◎今日のテーマ:基礎的財政収支試算
2025年のPB赤字は6.8兆円
政府が財政再建計画で黒字化を目指す国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス:PB)を、内閣府が2019年1月30日に公表しました。これまで以上の高成長が続いても、2025年度に1.1兆円の赤字が残るそうです。しかし、この資産は現実不可能と思える経済成長を前提としています。現実的な現状並みの実質1%前後の成長率を前提にした資産の場合、25年度のPB赤字は6.8兆円です。
PB
PBとは、税収・税外収入と、国債費(国債の元本返済や利子の支払いにあてられる費用)を除く歳出との収支のことを表し、その時点で必要とされる政策的経費を、その時点の税収等でどれだけまかなえているかを示す指標となっています。
財政ファイナンス
現在は、日本銀行が、国債をどんどん買い上げていて、法律で禁止されている実質的な財政ファイナンスを行っています。しかし、日本銀行の異次元緩和が出口に近づけば、国債費が急激に増大するでしょう。現在、財政ファイナンスによる弊害が発生していない理由は、日本銀行が印刷した紙幣を国民が預金や株式などの形で保有しているからです。
地震や資産の海外避難でインフレ発生
しかし、いつかは、この紙幣を引き出して使い始める時期が来ます。例えば、南海トラフ地震や首都直下型地震の後に住宅やビルの建築需要が高まった時、あるいは金融資産を日本から海外に逃避させることによって円安が進んだ時などです。その結果、大幅なインフレが発生するでしょう。この状況は、問題の先送りという段階を通り越して、問題を雪だるま式に大きくさせる状況です。そういった恐ろしい事態を前提にしていないのが、現在の基礎的財政収支試算です。
与党は現状を変えられない
それでは、現在の日本の政治家は、この問題を解決できるでしょうか。まずできないと思います。自民党は、現在の異次元金融緩和で選挙に大勝してきているので、景気を悪くする経済政策をあえて取ることはしないだろうと思います。野党も、消費税を8%へあげることの不人気を身にしみて感じているから、財政緊縮策をとることは無いでしょう。
インフレのインパクトを弱める
それでは、何も打つ手がないのでしょうか。いずれ、すさまじいインフレになんるでしょうが、そのインパクトを弱める方法はあると思います。
最低賃金倍増計画
その方法の一つが、最低賃金の倍増です。現在の日本では最低賃金が低いので、個人消費にお金が回らないのでしょう。最低賃金が上がれば、それに伴って、正社員の給料もある程度上がるはずです。そしてある程度緩やかなコストプッシュインフレが進むでしょうから、日銀の異次元緩和を早めに終わらせることができます。日本の昭和の時代は、人手不足の時は給料が上がったのです。しかし、今は外国人を雇用したり、海外に拠点を移したりしてきました。日本に残った低賃金の業種の主なものは、サービス業、福祉業などです。この最低賃金が上昇すれば、現在働いていない高齢者や女性も、ある程度働き始めるでしょう。
最低賃金を2倍にしてもオーストラリアやスイス並み
それでは、日本の最低賃金は世界的に見てどの程度なのでしょうか。日本はアメリカと同じ水準で、オーストラリアやスイスのほぼ半分です。韓国よりも低い水準です。従って、最低賃金倍増計画は非常識な話ではなく、人手不足に悩む現在の日本にとっては有力な選択肢の一つだと思います。
国 | 時給:USドル |
日本 | 7.22 |
アメリカ | 7.25 |
イギリス | 12.54 |
オーストラリア | 14.22 |
カナダ | 7.38 |
スイス | 13.15 |
ドイツ | 10.19 |
フランス | 11.12 |
経団連から政治献金を受けていない野党の出番
そして、これを選挙公約にできるのは、自民党ではなく野党でしょう。経団連は最低賃金を上げることに反対はずですが、そこから政治献金をもらっている自民党は、これほど大胆な政策は取りえないでしょう。一方、連合は組織の構成員の多くが大企業労組だとしても、おおっぴらには反対できないでしょう。野党は、最低賃金倍増計画をぜひまじめに考えてもらいたいものです。これを実施することにより、将来の悲劇的インフレをやわらげ、緩やかなインフレタックスを実現できるのではないかと思います。