◎今日のテーマ:金融業界の大変革3
保険業界の大変革
私は、様々な金融関係、金融商品の仕事などに携わって来ました。富士銀行(現在のみずほ銀行)に身を寄せていたこともあり、生命保険、損害保険関係の仕事にも携わった経験があります。厚生年金基金の役員、企業の人事部門の福利厚生で確定拠出年金、確定給付年金、従業員持株会の責任者もつとめました。従って金融関係には表面的ながらある程度の知見があると思います。そのような知識からすると、保険関係の仕事はかなり安定していると考えていましたが、今後、もしかすると、最も大きな変革時期を迎えるかもしれないと知り、驚いています。
大数の法則
保険の原理は、「大数の法則」に基づいてリスクをプールすることです。この法則によれば、ある事象が起こる確率がとても小さくても、実際に起こった場合には甚大な影響が起こる場合に適用されます。具体的には、一家の大黒柱が30歳代、40歳代で死亡する確率は低いけれども、実際に死亡すれば、残された家族は経済的に苦境に陥ります。そこで生命保険が必要になります。
インシュアテック
保険業界は寡占的な業界で、巨大企業によって長年支配されてきました。そして、そこで働いている人は高額の給料をもらっていました。ところが、現在のAIやブロックチェーンによって「インシュアテック」(InsureTech)が起ころうとしているのだそうです。
個人ごとの保険料
今までの保険の条件は大まかなくくりで決まっていました。私も保険料の表作成に携わったことがありました。ところが、AIの活用で、個人ごとに保険料率を決めるようになってきました。例えば、自動車にセンサーを搭載して運転の状況をモニターし、ビッグデータを活用して保険料を決定する保険です。あるいは健康状態を常にチェックしてデータを集め、保険料率に反映させる医療保険も出現しています。
少人数グループの保険
保険の料率が個人ごとに決まるだけではなく、少人数のグループごと、例えば10人程度の集団に個別の保険を設定する仕組みが可能になります。そうすると、少額の保険金はグループのメンバーがプールした資金から支払い、高額の保険金だけを外部の保険会社に払ってもらうのです。もちろん、高額の保険金を支払ってもらう保険会社には、再保険料をあらかじめ払っておきます。
顔見知りのグループだと保険金発生抑制努力
少人数のグループが顔見知りの場合、その人たちに迷惑をかけないようにするという意識が働きます。そうすると保険金の支払額が抑制されますから、翌期からの保険料が引き下がります。また、保険の企画と保険料支払をコンピュータとインターネットで完了すると、販売代理店の人件費と経費が掛からないので保険料が安くなります。
金融知識の共有
更に、そのグループ内で保険の知識を共有するようになると、不必要な保険に入らなくなるという効果が起きるかもしれません。ハーバード大学の研究によると、金融商品で最も高いパフォーマンスを得ているのは、素人の仲間が集まって情報交換をし、その知識に基づいて資産を運用する場合だそうです。日本では、必要性の低い保険商品が氾濫しているのであって、生命保険会社の部長さんは、そのような保険に入らず、自分が勤めている会社が福利厚生で行っている団体定期保険だけに加入するのだそうです。このように考えると、日本の保険業界も今後数年間で大変革時期を迎えるかも知れません。