に詳しくない人でもわかるシンプルなことだ。つまり、日銀がこのような姿勢を改めない限り、通貨安は続くだろう。2022年12月に、このような金融緩和策の方針転換を決めたが、あくまで一部見直しに過ぎないと私は見て

財務上の問題を抱える国家では、通貨が値下がりする現象が必ず見られる。通貨の本当の実力を示す日本の実質実効為替レートの2022年における数字を見ると、73~86程度で推移している。つまり、日本円は実に30年前の安値まで落ち込んでいると言える。

日銀の政策により円の価値が下がっている状況の中、逆にアメリカは利上げしているので、多くの投資家や資産家は円を売ってドルを買う、という動きに出たのである。もちろん、通貨を購入する理由は利回りだけでなく、その通貨を扱う国が安全であるかどうかといった点も重要な判断要素だ。そういった観点では日本円は魅力的であり、リスク回避のために持っておく、という投資家もいるだろう。

しかし今回の円安では、そのようなリスクヘッジを抜きにしても、円は大幅に売られ、捨てられ始めたのである。

現在の円安はゼロ金利政策が原因

私は、日本の財務状況は、ウクライナと戦争をしている現在のロシアよりも悪いと思っている。国の負債額がロシアと比べはるかに大きいからだ。国債の利回りが世界の主要国と比べて低いのも問題だ。つまり現在の円安は、日銀が長年続けてきたゼロ金利政策が原因だと結論づけることができる。

私たち投資家は、市場の動きを注視している。特に外国為替市場で起きていることは、各国の問題や政策における課題を明るみに出すからだ。つまり外国為替相場は、その国でどのような政策が進められ、それにより何が起きているのかを示す、一つの重要な指標なのである。

このまま円安が進行する──日本円が海外の投資家から捨てられ続ける状況にまで落ち込んだら、円が別の通貨に置き換わったり、国が新しい通貨を発行したりするなどということも起こり得るだろう。

実際、深刻な経済不況やインフレが進んだジンバブエでは、それまで流通していたジンバブエ・ドルを廃止。米ドルや南アフリカのランドといった他国の通貨の利用を経て、新たなジンバブエ・ドルが発行されている。

「日本は大丈夫」「今回は大丈夫」。私が以前から述べていることでもあるが、このような考えは間違いであることを、最後に述べておきたい。