確定拠出年金の運用

最近は新NISAの話題が圧倒的に多いのですが、特に若い人の場合には、まず確定拠出年金を十分に活用すべきです。

確定拠出年金には、主に次の3種類があります。

  1. 掛け金額が固定された企業型確定拠出年金
  2. 掛け金額を変動できる企業型確定拠出年金
  3. 個人型確定拠出年金(iDeCo)

1.掛け金額が固定された企業型確定拠出年金

勤めている会社が、役職・給与等に応じて掛け金を負担し、運用は社員が行うタイプです。私は、2002年から運用を始め、全額を外国株式インデックスファンド(現在は野村DC外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI)で運用した結果、元本約600万円が、現在2600万円に増えました。この円グラフは、私のポートフォリオです。

2.掛け金額を変動できる企業型確定拠出年金

選択制企業型DCとも言われます。従業員が給与の一部を企業型DCの掛金として拠出するか、給与として受け取るか、選択できる企業型DCのこと。会社によっては、給与ではなく賞与や退職金原資などを、拠出の対象とすることもあります。

私の子供には、上限額の毎月55,000円(毎年66万円)を掛け、外国株式インデックスファンドで運用するように勧めました。60歳まで掛け続け、その後は掛けないで65歳までそのまま運用すると、1億円を超え、 119,615,461円になります。

年齢 60歳まで毎年66万円を年平均リターン率8%で運用
30 660,000
31 1,372,800
32 2,142,624
33 2,974,034
34 3,871,957
35 4,841,713
36 5,889,050
37 7,020,174
38 8,241,788
39 9,561,131
40 10,986,022
41 12,524,903
42 14,186,896
43 15,981,847
44 17,920,395
45 20,014,027
46 22,275,149
47 24,717,161
48 27,354,534
49 30,202,896
50 33,279,128
51 36,601,458
52 40,189,575
53 44,064,741
54 48,249,920
55 52,769,914
56 57,651,507
57 62,923,628
58 68,617,518
59 74,766,919
60 81,408,273
61 87,920,935
62 94,954,609
63 102,550,978
64 110,755,057
65 119,615,461

3.個人型確定拠出年金(iDeCo)

個人型確定拠出年金 iDeCo(イデコ)では、自分で拠出した掛金を原則65歳まで積み立てすることができます。また、受取は原則60歳以降に可能です

2022年10月1日から、企業型確定拠出年金(企業型DC)加入者のiDeCo加入の要件緩和され、企業型年金規約の定めによりiDeCoに加入できなかった企業型DC加入者の方も加入できるようになりました。

私のもう一人の子供も、約1年前に上限額の1万2千円でイデコを始めました。運用商品は、やはり、外国株式インデックスファンドです。

確定拠出年金は、外国株式インデックスファンドに100%投資

私が、2002年に確定拠出年金の運用を始めた時に、私は100%外国株式インデックスファンドでしたが、他の人達の90%は元本確保型の銀行預金でした。22年間で私の評価額は2600万円に増えましたが、銀行預金の人は600万円のままです。

確定拠出年金の運用、株式投信初の5割 預金偏重に転機

最近、このような記事が日経に掲載されました。

「加入者が自ら運用商品を選ぶ企業型の確定拠出年金(DC)で株式を含む投資信託の割合が初めて50%を超えた。根強い元本確保志向を背景に運用資金の受け皿となってきた預貯金は物価高で目減りリスクにさらされている。物価は上がらないという前提が変わり、約2000兆円の家計の金融資産が投資に向かっている。」

資産配分

2023年に企業年金連合会から発表された結果は以下の通りです。右の掛け金ベースでは、まだ42.6%でした。投資信託が若い人を中心に浸透してきたようです。

制度導入からの平均運用利回り

制導入から2021年までの運用利回り(年率)の平均は、3.8%(前回4.3%)。私の場合は、7.0%超ですから上位7.1%に入っています。

 NRIの報告でも投資信託が増えているそうです。


データで見る確定拠出年金の現状~積極化に向かう確定拠出年金の資産運用~

DC運用における保守性は改善に向かう(1)-投信で運用する人が増加-

確定拠出年金における資産運用は過度に保守的だとかねてより指摘されてきた。具体的には、預貯金や保険などの元本確保型のみで運用している者の割合が多いことや、運用資産残高に占める元本確保型商品の残高が大半を占め、投信の残高割合が低すぎる点などが、問題視されてきた。もっとも、最近ではこの問題は改善に向かっている。

図表2左図は企業型DCにおける元本確保型のみで運用している者の割合の推移を示しているが、統計が公表された2020年3月以降年々その割合が低下し、2023年3月には26.7%へと4年間で7.2%低下している。また図表2右図は元本確保型のみで運用している者と投信でも運用している者のそれぞれの人数の推移を示しているが、これをみると、元本確保型のみで運用している者は3年間で30万人減少し、投信でも運用している者が120万人増加し610万人を超えていることが分かる(注1)。

図表2 企業型DCにおける運用状況

DC運用における保守性は改善に向かう(2)-純資金流入額の9割が投信へ向かう-

また、運用残高ベースでみても元本確保型商品の割合が低下し、投信比率が高まっている。図表3左図は運用資産残高の推移を示しているが、これをみると投信比率はDC全体で2018年3月の47.1%から2023年3月の60.7%に、5年で13.6%増加している。資金流入額で見ると、一層顕著だ。元本確保型への資金流入額は数年前より減少し、投信への資金流入額は大幅に増加している。この結果、DC制度への資金流入額に占める投信への流入額の割合は、2018年3月期の51%から2022年3月期には90%にまで上昇している。この資金流入の中には、掛金による流入以外に、過去に購入してきた運用商品のスイッチング(買い換え)による資金移動も含む(注2)ため、スイッチングを行った一部の人の動向を強く反映している可能性はある。いずれにせよ、運用資産運用残高ベースでみた投信比率の上昇は、投信の投資対象資産の価格上昇ばかりでなく、加入者等の運用姿勢が総体として積極化していることも寄与していることは確かだろう。

図表3 DCの運用商品選択状況

若年層を中心に投信比率が高まる

DC資産における運用の保守性の解消は、特に若い世代で顕著である。年齢階層別の平均資産配分(図表4)をみると分かるように、かつて(例えば、2017年3月期)は、20代は30~40代に比べ長期間の運用が可能であるにも関わらず、運用が保守的になっていると指摘されていた。それが、企業型、iDeCo共に変化している。投信比率でみると、企業型の場合、2017年3月期の段階では20代は30~40代に比べ10%近く低かったが、2023年3月には、その差は数パーセントに縮小している。iDeCoの場合は、より変化が明瞭で、最近では20代の投信比率は82%まで上昇し、30~40代より高くなっている。

なお、DC資産における運用の保守性の解消は、30代以降の年代でも生じている。2017年3月から2023年3月までの6年間で30代以降のどの年齢階層でも投信比率は、企業型で10%ポイント、iDeCoで20%ポイント程度もしくはそれ以上上昇している。この間のDC向け投信の平均パフォーマンスは+40%程度であるため、誰もスイッチングも掛金の配分変更をしないと仮定すると、投信比率は企業型では5%ポイント程度、iDeCoでは12~14%ポイントしか上昇しない。これを上回る投信比率の上昇は、各年齢階層でスイッチングや掛金の配分変更を行うことによって投信比率が上がったことを意味している。

確定拠出年金における運用は、20~30代を中心に、平均的には積極化してきている。しかしながら、加入者の4人に1人は未だに元本確保型のみで運用を行っている。彼らが、他に保有する資産とのバランスを考えた上で、元本確保型を選択している場合であれば問題はないが、無関心や判断の先送りなどの結果として選択されている場合も多いと言われている。言うまでもなく、確定拠出年金では、自身の選択する資産配分が将来の給付水準に影響を及ぼす。筆者が受給期を迎えた確定拠出年金経験者に行ったアンケート調査では、制度に対する満足度と運用収益率には相関があった(注3)。加入者が受給期を迎えた時に後悔しなくて済むように各々が資産配分を行うべであり、それを支援して行くことが制度運営側の使命であろう。

図表4  確定拠出年金(DC)の投信比率(利用者の年代別)

(注1)ちなみに、日本証券業協会の調査(「2021年度証券投資に関する全国調査」では投信保有率は10.8%)を基にすると日本の投信保有者数は1,160万人なので、企業型DCで投信を保有しているだけで半数を占めていることになる。確定拠出年金は投信の保有経験提供する機会を提供していると言える。
(注2)このほか、他制度からの資産受換による資金流入もある。
(注3)金融審議会「資産運用に関するタスクフォース(第3回)事務局説明資料(資産運用業のガバナンスの向上等)」p23