長期・分散・低コストによる資産形成 6 ナッジ

<昨日の続き>

「2041 年、資産形成をすべての人に~5 つのターゲットと 15 のアイデア~」をもとに考えています。⇒は私のコメントです。

ナッジについて考えます。

ナッジ(nudge)の本来の意味は「(合図のために)肘で小突く」、「そっと突く」です。行動経済学等の一概念で、シカゴ大学のアメリカ人学者2人、行動経済学者リチャード・セイラーと法学者キャス・サンスティーンによる、2008年の著書『Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth, and Happiness』において広められました。それはイギリスとアメリカの政治家らに影響を与えました。

まずは研究員の報告を見てみましょう。

「英国で実施されているナッジを活用した家計の資産形成促進策について、ナッジの強弱の度合いに分けて紹介された。

まず、弱いナッジとして、金融・投資教育が挙げられた。英国では、公立学校のカリキュラムに金融教育が盛り込まれている。また、Money Advice Service(MAS)を中心とした、公的な金融情報提供機関があり、広範かつ深い情報が提供されている。こうした金融・投資関連の教育・情報提供により、個人の金融行動をより望ましい方法に変化させることが期待されている。

中位のナッジとして、金融アドバイスの場面において、投資家・顧客が一定の行動をとるように促すことが挙げられた。英国では、当局が一定の行動を促すために考えられるナッジを例示していることが興味深いとの指摘があり、「年金への拠出を増やす」には、「将来の収入の一定割合を年金に拠出することを従業員に要請する」こと等を、ナッジとして提示されていることが紹介された。

最後に、強いナッジとして、デフォルト戦略が挙げられ、英国では、職域年金の自動加入制度を導入していることが紹介された。これは、雇用主に対して、従業員に年金プランを提供する義務を課すものである。さらに、自動加入制度に対応できない中小零細企業の加入者の確定拠出型年金プラットフォームとして National Employment Saving Trust(以下、「NEST」) が設立されたことが紹介された。NEST では、ターゲット・デート・ファンド9(以下、「TDF」)であるリタイアメント・ファンドがデフォルト・オプションとして設定されている。英国の事例紹介を踏まえ、デフォルト戦略や自動化には副作用や課題はあるものの、資産形成が進んでいない日本においても、その導入について検討する必要があるのではないかと主張された。 」

弱いナッジ:英国では公立学校のカリキュラムに金融教育が盛り込まれている

⇒ 金融教育は学校でやってもらえれば良いと思いますが、公平、公正、当たり障りのない、形式的なものになりやすいでしょう。したがって、少し関心を持たせることぐらいしか期待できません。

私は自分の子供たちが社会人になってから、以下の内容をアドバイスしました。

お金に関する基本的な考え方

① 自分へのに投資に必要な勉強の教材、講習などに必要なお金は、最優先で使う

② 金融機関の巧妙な誘いには注意をする

  • 銀行:銀行の預金口座は給与振り込み、クレジットカードの決済などで必要だが、それ以外の利用はできるだけしないことが肝心。銀行には良い運用商品はない。特にクレジットカードは、絶対にリボ払い、分割払いを利用しないようにする。リボ払いの金利は15%。銀行の、自宅訪問営業、電話の営業、パンフレットはすべて無視すべき。
  • 証券会社:インデックスファンド、iDeCo、つみたてNISA、ETFの購入には証券会社が必要。SBI証券か楽天証券のネット証券で運用する。
  • 生命保険会社:生命保険会社の商品で利用する価値があるのは、自分が勤めている会社が福利厚生として導入している団体定期保険だけ。子供が生まれたら、子供が成人になるまで20年間入るのが良いけれど、入院特約、通院特約などは付けない。医療保険(高額療養費制度があるので不要)、財形は加入しない。(生命保険会社の部長は団体定期保険しか加入しない。他の保険は経費が高い。)

③ できるだけ自動で、銀行から引き落とし、証券会社に振り替え、積立をする。

④ インデックスファンドとETFを中心に蓄財・資産運用。個別株には手を出さない。債券は低利だから今は駄目。バランスファンドは債券を含むのでダメ。

⑤ インデックスファンドとETFは価格が下がっても決して売らない。数年で必ず回復する。

⑥ 実印が複雑なのは、詐欺に合わないようにするため。

⑦ 今の100万円は、8%複利計算で40年後に16倍の1600万円になる。

⑧ 企業型DC、iDeCo、つみたてNISAの運用商品は外国株式か全世界のインデックスファンドに絞る。

⑨ 従業員持株会は、個別株式なので持たない方が良いが、やむを得ず持つときは最小単位にする。

⑩ 給与明細はファイリングしておく。日本年金機構はいい加減。

このように具体的なアドバイスが必要。

中位のナッジ:金融アドバイスの場面において、投資家・顧客が一定の行動をとるように促す

⇒この研究会は対面証券の金融機関が会員なので、金融機関やファイナンシャルプランナーはアドバイスをしたいのでしょう。しかし、そのアドバイスの裏には、個人顧客がコストを支払うことになるということを認識すべきです。そんなアドバイスを聞かなくても資産運用は立派な成績を収めることができます。

強いナッジ:職域年金の自動加入制度を導入している

⇒ 企業型確定拠出年金のデフォルトは、銀行預金などの元本確保型が多いのですが、導入企業の経営者と労働組合が、内外の株式インデックスファンドを50%ずつにすれば、10年後、20年後には従業員の資産が増え、投資の普及に貢献すると考えられます。