なぜ異次元緩和は効果がないか。いつ効果が出るか。

◎今日のテーマ:なぜ異次元緩和は効果がないか。いつ効果が出るか。

上手くいかない異次元金融緩和政策

2013年4月に、異次元金融緩和制作が始まりました。デフレを脱却するために、インフレ率2%の目標を設定して、長期国債とETF(上場投資信託)を大量に購入し、マネタリーベース(日本銀行の供給する通過量)を増加するという政策です。同時に日本政府は、財政支出をどんどん行って国債は増え続けています。しかし、インフレ率2%は実現していません。その理由を、私なりに疑似的に分かりやすい言葉で考えてみます。

1000万円の国債を発行(1000万円を1000兆円に置き換えることもできます。)

政府は1000万円の建物を建てて、その建設費を国民Aに支払います。しかし、建設費を支払うための税金収入がありませんから、国民Bに国債を買ってもらって、そのお金を調達します。

国民Aは1000万円を銀行預金

国民Aは政府からもらった建設費を銀行に預金します。日本の将来や自分の老後が心配なので、今使わずに、将来必要になった時に引き出して使おうという賢明な考えです。

国民Bは国債1000万円を日銀に売る

国民Bは、保有している国債を日本銀行が1000万円で買ってくれたので、そのお金を銀行に預金します。国債を買う前は、銀行に預金していたお金ですから、元に戻ったのです。この結果、1000万円の建物が建って、国民Aは預金が1000万円ふえましたが、政府の借金は1000万円増えました。一方で、国民Bの預金は変化がありません。2013年4月から約6年間、この状態が続いてきたのです。

  • 国民Aの預金が1000万円増える。
  • 政府の借金が1000万円増える。
  • インフレ率は2%に届かない。

この状態が6年間続いてきたのです。

国民Aの預金が引き出されるのはいつか

それでは、この状態は今後も続くのでしょうか。今後数年間は続きそうですが、永遠に続くわけでは有りません。代表的な例として次の3つが考えられます。

① 首都直下型地震、南海トラフ地震

深刻な大地震が発生して、国民Aの家屋が崩れたため、国民Aが1000万円の預金を引き出して、家屋を再建する場合です。この時には、国民Aの家屋だけでなく、首都の他の家屋も崩壊し、一気に建設ラッシュになりますから、建築資材などの価格が上がって物価が高騰します。また、政府は首都圏の復興のために、大規模な復興予算を立てますから、インフレが加速されます。

② 日本円の番人だった人たちが円を売ってドルを買っている

日本銀行OB、財務省OBの中には、日本円を信頼しない人が出てきていますので、自分の退職金はドルを中心とする外貨に換えています。その傾向は広がりを見せていて、最近発表された『投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year 2018』の上位10銘柄のうち、バランスファンド2銘柄を除く8銘柄が先進国、アメリカ、全世界の株式を対象にしたファンドです。もはや、大手金融機関の広告、営業に乗せられない賢い個人投資家達の向かう先は、外国株式インデックスファンドに移ってしまっているのです。そして、この動きを後押ししているのが、iDeCoとつみたてNISAです。圧倒的な低コストを売り物にした外国株式インデックスファンドは、今後確実に普及していくでしょう。

③ 異次元金融緩和の出口政策

インフレ率2%の実現は、上記①又は②の結果か、あるいは他の要因で、いずれやって来るでしょう。その時には、異次元金融緩和の出口政策が問題になります。出口に差し掛かれば長期金利は上昇し、大量の国債を発行しなければならなくなるでしょう。都合よくインフレ率2%で落ち着くとは思えません。

上記①、②、③の一つでも発生すれば、国民はどういう行動に走るのでしょうか。日銀OBや財務省OBのような行動をとるのではないでしょうか。その結果、円が売られて円安になりますから、輸入品が高騰して一層インフレが進むと思います。