インフレ税、インフレタックスがついにやって来る 1

インフレ税

インフレ税とは、政府が意図的にインフレを起こすことによって、政府の借金の実質的価値を減らすことです。

物価が倍になれば政府の借金は半分になる

例えば、GDPが500兆円、国債残高が1000兆円だとします。インフレを起こすことによってGDPが1000兆円になれば、政府の借金は実質的に半分になるわけです。しかも、この方法は、増税ほどの抵抗が国民の側にありません。従って、この方法が密かにとられつつあります。というより、数年前から、日銀の幹部がはっきりと、インフレ率2%のことを、「インフレ税、インフレタックス」という言葉を使っているそうです。

インフレ税を払うのは貨幣を持っている国民

しかし、政府の借金が実質的に減った分、貨幣を持っている国民は資産の価値が減ることになります。その減った分が税金とみなせるので、インフレ税と言うわけです。そして、政府の借金を半減させなくても、2割でも3割でも減らせば、預金封鎖やハイパーインフレになる危険から少し逃れることになると思います。その状態を、うまく続けられれば、政権与党は安泰でいられると期待できます。しかし、現在のように財政赤字の状態が続けば、いずれ激しいインフレになる恐れがあります。

黒田日銀総裁は、一向にインフレを抑える様子はありません。

オーバーシュート型コミットメントなら3%、あるいはそれ以上のインフレ

2016年9月に、日本銀行は日銀は金融政策決定会合で、物価のオーバーシュート型コミットメントを打ち出しました。オーバーシュート型コミットメントという言葉は分かりにくいですが、黒田総裁は「物価上昇が2%を超えて、ある程度そういう動向が続くまで金融緩和を続けるという、かなり強いコミットメントをした」と発言しています。つまり、2%では終わらないということです、それが、2.5%なのか、3.0%なのか、あるいはそれ以上なのかは、今は分かりません。

インフレが世界的に本格してきた今、もう一度インフレ税の勉強をしておきましょう。

imidasのインフレ税の解説です。 2013/09/09


「バブルの時はよかった。マンションを買ってもすぐに値が上がり、借金が軽くなったからなぁ…」と知人が懐かしむ。バブルの最中に住宅ローンで3000万円のマンションを購入すると、2年後には資産価値が4000万円に上昇、実質的なローン残高は2000万円に減少したというのだ。「思い通りに資産インフレを起こせる魔法があったら、またマンション投資で大もうけできるのに…」と、バブル再来を期待するが、そうした「魔法」など使えるはずもない。

ところが、この「魔法」を使うことができるのが政府と中央銀行で、大量に貨幣を供給するなどの方法で意図的にインフレを起こすことが可能なのだ。政府と中央銀行がインフレを起こせるのは、「貨幣発行権(シニョリッジ)」を持ち、貨幣という「商品」を独占販売しているからだ。インフレは物価が上昇すること、別の見方をすれば貨幣の価値が低下することであり、政府と中央銀行が貨幣の粗製乱造を始めることで発生するが、国民は貨幣を使わざるを得ない。インフレ税は政府が不良品の貨幣を国民に押しつけることでもうけを出す、つまり税金を徴収しているのと同じだと見なすことができる。

思惑通りインフレになれば、たとえば国債の利払いの実質価値は低下するので、政府の借金を軽くすることができる。インフレを起こすことで、政府の財政事情を好転させようとするのが「インフレ税」なのだ。

インフレになると、借金が軽くなるのみならず、税収そのものも増加する。税金徴収の基準となるのは「価格」や「利益」などであり、インフレによって物価が上がれば自動的に税収が増加する。また、インフレが進むと、給与の上昇圧力も強まり、これが所得税の増加ももたらすことになる。

インフレ税は、他の税金とは異なり、誰一人として逃れることができない。また、所得が増えるにつれて税率も上昇する「累進課税」も適用されないため、低所得者層の税負担がより重くなる「逆進性」を持つことになる。ところが、インフレ税は国民に税を取られているという意識を与えない「見えない税金」であることから、こうした問題が表面化することもない。

インフレ税が「徴収」されていたのがバブル経済だった。バブルは不動産や株式などの価格が急上昇する「資産インフレ」であり、その恩恵を受けて1988年からの5年間、政府の財政収支は黒字となった。これに伴って、赤字国債の発行も減少、90年度からの3年間はゼロとなる。国民は誰一人として税金が増えたとは感じていなかったが、実際には急騰したマンション価格や、巨額のもうけを手にした不動産業者の利益などにインフレ税が課せられ、政府の税収が増えていたのである。

政府にとって、都合のよいインフレ税だが、中央銀行の金融政策だけでインフレを起こすことは容易ではない。また、インフレを起こすことに成功した場合、今度は歯止めがかからなくなってハイパーインフレに突入、経済が崩壊する危険性もはらんでいる。

年間2%のインフレ目標を掲げている日本銀行。その名目は、デフレ脱却と経済再生だが、インフレ税によって財政赤字を減らそうという意図も見え隠れしている。消費税を超える効果を持つインフレ税は、税収不足に悩む政府がひそかに使おうとしている「魔法」なのである。

<明日に続く>