企業と厚生年金基金の年金担当者のレベル

◎今日のテーマ:企業と厚生年金基金の年金担当者のレベル

企業の人事部門で年金を担当している人の年金運用の知識レベルは、どの程度のものでしょうか。

企業年金は5.5%の運用利回り

2001年に確定拠出年金制度がスタートしましたが、その頃、企業の年金制度は、とても困った状況にありました。退職後の社員である受給者に年金を支払うためには、5.5%の運用利回りを達成しなければならないのですが、運用環境が悪いので、とてもそんな高利回りを実現できません。

コスト高

当時悪かったのは、株式や債券の市場環境だけでは有りません。年金の運用にも問題がありました。例えば、

① 年金資産を運用する金融機関が多くてコスト高になっていた

② アクティブ運用が多いため、A社が買った株式を、同じ期間内にB社が売っていたので、意味のない売買手数料が証券会社に払われた

というようなことがありました。

金融機関は自分にとって不都合なことを教えない

このようなことに気がつくまで、数十年にわたって余計なコストを支払い続けたわけです。そして、その余計なコストについて知らなかったのは、その年金を保有している企業だけで、委託を受けた金融機関は、余計なコストと知りながら、利益を上げるために、黙っていたのです。

メガバンクのファンドラップ

この②については、個人に対してまったく同じことが、メガバンクの窓口で現在も行われています。それは、ファンドラップでアクティブファンドに投資する場合です。ファンドラップというのは、投資一任契約、つまり、すべてお任せなので、顧客は詳しい投資信託内容もお任せです。アクティブファンドが多いと、同じ銘柄を、あるファンドでは買い、他のファンドでは売ることがあります。そうすると何もしないときに比べると、売買手数料だけ余計にかかってしまうのです。顧客が損をして金融機関だけが儲かるということです。

ファンドラップ自体の委託手数料も高い

ファンドラップ自体のコストが高い上に、同じ銘柄の売り買いで余計なコストがかかるのは、まったくひどい話です。それと同じことが、企業の年金に対して20年前まで行われていたのです。おそらく、今も、どこかで行われているのでしょう。

厚生年金基金のレベルに移ります。

私が関与した厚生年金でも、いくつか問題がありました。

① ずさんな事務処理

厚生年金基金では、誤りを防ぐために、2重3重のチェックをすることになっていますが、実際には行われていないことがありました。この書類を作っていた責任者は、地方自治体からの天下り役人で、私が関与して間もなく65歳で退職しました。その人は厚生年金基金の仕事には精通していなく、他にも誤った事務処理が多数ありました。その人の年収は、約1200万円とのことでした。10年ほど前は、社会保険庁、最近では、身体障害者の雇用者数の水増し、毎月勤労統計の不適切調査など、厚生労働関係の仕事には問題が多いようです。

② 不要なコスト高

この厚生年金基金でも5.5%の運用利回りを確保できないので、多すぎた金融機関を減らすことにしました。しかし、新しい体制に移行する際、残った金融機関が新しい仕組みを入れてきたのです。それは、資産運用にレバレッジをかける手法です。レバレッジをかけると、手数料が高くなります。生命保険などの金融機関は、厚生年金基金のコスト削減策による収入減少を挽回するために、レバレッジのような手法を駆使するのです。レバレッジをかければ、株価が上昇するときには運用成績はより良くなりますが、下落すればより悪くなります。どちらの場合でも儲かるのは、それを担当する金融機関です。つみたてNISAでも、レバレッジをかけた運用をする投資信託は、投資対象としては認められていません。厚生年金基金の役員は、基本的に資産運用に関しては素人ですから、このような提案を採用してしまうのです。

金融機関の戦略・戦術は非常に巧妙ですから、用心した方がよさそうです。