危険!近づくな!かんぽ生命・郵便局の金融商品

3か月の業務停止命令

金融庁は2019年12月27日、不適切な保険販売を行っていたとして、かんぽ生命保険と日本郵便に対し新規の保険販売を対象に3カ月間の業務停止命令を出しました。顧客に虚偽の説明をして保険料を二重に払わせるといった不正行為が広がっていたと判断しました。

かんぽ生命の不正販売問題が、いろいろと報じられていますが、どれほどひどい内容だったのかを、私の郵便局訪問記、「生命保険の不都合な真実」(柴田秀並 光文社新書)、朝日新聞等を参考にして、勉強したいと思います。

私は2018年9月に郵便局を訪問しました。「まとまったお金の運用商品を教えてほしい。」と尋ねました。対応してくれたのは、かんぽ生命の社員でした。私は、「投資関係の商品を教えてほしい。」と言ったところ、「それなら、こちらではなく、一般の証券会社に行かれた方が良い。」と言われました。それでも、せっかく郵便局に来たので、「おすすめ商品を教えてください。」と言いました。担当者は、保険ラインアップという冊子を取り出して説明を始めました。

かんぽの保険は、終身保険と養老保険

終身保険は、「新ながいきくん」シリーズです。基本保障が1000万円、賠償保障が1000万円の生涯補償などです。

養老保険は、「新フリープラン」シリーズです。基本保障が1000万円、賠償保障が1000万円で、満期保険金が1000万円です。

アフラックのがん保険

それ以外には、アフラックのがん保険を薦められました。アフラックに長い間加入している契約者は、先進医療特約を付けていない人が多いので、「検討した方が良い。」と言われました。しかし、このブログで何度も説明しているように、アフラックのがん保険は還元率が悪いので入らない方が良い商品です。

郵便各社は、その頃既に保険を優先的に販売する体制になっていたのでしょう。ただし、その後は電話などもなく、だまされることもありませんでした。

高齢の一人暮らしが狙われる

しかしだまされた人もいます。ある女性の父親は、とある地方で一人暮らしをする80歳近くの男性ですが、認知能力が低下していました。その自宅を訪れた時、自宅は整理されておらず、散らかり気味でした。落ちていたのは、ゆうちょ銀行の取引明細の用紙です。「かんぽ」「かんぽ」「かんぽ」「アフラック」「アフラック」。保険会社の名前がずらっと並び、たくさんの保険料が引き落とされていました。

年金18万円に対し保険料40万円

2019年6月にかんぽの不正問題が大きく報道され、調べたところすでに解約したり完納したりした保険も含めて、以下の通りでした。

  • (かんぽ)就寝、養老、学資が複数
  • ・アフラックのがん保険が複数
  • 住友生命の条件付き緩和保険が複数
  • 三井住友プライマリー生命の1千万円の外貨建保険

三井住友プライマリー生命の外貨建保険1千万円を除いても、おおい時で1年間の保険料は500万円近くにのぼっていました。一人で暮らすこの男性の収入は年金のみで、一月の年金は18万円でした。一方で、保険料の支払いは月40万円以上で、年金を楽にオーバーしていました。貯蓄を取り崩して保険に入っている状態でした。

具体的な手口をご紹介します。

1.乗り換え拒絶:旧保険から新保険に契約乗り換えようとして、旧保険の契約は解消されたが、新契約の契約を拒絶された。この結果、どちらの保険にも入れなくなった。

2.保険金の支払い拒絶:契約乗り換え後、告知義務違反によって乗り換え後の契約が解除となり、保険金の支払いを拒絶された。この結果、どちらの保険にも入れなくなった。

3.特約切り替えや保険金額の減額によって、より合理的な提案が可能であったのに、しなかった。

4.新旧契約に補償内容や保障期間が全く変わらないのに乗り換えたが、予定利率だけ下がっていた。その結果、乗り換えによって保険料が割高になってしまった。

5.契約乗り換えの判定期間後に旧契約を解約することによって、保障の重複が生じた。

6.乗り換え後の契約の契約日の前4か月から、前6か月の間に、乗り換え前のご契約が解約されたが、引き受け拒絶や支払い拒絶にならなかった。この結果、保障の空白期間が生じた。

5や6のようなことが起こる理由は、そうすることにより、郵便局員の評価が上がり、手当も増えるからです。

苦情の定義を厳しくしたため件数が激減

かんぽ生命は顧客からの苦情急増を受けて、2017年1月に対策本部を設置しました。ところが同年4月に苦情の定義を厳しくしたので、2017年の苦情件数は激減し、2018年4月にもさらに定義を厳しくし、苦情件数は減りました。そして取締役会などで「問題は改善している」と報告したのです。

ゆるキャラ、半ボケ

上記のような認知症の顧客を「ゆるキャラ」、「半ボケ」と呼んで、食い物にしていたのです。また、元郵便局員は、局員当時認め印を50本持っていて、勝手に押印して契約を締結していたと証言しています。さらに、東北地方の90歳女性が10年間で54件の保険を契約し、すべて解約。勧誘に携わった局員は27人にのぼりました。

今まで被害に遭った高齢者の特徴は以下の通りです。

  • 一人暮らしだったり、子供が遠くに住んでいたりして頻繁には訪れない
  • 玄関や庭が整理されていない
  • 気が弱そうですぐに人の話を信じる
  • 簡単に局員を家の中にあげてくれる
  • お金の管理が甘く、容易に通帳を見せてくれる
  • 認知能力が低いか、聴覚や視覚などが衰えている

2020年1月には、日本郵政社長、かんぽ社長、日本郵便社長が交代しますが、当面は実態の解明から始まるのでしょう。私たち消費者は、郵便、かんぽなどの金融商品には近づかない方が良いと言えます。