私の運用実績 2024年6月:評価益は新宿区西新宿の90㎡新築マンション相当

最近1年間の運用資産総額の上昇は、あまりにすさまじい状況です。金額的には1億円近く増加しています。まるで1980年代後半のバブル期のようです。

2014年からの異次元金融緩和政策、度重なる財政出動、ロシアによるウクライナ侵攻、新型コロナウイルスによって、円安(人によっては円弱と呼ばれる)とインフレが進んでいます。

私は2010年代初めに、このような円安、インフレを警戒して円を外貨に変換し、リターンの高い外国株式を保有しているので、困った状況には陥っていませんが、今まで何の手も打たなかった人はどうなるのでしょうか。

私の子供たちは、社会人になってからそれほど時間が経っていませんから、最近蓄え始めたところです。しかも、住宅も持っていませんから、住宅価格が高騰している状況で、家を変えることができるのか不明です。

そういう私も、1980年のバブルの頃には、都内に住宅は変えないな~と諦め気分でいたのです。その後バブルが崩壊し、2000年代になってやっとマイホームを手に入れました。なかなか、思い通りにはいかないものです。

 

 


円高時代の終焉、円を弱くした3つの現象と6つの出来事=佐々木融氏

輸入企業経営者は、円安による輸入コストの上昇に苦しみつつも、「いつか以前のように円が急激に上昇してくれるのではないか」との期待を持っている人が少なからずいる。

その気持ちはよく分かる。昔は国内外で何か予想外のことが発生すると、円が急激に上昇することが多かった。1990年代前半は、円売り介入が継続的に行われても円高は続いた。98年には3日間でドル/円相場が20円以上も円高となったこともあった。2008年のリーマンショックの前後では、約4年間かけてドル/円相場は50円程度下落した。その記憶は強烈で、今後もそうしたことが起こるのではないかと期待する気持ちはわかる。

<これからは「有事の円安」のリスク>

もちろん、そうした急激な円高は今後一切起こらないと完全には否定はできないが、筆者は既に円高の時代は終わり、円安の時代が始まっていると考えている。だから、有事があると円高ではなく、円安の方に大きく動くリスクが高まっていると考える。

「円高時代」が終わり、「円安時代」に変わった節目は2012年末と言えるだろう。円は1980年代後半─2000年代の4半世紀の間とは異なる3つの現象により構造的に弱い通貨となっている。そして、これらの現象の背景には過去10─15年間に日本と世界で同時進行で起きた6つの出来事やトレンドがあると考えられる。

円を構造的に弱い通貨としている3つの現象は、日本の国際収支悪化、縮小できない日本と他国の名目金利差、脱出できない日本の実質マイナス金利だ。

そして、その背景にある6つの出来事・トレンドとは、1)東日本大震災、2)保護主義の台頭、3)脱炭素化・環境規制、4)第2次安倍政権が打ち出した「アベノミクス」下の異次元の金融緩和、5)世界経済のディスインフレからインフレへのシフト、6)新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)──だ。

円を構造的に弱い通貨としている現象の1つ目である、日本の国際収支の悪化は、11年3月11日に発生した東日本大震災が重要な一因となっていると考えられる。エネルギーの貿易赤字拡大は、震災で原発が停止したことも影響している。また、地震の影響でサプライチェーンの見直しもあったためか、13年以降対外直接投資が急増した。日本企業による対外直接投資自体も円売りを伴うため、円安の原因となる上、海外への生産移管が進んだ結果、円安になっても輸出が増えず、輸入が増えたので貿易収支が急速に悪化した。

そして、この間欧米では保護主義が台頭し、17年にトランプ米大統領が誕生、20年には英国が欧州連合(EU)を離脱した。同時に脱炭素化・環境規制の動きも強まっていったので、日本企業は生産拠点を日本に戻し辛くなっているという側面もある。

<戻ってこない海外への投資>

日本は12年以降の急速な円安の動きを手放しで喜んだ。円安を背景に日本の株価も上昇したので、日本経済を取り巻く問題は解決し、いよいよ日本経済が復活するとの期待が高まった。ただ、円が売られた要因の一つは、日本企業による海外への積極的な投資であり、その結果として円安になっても輸出は増えず、逆に輸入が増えることによって日本は貿易赤字になりやすい経済構造となってしまったのだ。

海外への投資が多いため、第一次所得収支の黒字のみが日本の経常収支の黒字を支えているが、その多くは日本に戻ってきておらず、海外で再投資されている可能性が高い。海外投資から得るリターンが日本に戻って来ないから、第一次所得収支の黒字は更に増える。しかし、これによる日本の経常黒字は日本経済のプラスにはなっていない。

日本で生産が行われなければ、日本の設備は老朽化し、生産性は上がらない。設備の更新は海外で行われ、海外の生産性を引き上げる。そこで働く人の知識・経験・技能は海外で蓄積される。利益の一部から払われる給与も海外で支払われる。経常黒字の影で日本経済は弱体化していく。

円を構造的に弱い通貨にしている現象のうち、2つ目の縮小できない日本と他国の名目金利差と、3つ目の脱出できない日本の実質マイナス金利の背景には、12年12月からの第2次安倍政権下の極端な金融緩和政策が大きく影響している。

超低金利政策と円安に頼る状況が続く中、本来アベノミクスの「3本の矢」のうち3本目とされていた構造改革は進まなかった。産業や企業の新陳代謝も進まず、生産性も向上しなかった。そうした中、日本銀行は必要以上に国債を購入しバランスシートを拡大させ、日銀が国債を購入してくれるが故に政府は債務残高を急速に膨らまし続けた。

<一気にインフレ時代に突入>

一方、世界ではディスインフレ時代からインフレ時代への移行が進んでいた。先進国ではベビーブーマーが引退する時代に入り、新興国では中国や東欧の労働力も安くはなくなったことで、労働者が豊富だった時代から不足する時代に入り始めた。そうした中で、前述の保護主義や環境規制が強まり、コストが安ければ良いという価値観が大きく変化し始めた。

また、20年頃からの新型コロナウイルスの感染拡大によるパンデミックで、各国中央銀行が量的緩和を行っている中で巨額の財政支出が行われた結果、世界規模で財政ファイナンスが行われ、インフレ圧力を高めた。そうした中、22年2月にはロシアがウクライナに侵攻し、エネルギー・コモディティー価格が高騰したことも重要なインフレ要因となった。

世界がインフレ時代に突入したことにより、世界の主要中央銀行は政策金利を引き上げたが、日本は経済も弱体化し、日本銀行のバランスシートも膨らみ、政府債務も膨大になっているので金利を大きく引き上げることができない。世界のインフレの波は当然日本にも影響するので日本の実質金利は大幅マイナスとなる。このまま世界のインフレ圧力が一定程度残る状況となったら、日本と他国の名目金利差は縮小せず、日本は実質マイナスの金利から抜け出ることができない。

円という通貨を取り巻く環境は大きく変わった。時代は「円高時代」から「円安時代」に既に移行してしまっているのだ。