株式取引無料化と問題点

アメリカでは株式取引無料化が急ピッチで進み、日本でもインデックスファンド、ETFの経費が低減しています。

三菱UFJ国際投信は、来年年1月に発売するグローバル株式のETF(上場投資信託)の経費を0.078%(税抜き)とするそうです。今までは、VT(バンガード®・トータル・ワールド・ストックETF)が0.09%で世界最低だったのですが、それを下回ります。

2019年11月29日、ニューヨーク・タイムス紙が株式取引無料化の記事を掲載しました。この件について考えたいと思います。まずは、私の拙訳です。

株式取引の無料化が実現するかもしれない、でも問題もありそうだ。

価格競争が進んで株式取引のコストがゼロになりました。しかし証券会社は何とかして儲けなければならないので、何らかの方法があります。

投資には昔より経費がかからなくなりました。株取引は無料で、インデックスファンドの中にも無料になった方が良いものもあります。現在は生身の人間が、優雅な革製品のバインダーに入ったアドバイスを提供していますが、そのコストのほんの一部で、機械が多様なポートフォリオを作成することができます。

先月わずか数日間のうちに、証券会社間の価格戦争の結果、チャールズ・シュワブ、TDアメリトレード、Eトレード、フィデリティの数多くの取引コストが無料になりました。そして、今週チャールズ・シュワブがアメリトレードを260億ドルで買収すると発表しました。低コスト投資の時代にはマーケットシェアが重要だ、ということを示した取引だということです。

しかし、低コスト投資が必ずしも見た目ほど顧客にとって、安くつくわけでは有りません。ある手数料を無料化する一方で、顧客にコストを負担させる会社はたくさんあるのです。そして彼らがどんなことをするのかを把握するのは、投資家の皆さんの責任です。

各々の企業の方針は異なりますが、参考になる着目点があります。あなたの預り現金の使い方、提供するほかのサービスコスト、無料取引を利用して代わりに他の人に支払ってもらうことで利益を上げることです。

過去10年間にわたって、オンライン証券会社と資産管理企業は顧客の現金で金儲けを始めました。例えばまだ投資していないお金を、 高利回りのMMFでなく、低利回りの預金口座に入れてしまう、モーニングスターのフィナンシャル・サービス株式調査部長マイケル・ウォングは言います。

例えばシュワブは、あなたの資産にわずか0.06~0.45%しか払わずに、約2.65%で運用し、差額を自分のものにすると彼は言います。現金保有は他の場所で2%を稼ぐのかも知れません。

シュワブの正味受取利息は、昨年の総収入の60%を占めました。TDAアメリトレードやEトレードも同様に利息収入に頼っていて、昨年の各社の半分以上を占めています。

フィデリティは401(k)ビジネスに関する巨大企業ですが、利子収入に大きく依存しているわけでは有りません。今年初め同社は、個人投資家の余剰資金を全額高利回りのマネー・マーケット・アカウントに移すと発表しました。バンガード社も同様です。

そうです、取引無料化は顧客にとって少しは恩恵があります。でも証券会社が保有する現金について、より低いリターンという形で償っていそうです。

そして無料取引は、あなたにとってあまり価値がないかも知れません。見識のある投資家なら、注目株を追いかけることはほとんどありません。彼らは多様で複合的なインデックスファンドを買って保有し、大学の学費やリタイヤなどの大きなライフイベント支払いに役立てようとします。(インデックスファンドは広範囲の株式市場をトラックする基礎的なオープン投資信託です。)

大手証券会社はこのことを理解していて、多くはベターメント社などの小規模で創立間もない企業の先例にならいます。同社はロボアドバイザーとして有名で、極めて低コストで、主に自動で計算される大量生産のデジタル化したポートフォリオを提供します。

シュワブは独自のデジタル投資サービスを2015年に導入し、このサービスを「無料」にすることで、一歩先に出ようとしました。しかしそこに問題がありました。

多くのロボアドバイザーは通常、投資の基礎的は費用(たいていは非常に低額)とともに一般費(例えばざっと顧客の資産に対して年率0.3~0.5%)を課しています。シュワブはこの一般費を課さずに基礎的ファンド費用だけを課したのです。

しかし、投資家はポートフォリオの6~29パーセントの預り現金を保有しなければなりません。シュワブの広報担当によればその現金に0.45%の利子を現在払っています。資産が大きくなればなるほどシュワブはたくさんのお金を稼ぐことになります。

シュワブは、最低25,000ドルの資産のある顧客にはプレミアム・サービスを提供し、人間の公認フィナンシャル・プランナーが手助けします。それには、投資のコストとは別に、現在一か月30ドルの経費が掛かり、初回は300ドルの手数料を一回だけ払います。それに加えて、高額の預り現金残高も必要です。

手数料無料取引の制度にも、「裏では証券会社が稼ぐ手段がある」とバンクレイト・ドットコムのチーフ・フィナンシャル・アナリストのグレッグ・マクブライドは言います。

例えば、ブローカーは技術的に精通した大量仲介業者から支払いをしてもらうのです。その仲介業者は小売りする権利を買うのです。

この慣行は「注文の流れに応じた支払」として知られ、オンライン証券企業の中では広く行われています。(フィデリティとバンガードは、そのような支払いは受けていないと言っています。)ブローカーは顧客の注文に対して最良の価格を見つける義務があるので、そのような慣行によってブローカーの利害が相反することになります。そのような支払いをしたからと言って、顧客にとって最良の価格を見つける義務に違反したとは必ずしも言えないと、証券取引等監視委員会は言いました。しかし、委員会はそのようは支払いが潜在的確執を生む可能性があることを認めていて、支払いの公表を促しています。なぜなら株式がより高い価格で買われたときに、投資家が大損する可能性もあるからです。

「マーケット・メーカーへの再販売注文の流れによって、無料取引を唄う企業にますます注目が集まるでしょう。」と調査コンサルティング企業セレントの資産管理長ウィリアム・トラウトは言います。

ここでの教訓:無料取引、あるいは他の無料サービスは、投資家が他のところで多分支払っているという印です。

そして、支払料金の一部によって仕組みが分かります。