政府、財務省、日本銀行が異次元金融緩和以前から狙っていたのは、インフレ税です。インフレ税については、このブログを始めた時からテーマとして取り上げてきましたが、その危険が近づいてきたので、最近の記事を読んで見たいと思います。
読売新聞オンライン2023/02/06の記事を見てみましょう。
インフレ税は願い下げだ
世界的にインフレが広がるにつれて、「インフレ税」という言葉を見聞きすることが増えた。日本でも食品や電気料金などの値上げが続く。同じモノやサービスに以前より多くのお金を払いながら、まるで消費税が増税されたみたいだ、と感じる人もいるだろう。ただし、インフレ税はそういう意味では使われない。なぜインフレが税金のように見なされるのか、順を追って説明しよう。
すさまじいインフレで物価が100倍に跳ね上がったとしたら、10万円で買えたテレビや冷蔵庫の価格は1000万円になる。
一方、1000万円の住宅ローンを借りている人の場合は、インフレ後に1000万円を返済すると、実質的にはかつての10万円程度、つまりテレビや冷蔵庫を買う程度の負担で済むことになる。インフレでローンの99%が事実上チャラになるわけだ。
これを国家財政に当てはめると、インフレが税と呼ばれる理由が見えてくる。国の借金である国債の発行残高はおよそ1000兆円に上る。国内総生産(GDP)の約2倍と巨額で、返済は容易ではない。そこに突然、ハイパー・インフレーション(超インフレ)が起きて物価が100倍になると、政府の負債は実質的に10兆円に激減する。政府が大増税して返済したのと同じように、債務の大半が消える。
もちろん、国債の保有者は資産価値の99%を失い、大損害をこうむる。国債は投資信託や生命保険、年金基金などの運用対象に組み込まれている。これらの資産の最終的な所有者である国民が損をするわけだ。つまり、インフレは国民から資産を奪い、政府の借金を軽くする役割を果たす。実質的に民間から政府に「所得移転」させることから、課税になぞらえてインフレ税と呼ばれるわけだ。
たった2%のインフレ目標さえ長年達成できなかった日本で100倍(9900%)のインフレを想定するのは荒唐無稽だと感じるかもしれない。だが、日本の物価は日中戦争前から大戦後にかけて100倍を大きく超えて上昇したという前例もある。
昭和20年(1945年)、悲惨な戦争は終わったが、国民の苦難は続いた。戦時中、政府が発行した国債を日本銀行が大量の紙幣を刷って引き受け、市中にあふれたマネーが激しいインフレを起こしたからだ。東京の物価指数は昭和10年前後に比べて昭和22年が110倍、23年は190倍、24年は240倍に達した。戦時国債は紙くずと化し、巨額な戦費の負債は大半がインフレ税によって「返済」された。
戦費を巡る日本の財政・金融政策を分析した「日本 戦争経済史」(小野圭司著、日本経済新聞出版)にこんな一節がある。
「課税はもとより通貨発行もインフレという形で国民各層に広く戦費の負担を求めるものである」
インフレも税金のように戦費を国民に負担させる手段として使われた。歴史の教訓はこうだ。放漫財政によって通貨の信認が失墜すれば、激しいインフレが起きる。政府の借金は事実上、棒引きになり、国民は塗炭の苦しみを味わうことになる。
コロナ禍以降、我が国の財政支出は急速に膨らんだ。政府の総合経済対策は、ガソリンや電気代の上昇分を補助金などで穴埋めするインフレ対策が柱の一つである。この経済対策を審議した衆院予算委員会の質疑を読み返した。インフレ対策の強化を求める声が相次ぐ一方で、国債を大量増発してインフレの痛みを将来世代にツケ回す政策の是非を、正面から論じる場面は見つからなかった。
インフレ対策の大盤振る舞いで財政危機が高じて超インフレを招き、財政規律を軽んじた政府は大助かり。ツケのインフレ税は国民が払う羽目に……。そんな悲惨な結末は、願い下げにしたい。
nikkei4946の2022.8.21の記事です。
インフレ税 お金の価値低下、債務「圧縮」
物価上昇(インフレーション)でお金の価値が下がることで政府の借金の返済負担が実質的に軽くなること。債務の額をインフレ率を上乗せした値で割り、減った分がインフレ税にあたる。例えば100億円の債務があって10%のインフレが起きた場合、実質債務は約90.9億円、差分の9億円強がインフレ税となる。中央銀行を広く「政府」に含める場合、中銀が発行する貨幣などを計算に入れることもある。
インフレ税は政府にメリットがあるが、政府債務はもともと国債発行などを通じて民間から調達したもの。貸し手である家計など民間部門からみればマイナスになる。購買力が民間から政府に移転する形になるため「税」の文字が付く。インフレ率が高いほどインフレ税も増え、過度なインフレは経済活動を萎縮させる。インフレが実質国内総生産(GDP)を下押しする作用が強すぎると財政改善は長続きしない。
国際通貨基金(IMF)によると、2020年の主要先進国の政府債務の名目GDP比は127%と19年から約19ポイント高まり、第2次世界大戦後のピーク(1946年)の126%を上回った。大戦後はインフレ税だけでなく復興需要による高い実質成長もあり、先進国債務はピーク時から10年間で半分以下になった。現在は「主要国の人口の伸びが鈍化しており、成長による財政再建のハードルは上がっている」(東京海上アセットマネジメントの平山賢一氏)との指摘が多い。
外国株式インデックスファンドよりも、外国株式ETFの方がより安全かも・・・
最後に、私たちのできるインフレ税対策を述べると、「アメリカに移住して、アメリカに口座を作って、アメリカの株式ETFを保有する」ことです。パックンや厚切りジェイソンなら可能ですし、実際にやっているそうですが、残念ながら、それができない人がほとんどでしょう。日本にいる限り、完全な対策はできませんが、日本国籍の外国株式インデックスファンドよりも、アメリカ国籍の外国株式ETFの方がより安全かもしれません。