アメリカの金利とインフレ 1

新型コロナウイルスの影響で世界的に低金利政策がとられています。

インフレ率2%達成なら出口戦略

日銀の黒田東彦総裁は2021年1月26日、衆院・財務金融委員会で、日本の財政状況は「きわめて深刻な状況」にあり、財政の持続可能性を高めていくことが重要だと述べました。その上で、日銀による国債買い入れは金融政策の手段として実施しており、「財政ファイナンスや国債の買い支えと言うつもりはない」と強調。2%の物価安定目標に近づけば、金融緩和からの出口戦略を模索する方針を示しました。

「日銀として最大限の金融緩和をしてきたが、その下でも2%の物価目標が達成されていない。金融政策に一定の限界があった」とし、各国の中央銀行と同様に責任を感じていると語っっています。

インフレになる要因

日本はいつになったらインフレになるのでしょうか。インフレになる要因は、当面次の3つの要因が考えられます。

① 労働力不足により賃金が上昇する
② 消費者が貯蓄を減らし物を消費するように転換する
③ 円安になる

① 労働力不足により賃金が上昇する

日本は現在新型コロナウイルスの影響を受けて失業率が高いため、当面は労働力不足になりそうもありません。また、賃金上昇よりも雇用確保に力を入れる企業が多く、業績の悪い企業が賃金押し下げ要因になっています。したがって労働力不足が原因で賃金が上昇し、インフレになることは当面考えにくいでしょう。

② 消費者が貯蓄を減らし物を消費するように転換する

貯蓄の多い年代層は高齢者というのが日本の現状ですが、人生100年時代と言われたり、老後の生活費不安の問題が取りざたされる中、貯蓄が消費に回ることには期待ができません。

中年までの若い層も、東日本大震災、新型コロナウイルスなどを経験し、ベアもままならない状況では、あまり消費にお金を回さずに貯蓄する傾向が高いようです。

ただし、首都直下型地震や東南海トラフ地震が起きた場合には、建築需要が急激に高まり、インフレになる可能性があります。

③ 円安になる

現在は貿易収支、経常収支とも落ち着いているので、この面での構造的な要因はなさそうです。一方で、中期的にはアメリカの金利が上がって、ドル買い円売りになる結果、円安になる可能性はありそうです。

そこで、アメリカの金利について考えてみましょう。

下図は2000年からのアメリカ政策金利と10年国債の利率です。

緑の線が政策金利、グレーの線が10年国債利率です。FRB政策金利(FOMC) は現在、以下の通りです。

上限金利 0.25%
下限金利 0.00%

2000年には6.5%、2006~2007年には5.25%、2019年にも2.5%でしたので、現在の水準は非常に低いことが分かります。

アメリカの低金利は、いつまでも続くのでしょうか。そうではないでしょう。この件に関してCNBC2021年1月27日の記事で論じているので、それを勉強してみましょう。以下は拙訳です。

連邦準備制度理事会は、ゼロに近い金利をいつまでも維持するわけではない。何をすべきかは以下のとおり

キーポイント

  • 信用度の高いアメリカ人にとって、歴史的低金利は多くの利点がある

  • 経済回復に伴い、これらの機会は枯渇する

連邦準備制度理事会は、経済回復が確実なものになるまで基準金利をゼロ近辺に据え置くと、1月27日水曜日に発表しました。

現在の金利は底

連邦政府が大量ワクチン計画を本格展開し、コロナ危機のさなかに追加刺激策を検討する中、アメリカ人がパンデミックを日々やり過ごせるように、中央銀行は全力を挙げて取り組んでいます。このことによって、今のところ金利は底にあります。

今年は経済は動かない

「たとえ全員がワクチンを接種しても、経済が動き出すにはしばらくかかるだろう」と、コロンビア大学ビジネス・スクールのイミング・マ金融学教授は言います。

「経済は動き出しますが、起こる時期は今年ではなさそうです。時間をかけて機会を探してみましょう。」

数百万人が失業し、ますます多くの人が金銭的余裕がないと感じている中、もし次に新型コロナ救済政策がなくても、FRBの政策は助かります。

FFレートは個人生活に影響

FFレートは銀行同士が短期借り入れに対してかけ合う金利で消費者が払うものではありませんが、FRBの動きはやはり毎日の個人の借り入れや貯蓄に影響を与えます。

住宅ローンへの影響

例えば、経済、FRB、インフレーションは全て長期固定住宅ローン金利に何らかの影響を与えますし、この金利は通常、中期米国財務省債券利回りに固定されています

現在の30年住宅ローン平均固定金利は、バンクレートによると、1年前の3.77%から下がって、記録的に低い3%近くです。

住宅ローンの借り換え

住宅保有者は、すでに借り換えをしていなければ、より低金利で借り換えることによって、毎月の支払いを数百ドル下げることができます。

「これは家計にとって最高にインパクトがあります。去年から今年に対して大きく下落したので借り換えの節約はとても魅力的です。」

クレジットカードの利率

このことは他のタイプの借金に関しても当てはまり、特にクレジット・カードに言えます。

ほとんどのクレジットカードには様々な利率があるのですが、それはFRBの基準金利に直結していることを意味します。

1年前に中央銀行が金利引き下げを開始して以来、クレジットカードの利率は、バンクレートによると、17.85%から16.03%に下がりました。

<明日に続く>