私は、個別株式投資をしませんし、それを勧めることはありません。しかし、どうしてもやりたい人もいるでしょうから、それについて述べます。
個別株式投資
個別株式投資は、自分なりのルールを決めて株式に投資すれば、投資信託や株式ETFの信託報酬等のコストがかからないので、良い投資方法である可能性があります。私が考えるルールは以下の通りです。
- 趣味の範囲の金額にする
- 銘柄を最低10(できれば20)以上に分散させる
- 各銘柄は業種を分散させる
- 株主優待を選択基準にしない。もしするなら、それも趣味と割り切って、余計にお金を払う必要があると割り切る
- 買ったら、できるだけ売らずに長期間そのまま放っておく
第1ルール:個別株式投資は趣味の範囲の金額にする
最低でも個別株式投資だけで2,000万円が必要
人によって趣味に使う金額は違うでしょうが、私がいま個別銘柄に投資するとすれば2,000万円という数字が考えられます。2,000万円はかなり大きな金額ですから、趣味で使える範囲の金額ではないと思われるかも知れません。しかし、この2,000万円は、消えてなくなってしまうものではなく、平均的には、1年後に2,100万円に増え、2年後には2,200万円に増える可能性のあるお金です。この増え方は長期にわたっての平均ですから、ある年は1,500万円に減り、その翌年には2,500万円に増えるかも知れません。この上下変動を趣味の範囲だと思える人は精神的余裕をもって、個別投資をできる可能性のある人です。
100万円なら1社、200万円なら2社しか買えない
それでは、なぜ投資金額が100万円や200万円でなく2000万円必要なのかというと、個別株式は1銘柄ずつではリスクが大きいので、銘柄と業種を分散させる必要があるからです。現在日本で時価総額の大きい会社は、1位トヨタ自動車(株)、2位三菱UFJ銀行(株)、3位 (株)キーエンス で、その株式を買おうとすると、それぞれ最低でも 300,000円、160,000円、6,800,000円必要です。これでは、十分な分散投資ができず、ギャンブルをするようなものです。
第2ルール:銘柄を最低10銘柄(できれば20銘柄)以上に分散させる
ETFなら分散しているので安心
私が現在行っている資産運用方法は、ほとんどが株式ETFです。ETFとはExchange Traded Fund の略で、日本語では「上場投資信託」といいます。日本の株式ETFは野村証券の1306(TOPIX連動型上場投資信託)、外国の株式ETFはSPY(アメリカSPDRのS&P500)などです。1306は約2000社に、SPYは500社に時価総額の加重平均で分散投資しています。
個別株式なら10銘柄から20銘柄に分散
ETFは非常に多くの会社に分散投資しているので安心ですが、個別株式で数百社に分散投資することは100億円以上の投資資金がないと難しいでしょう。感覚的には10銘柄から20銘柄ぐらいは欲しいところです。しかし、これでも銘柄数が少なくて、ギャンブル的要素があることは否めません。したがって、第1ルールの「趣味の範囲の金額にする」ことが必要になってきます。これこそ、趣味と実益を兼ねる方法だろうと思います。
したがって投資総額が1億円有れば、8千万円で株式ETFを保有し、残りの2千万円で個別株式を買うことが考えられます。なお、私は、個別株式を持たずに、株式ETFだけで金融資産を3.5倍に増やしたので、これ以上欲張って個別株式を買いたいとは思いません。
第3ルール:各銘柄は業種を分散させる
業種ごとの変動の違いを利用
銘柄を分散させたとしても、それがすべて同じ業種に投資していてはリスク分散を図ることはできません。比較的関連性のある業種は、株価も同じような動きを示すことが多いのです。
1業種1銘柄に絞る
昨年ウォーレン・バフェットが日本の商社5社に投資しましたが、バフェットの投資会社バークシャー・ハサウェイは、手元資金だけで14兆円ある会社ですから一分野で5社に投資できるのです。数千万円、数億円しか投資できない個人投資家は1業種1社などに限定したほうがリスク分散をすることができます。
業種自体も絞る
日経業種分類によると、業種は、以下の通り36業種あります。全業種から1社ずつ買うと36銘柄になります。1銘柄平均100万円とすると3600万円が必要です。現実には、キーエンス、(株)ファーストリテイリング 、東京エレクトロン(株)など、300万円を超える銘柄もありますから、もっと多額の資金が必要です。業種数を絞ったりするなどの工夫が必要かもしれません。
個別株式は勉強が必要
インデックスファンドやETFは非常にたくさんの銘柄に分散投資しているので、ある程度ほったらかしにしても、あるいは知識があまりなくても問題ありませんが、個別株式は会社の動向を把握したり、売却のタイミングも考えなければなりません。それに必要な情報を新聞やテレビで勉強することも必要です。そういったことが好きなら、趣味の範囲内で個別株式を持つのも楽しいかもしれませんが、私のようなずぼらな人間は、個別株式の動向に興味がありませんから、趣味ではなく、苦痛でしかありません。
個別株式は難しい
以上、個別株式について述べましたが、私は個別株式を勧めているわけではありません。趣味の一つとして楽しめるなら、少しだけ個別株式を持つことも良いでしょうが、そうでない人は株式ETFやインデックスファンドがお勧めです。
第4ルール:株主優待を選択基準にしない。もしするなら、それも趣味と割り切って、余計にお金を払う必要があると割り切る
安定株主獲得
株主優待制度を実施する企業の狙いは、安定株主の確立です。また、最近では、株式に関する雑誌が頻繁に記事として取り上げるので、企業イメージの向上効果もありそうです。
株主優待には多額の経費
しかし、株主優待制度の運営には、送料など各種経費に加え、それに伴う人件費も含め、多額の経費が掛かります。株主優待制度を実施ているのは、世界的には日本だけで、諸外国ではほとんどされていないようです。
株主優待をする会社は配当が少ない?
私としては、株主優待制度に使うコストを配当金に上乗せしてくれた方がありがたいと思っています。そのコストは公表されていませんから、実態はよく分かりませんが、配当金の平均利回りが2%程度だとすると、0.1%、あるいはそれ以下かも知れません。私のように株式ETFしか保有していない人は、株主優待の恩恵にあずかっていないので、大変不満に思っています。一方、株主優待を選択基準にする場合には、趣味の一つだと割り切る必要がありますが、趣味をするにはお金がかかりますから、その分、配当金が減ると考えるのが妥当でしょう。
業種が絞られる
株主優待のもう一つの問題点は、食品、レストラン、小売業など業種がとても狭いことです。これでは十分な業種分散ができず、投資資金がリスクにさらされることになります。
株主優待は本当に得か?
株主優待で、あまり欲しくもない商品をもらったり、デパートの割引を使うために無理して買い物をするのが、自分にとって賢い投資方法なのかをよく考えた方が良いでしょう。
第5ルール:買ったら、売らずにそのまま放っておく
買いっぱなしが最も好成績
フィデリティ証券の調査では、株式投資で最も成績の良かった人の特徴は、自分証券口座を作ったことを忘れてしまった人だそうです。つまり、買った後、そのままほったらかしにしてしまった人です。株式の世界には、利益確定とか損切という言葉がありますが、それはプロの世界の人にとっては必要な方法かもしれませんが、1年、2年で資産を増やすのではなく10年、20年を見据えて長期投資をする人にとっては、「バイ・アンド・ホールド」、つまり「買いっぱなし」が最も良い方法のようです。
少銘柄保有の場合の倒産は悲惨
フィデリティ証券の調査で気を付けなければいけないことがあります。それは、たくさんの「買いっぱなし」の人の平均は好成績であっても、その中には1銘柄しかもっていなかった人も含まれているということです。そして、1銘柄しかもっていないのに、その会社が倒産したら、それを持っている個人投資家は不幸です。一方で、どんどん株価が上昇する会社もありますから、100人、1000人と多数の平均株価は上昇します。1銘柄しか持たない場合のリスクを避けるには、ある程度多くの銘柄に投資して、リスクを分散させる必要があります。
ETFやインデックスファンドの買いっ放しがベスト
つまり、ETFやインデックスファンドを買ったら、その後、5年、10年、20年の間、売らずにそのまま放っておくことが、個人投資家にとって最も良いということになります。
個別株式は時間・精力を消耗する可能性
個別株式を始めたけれど、結局株式投資をやめてしまった人、あるいはETFやインデックスファンドに鞍替えした人の話を聞くことがあります。その人たちは、頻繁に株式を売り買いして、時間と精力を無駄に注いだためにつかれてしまったそうです。
私は、過去において投資した商品を売ったことは、基本的に2種類しかありません。
個別銘柄売却の理由
一つ目は、従業員持ち株会で積み立てた株式を全額売却して、1306(TOPIX連動型上場投資信託(ETF))を購入したこと、二つ目は、その1306の一部を売却して生活費に補充したことです。
従業員持ち株会株式をETFに転換
その結果、従業員持ち株会の株式1000万円は1306という形に姿を変えて現在7000万円に増え、退職金等はSPY(アメリカSPDRのS&P500のETF)などの外国株式ETFになり、評価額が増加しています。