ドル円の適正水準は?ただし、経済の専門家やマスコミは本当のことを言わない

以前、ある年の12月に来年の為替、株式相場の予想を調べて、1年後に確認したことがありますが、全員が外れていました。

また、為替取引の著名専門家は、今まで51勝49敗だったと言っていました。これが事実だと思います。

証券会社の人は、来年の予想を高く言う傾向がありますが、それは「来年下がります」というと顧客が株を買ってくれないからです。しかし、全員が高めの予想をすると、自分の存在価値がないと考える人は、あえて「株価は下がる」という人もいるかもしれません。

発言する人は、心から信じていることだけでなく、自分の将来にとって都合の良いことを選びます。

NISAは、個人投資家にとってとても良い制度ですが、やめたほうが良いという経済評論家がいます。そう言うことで、自分の発言機会が増えて、収入が増えると考える人がいても不思議ではありません。

アベノミクスについても、お金をどんどんばらまいて、インフレなのに利上げができない状況に陥ってしまいましたが、数年前まで、どんどんお金を刷ればよいと言っていた自称経済評論家がいました。

マスコミについても、自分の都合がかなりウェイトを占めています。

NHKは、政権の悪口をほとんど言いません。

民放については、広告主の悪口をあまり言いません。最近、朝鮮ニンジンの広告がメチャクチャ多いので調べたところ、ある政党の選挙応援で有名になった宗教団体関連でした。

ドル円相場について、ミスター円・榊原英資さんが語っていますが、自分の後輩である財務官、出身母体の財務省について、あまり露骨なことは言えないということに留意しながら読む必要があります。

2024年9月5日の日経の記事を読んで見ましょう。


ミスター円・榊原英資さん「2025年は1ドル=130円も」

相次ぐ円買い介入や、相場の急変動に揺れる為替市場を、1990年代の為替介入を指揮した「ミスター円」の異名を持つ元財務官・榊原英資さんはどう見ているのか。元財務官僚で、大蔵省時代に榊原さんの部下だった時代がある、関西学院大学教授の村尾信尚さんが聞いた。

――今年のドル・円相場は、年始から急激に円安に振れて1ドル=160円前後で推移した後、一気に同140円台まで反転しました。為替相場についてどうご覧になっていますか。

僕はいずれもう少し円高、1ドル=130円くらいになると思っているんですけどね。それほど遠くない、2025年頃にでもあり得ます。米国と日本それぞれの経済動向にもよりますが、米国経済がやや弱くなっていくと見ています。

160円台まで円安が進んだのは、日本経済を長期的に悲観した「日本売り」ではなく、日米の経済の相対的なポジション、金利差の拡大という理由があります。ならばここからは米国経済が弱くなりますから、金利差も縮まって、方向は円高でしょう。

――130円ですか。ちなみに今の日本経済を榊原さんが俯瞰(ふかん)して、理想のドル・円相場の水準はどの程度だと思われますか?

レンジとしては100円から150円の間でしょう。130円はその中間くらいで、ちょうどいい水準だと思います。

――となると、一時の160円水準は、円安過ぎる?

そう思います。170円、180円とさらに進めば危機的状況でしょうが、そうなる状況ではない。

――一方で、円高になる方が日本経済には良くないという意見もあるようですが。

昔は円安になれば輸出が伸びる構造があったんですが、今は日本企業の拠点の国際化がどんどん進みましたから、輸出企業が円高で打撃を受けるような状況ではそれほどなくなっている。日本経済にとって、円安が進むほどいい時代は終わったと思います。今は特に、輸入コスト高で国内のインフレが進む状況ですから、もっと円高の方がプラスでしょう。100円を下回る水準だと話は変わりますが、僕は1990年代からずっと、円高の方がプラスだと言っています。

――先ほど、円安が日本売りではなかったとおっしゃいました。ただ私が榊原さんの元で働いていた80年代と比べて、長い年月の間に日本経済はどんどん弱くなって、人口もどんどん減り、財政赤字も巨額で、国内総生産(GDP)ではドイツに抜かれるといった状況です。長期的に円高が進む要因はあまり見いだし難いと思ってしまうのですが。

私はあなたほど日本経済に悲観的じゃないんですよ。長期的にもある程度の強さを維持できると思っています。労働力が不足するなら、外国人をどんどん入れていけばいいし、実際にそういう動きになっています。地域社会とのあつれきをできるだけ小さくするような配慮が必要ですけどね。

為替介入は昔より難しい
――今年4月から5月にかけて、そして7月にも行われたドル売り・円買い介入についてどう見られましたか。

僕は97年から99年まで財務官をやって、その間にドル売り・円買い介入もやりましたが、介入というのはサプライズでやると効くというのがやはり鉄則ですよね。予想されていない時期に、一気に大量にやるのが大切で、僕は自分の時はそれを心がけていました。自分で言うのはおかしいけれど、それでそこそこうまくいったんじゃないかとは思っています。

ただ、「大量に」という点について言えば、僕の頃と比べても為替市場の規模がはるかに大きくなってしまっています。そうすると、効果を出すにはより大量の資金を投入しないといけない。

かといって、撃てる弾が無限にあるわけではないですから。円買い介入には外貨準備の範囲内でしかできないという制約があります。自分がやった時には、「外貨準備の10分の1くらい使ってしまったら、もうその後はできないな」という感覚がありました。制約がある分、円売り介入と比べても円買い介入は難しいです。円買い介入で大きな効果を出すのは、特に今の時代は簡単ではないと思います。

――実際、最近の円高は日銀の利上げや米国の利下げ観測が強まったことを受けて進んだものであり、4〜5月の介入では円安の流れは変わりませんでした。皆が「やるんじゃないか」と予想している思惑の中でやったから、効果が低かったということでしょうか。

円安進行のスピードを止めるという一定の効果はありましたが、サプライズでやった時とは違いますよね。理想的な介入とは言えなかった。昔より難しくなっていると思います。

為替介入の舞台裏
――榊原さんが介入をやった時は、やはりご自身がイニシアチブを取ったんでしょうか。

正式には大蔵大臣(現・財務大臣)の管轄ですが、やはり大臣自身は実務のディテールをあまり知らない可能性がありますから、実質的には財務官か国際局長が委任を受けて判断します。その上で日銀と連絡を取って、実際に注文を出すのは日銀になります。

――米国とも事前に調整を?

ドル・円で介入する場合はもちろん調整しますね。米国が反対しなければできるという具合です。大賛成でなくても、強硬に反対されなければ。

――米国に反対されることは実際にあったんでしょうか。

僕の記憶では反対されてやめたことはないですね。こちらも、向こうが困るようなタイミングではやっていませんから。その点はあうんの呼吸でもありますし、ある程度は事前に米国と連絡を取っているからということですね。

――ユーロや人民元など、他の通貨も意識するんでしょうか。

意識はしますが、僕の時はそれほど判断に影響することはなかったですね。あくまで米国との間で、綿密に連絡を取ることです。