老後危機をいかに立て直すか 2

<昨日の続き>

アメリカ事情

アメリカにおいても、老後の危機が深刻になっているようですので、昨日に続き手勉強しましょう。

アメリカの老後危機をいかに修復するか:10人に専門家が助言

(3人目から続けます。)

現在の退職勘定を改良する

ボストン・カレッジ退職研究センター理事長アリシア・マネルは、ギリシャ神話の神々のように、もっと矛盾していた。

一方でマネルは、会保障を救済する必要があるとするニューカムやコリンソンに同意する。しかし、経営者が拠出する退職プランによって、労働者が自ら貯蓄する方法について何かしたいと思っています。

社会保障の支払いを増やすために収入を増やせば給付も増えるが、どのアメリカ人も仕事を通じて個人退職積立勘定を必ず持つようにすることだとマネルは言います。「すなわち、連邦自動IRA法を可決することだ。」と彼女は言います。これは、長寿・退職イーゴンセンターのプログラム・ディレクターのマイク・マンスフィールドも推す戦略です。

このシナリオの下では、会社は従業員が自分で管理するプランに登録させるか、政府が管理するIRAプランに登録することになります。例えば、オレゴン州はこのように機能する自動IRAプランを運営しています。

(訳者注:IRAは拠出時に課税されず、給付時に課税されます。一方、ロスIRAは拠出時に課税され、給付時は非課税です。)

テキサス・テクのマイケル・ギルメット個人ファイナンシャル・プログラム准教授は、自動登録は重要な手段だがもっと積極的になる必要があるということに同意します。現在、ほとんどのプランの基本的な初期掛金は給料の3%です。

「全ての新規採用者の、401(k)の初期設定掛金率を10%にして初期設定投資をターゲット・デート・ファンドにするのだ。」とギルメットは言います。「この優しい一押しは、従業員が掛金率や投資配分を変更させるときに役立ちますが、ほとんどの人は変更しません。

モーニングスターのクリスティン・ベンズ個人ファイナンス・ディレクターは退職プランのための掛金限度額を調整すると言います。現状では、毎年IRAの4倍を401(k)口座に貯蓄することが許されています。ベンズは、毎年の掛け金上限を同一にすべきだと考えています。

「会社に退職プランがあるかどうか、どこに掛け金を支払うかにかかわらず、退職のために毎年かける金額を一定にするのだ。こうして、退職プランを持っていなかったり、貧弱な退職プランしかない人々も退職貯蓄に関して適切な手段をとれる一方で、上っ面だけ立派な会社の退職プランの人も、そのプランを使い続けることができる。」とベンズは言います。

IRAの権威者は、権限を行使して、望んでいるかどうか、必要かどうかにかかわらず、強制的にお金を引き出させる、必要最小限引き出し(RMD)条項を廃止することによって、退職貯蓄をする人が生活を容易にできるようにすると言います。税収確保に熱心な連邦議会は他のアイデアを持っています。

「私だったら、生涯必要最小限引き出し額を完全に取り除く。」と言います。「どれくらい一つの口座から引き出し、他の口座から引き出すかを考えるのは、高齢者にとって頭の痛い問題。」

ファイナンシャル教育を強化する

他の3名の専門家は、現在のプログラムを良くすることに焦点を当てるより、退職貯蓄をする人自身に目を向け、できるだけ早く良いファイナンシャル習慣を身に着けることを要請しています。彼らの考え方によれば、安心できる退職に関する要素は既に存在して、私たちはそれを実際に使う必要があります。だから、退職危機はむしろデザインではなく、情報と行動の問題なのです。

フィデリティのジョン・ボロフ退職・輸入問題解決ディレクターはより良く、より包括的なファイナンシャル教育を作り出すために力を使うだろうと言っています。

「私の頭に最初に浮かぶことは、早く貯蓄し始めることの重要性を人々に教えることだ。複利の力は時間が許す限り、本当に強力だ。これは、手取り給与の1%増やすだけでも大きな効果があり、22歳の時に知っておきたかった。」

これが、興味をそそられる解決法だという理由です。25歳の人が、6%の利率で、一月500ドル(5万円)貯めれば、65歳になるまでには93万ドル(約1億円)になります。同じ人が35歳で始めると474,000ドル(約5,000万円)で終わってしまいます。

貯蓄を始めるのを手助けする

もちろん、言うは易く行うは難しです。フェデラル・リザーブによると、35歳未満の人が世帯主の平均的家計では、当座預金と貯蓄預金の口座に約3,500ドルの残高がありますが、毎月かなりの金額を貯蓄に回さなければならなくなります。それでもまったくやらないよりは、いくらかでも貯蓄したほうが良いのです。

この点は、シャーク・タンクスのケビン・オラリーの心に響きます。「最も難しいのは貯蓄を始めることだ」と彼は言います。「最初にやるべきなのは金額ではない。」オラリーのプランは子供が貯蓄したら同額を貯蓄してあげるマッチング・ファンドを奨励する。子供が100ドル貯蓄したら、その口座に100ドル足してあげるのです。これは子供が必要としている、貯蓄を始めて、親が足してやらなくなっても貯蓄し続けるための、前向きのフィードバックを与えることになるでしょう。もし100ドルまでの余裕がなくても、できる金額で始めればよいのです。最も大事なことは始めることです。

ハーツ・アンド・ウォレットCEOのラーラ・バラスは、引退しない貯蓄も優先される必要があると言う。人々は、お金を短期的に必要としており、住宅ローン、自動車ローン、緊急時用の貯蓄、楽しい休暇に注目が集まる。

お金の他のゴールを小さくしたり、ただ401(k)やIRAにだけ焦点を当てると言うバランスでは、必ずしも健全な退職貯蓄を実現できない。

貯蓄をする人には合理的でやる気が出るゴールが必要だ。だからウェイト・ウォッチャーというプログラムがうまく行くのだが、そこでは、ワインやデザートが完全に禁止されているわけでは有りませんから、中庸がカギです。緊急時用資金のために、子供の大学のために、住宅のために、それから、ちぇっ!新型コロナウイルスの後には、誰だってバケーションをしたい!小さな喜びも大切だ。予算にはそういうものも入れなけりゃ。人生は老後だけじゃない。

退職危機を終わらせる

私たちの専門家パネルが助言した、アメリカ人の退職危機を修復するそれぞれの方法は、それぞれの限界があります。社会保障給付を増やすのなら給与天引き額を増やす必要があり、それは、今使えるお金を減らすことになります。

しかし、ゴールに刺激を受けて、将来の退職の安心を増やしましょう。