長期金利上昇の影響

長期金利が上昇しています。


長期金利急ピッチに上昇 10年もの国債利回り一時1.4%台半ばに

日銀の利上げ観測を背景にこのところ長期金利が急ピッチに上昇しています。日本の長期金利の代表的な指標となっている10年ものの国債の利回りは21日も一時、1.4%台の半ばまで上昇し、2009年以来の高い水準となりました。

長期金利は、日本国債が売られて価格が下がると、上昇するという関係にあります。

21日の債券市場では、午前中、国債を売る動きが強まり、長期金利の代表的な指標となっている10年ものの国債の利回りは、一時、1.455%まで上昇しました。

これは2009年11月以来の高い水準です。

長期金利は年初は1.1%台でしたが、1月10日に1.2%台、2月7日に1.3%台、2月18日には1.4%台と最近は急ピッチに上昇しています。

また、取り引き量が多く、日銀の政策金利に関する金融市場の見通しを反映すると言われる2年ものの国債の利回りも、年初は0.6%台だったのが、2月12日以降は0.8%台となる場面が多くなっています。

いずれも背景には、物価が上昇する中で先月追加の利上げに踏み切ったばかりの日銀が早い時期にさらなる利上げに踏み切るのではないかという見方が広がっているためです。

こうした中、日銀の植田総裁は午前中の国会で「長期金利が急激に上昇するような例外的な状況においては機動的に国債買い入れの増額を実施する」と述べ、市場の安定に向けて機動的に対応する考えを示しました。

市場関係者は「物価の上昇を受けて、日銀が目指している政策金利の水準はこれまでより高くなったのではないかと見ている投資家が多く、こうした見方を背景に長期金利の上昇はしばらく続く可能性がある」と話しています。


長期金利とは?上がるとどうなる?景気・株価・為替との関係などわかりやすく解説(資産形成イロハのイ)

2024/7/4  Quick Money World

1.長期金利とは

長期金利とは「取引期間が1年以上の金利」のこと。つまり、お金を貸し借りする期間が1年超になるときの金利、ということです。長期金利の代表的なものが、国債のなかで最も発行量が多く債券市場で取引の中心になっている「10年物の国債利回り」です。

国債は発行された後、債券の流通市場で売買されています。そこで取引の成立した10年物国債の利回りが、様々な金融取引の指標として使われます。長期金利は景気の先行き予測を映すことから「経済の体温計」などと呼ばれることもあります。自由に債券が売買される流通市場では、景気が悪くなれば利回りが下がり、景気が良くなれば高くなるという傾向があるからです。

では、長期金利の動向はどうなっているのでしょう。10年物国債の利回りの2011年春以降の状況をグラフで振り返ってみましょう。

10年物国債利回りの推移チャート

日本銀行による大規模な金融緩和策のもとで、1%を下回る水準で長く推移していたことがわかると思います。そんな長期金利ですが、2024年5月下旬には11年ぶりに1%台を付けました。もし今後も長期金利の上昇が続けば、私たちの生活にはいくつかの影響が出てきそうです。

まず、長期金利を基準とする固定型の住宅ローン金利は連動して引き上げられる可能性があります。これから住宅を購入する方は、今後の景気の見通しや長期金利の動向も判断材料のひとつになることでしょう。

また、学資保険や年金保険など、保険を契約する際の「予定利率」も引き上げられるかもしれません。予定利率が引き上がれば受け取るお金が増えたり、保険料を抑えたりと、これまでより選択肢が広がります。金融機関の預金金利も引き上げられるかもしれませんよね。

ちなみに、長期金利が1%台というのは、長い目でみるとさほど高い水準ではありません。参考までに、過去30年ほどの長期金利の推移も見てみましょう。

10年物国債利回り92年11月~24年6月

いずれにせよ、金利が上がるということは、私たちの生活にプラスにもマイナスにも響いてくるものです。過剰に恐れることはないのですが、きちんと理解し、どういう影響があるのか心構えをしておくとよいですよね。

2.国債価格と金利の関係

長期金利や債券の話を始めると、多くの人が戸惑うのが「売る」「上がる」という表現です。債券は売られる(=人気が無くなる)と値下がりしますが、価値が下がると利回り(金利)は上がります。反対に債券は買われる(=人気が出る)と値上がりし、利回り(金利)は下がります

もらえる利息は高い方が嬉しいのに、どうして人気が無くなると上がるんだろう…とややこしく感じてしまいますよね。これは債券という金融商品が「満期になると元本が戻ってくる」「発行時に決められた利率で決められた期間ごとに利子が支払われる」というものであり、それを売り買いすることで価値(価格)が変わってしまうからなんです。ここでは簡単に「満期(償還)まで1年/利率5%(年1回支払い)/発行価格100円」の債券があると仮定して、値上がりした時と値下がりした時の関係を図で見てみましょう。

債券価格と利回り

市場での売買で値段が変わっても、償還時に受け取る元本や利子は変わりません。投資金額(ここでは買い付けた金額)に対してどれだけの儲けがあるかを計算したものが「利回り」です。額面より安く買った方が利回りは高く、額面より高く買った方が利回りは低くなることがわかるかと思います。

債券というものはその商品の性格上、人気が出て価格が上がると逆に利回りは下がる、と覚えておきましょう。もちろん、長期金利の指標になる国債も例外ではありません。

なお、発行価格が100円であっても、国債の購入は1万円単位から可能となります。購入方法や利払い、途中換金、満期までの保有などについては、財務省ウェブサイトの個人向け国債のページで詳しく紹介されています。

3.短期金利と長期金利の違いは?

ここでは長期金利と対で語られることの多い「短期金利」についてご紹介します。長期金利が1年超の取引に対する金利であるのに対し、短期金利は「取引期間が1年未満の金利」のことを指します。

短期金利の変動要因は主に「市場で流通するお金の量」「お金の需給」などです。例えば、金融緩和で中央銀行が市中にお金を供給し、お金が余っているような状況であれば金利は低くなります。反対に、資金の需要が高まり金融機関が融通し合う余裕がなくなってくれば高い金利を取って貸し借りすることになりますから、短期金利は上昇します。

もっとも、短期や長期などと言葉では分けていますが、短期金利が上昇すれば長期金利も上昇するなど、連動した動きをすることが多いです。ですから、短期金利は各国の中央銀行が金融政策の一環として利上げや利下げにより操作・誘導することが多く、注目されます。

日本銀行が政策金利の誘導目標とする無担保コール翌日物金利や、米国の中銀にあたる米連邦準備理事会(FRB)が誘導目標を出すフェデラルファンド(FF)金利などはニュースなどで見聞きされたことがあるのではないでしょうか。日銀は大規模な金融緩和を進める中で、民間の金融機関が日銀に預ける当座預金の一部の金利をマイナス0.1%にする「マイナス金利政策」を導入したこともありました。これらはいずれも短期金融市場で取引される短期金利を操作しようとするものです。短期金融市場ではこのほかにも満期が数カ月の短期国債や、企業が1年未満の資金調達をするコマーシャルペーパー(CP)など様々なものが取引されています。

ちなみに、固定金利型の住宅ローン金利は長期金利の動向に左右されますが、変動金利型の住宅ローンの金利は短期金利の動きに影響を受けやすくなっています。変動型は、銀行が最も信用力のある取引先に1年未満の貸し出しをする際の最優遇金利である「短期プライムレート(短プラ)」を参考に決まるのですが、この短プラは政策金利にほぼ連動しているためです。

4.株価と金利の関係

金利の動きは景況感と密接にかかわっています。金利もモノの値段と同じように需給や供給のバランスで決まるためです。例えば景気が良く「多少金利が高くてもお金を借りて設備投資をしたい」という企業が増えれば、お金の借り手が増え需給は引き締まりますから、金利は上がりやすくなると考えられます。

金利変動のサイクル

景気が良くなりながら資金需要が増えて金利が上昇している局面では、企業業績向上への期待も高く、決まった利払いしか受けられない債券よりも株式の方が投資対象としての魅力が高まります。債券を売って株を買う動きが強まり、金利は上昇し、株価も上昇します

ただ、金利は高いほど資金を借りる側にとっては支払いの負担が増えることになります。あまりに高い金利は資金の調達意欲を削いでしまい、企業活動の縮小にもつながりかねません。住宅ローンの金利が高くなれば住宅購入を手控える動きも出てしまうかもしれません。そうなると景況感は悪化しますから、株価は下落することも考えられます。株価が下落すれば、元本の償還や利払いのある債券は投資先としての人気が高まりますから相場が上がり、金利も下がります。

景況感のよいときには金利は上がりやすく、悪い時には金利も下がりやすい――。金利の中でも、将来の景気や経済的な見通しを反映しやすい長期金利が「経済の体温計」とよばれるゆえんでもあります。そして、こういった金利の動きは株価の変動要因になるケースも多く、株式市場の参加者も気を配っている部分でもあります。

5.為替と金利の関係

最近は円安基調が顕著ですが、為替の変動要因のひとつでもある「日米金利差」は耳にされた方も多いでしょう。一般的に、お金というものは常に有利な投資先や運用先に向かうものです。日本のように超低金利の環境で金融資産を保有しているよりも、より金利が高い国の資産を保有していた方がお得――そう考える人が増えるほど円安は進みやすくなります。

金利が上昇すると通貨も上昇します。これは、金利が上昇した国の資産を保有するには、その国の通貨を手に入れて買い付ける必要があるためです。例えば、日本国債よりも米国債を保有していた方が利回りがよいと考える投資家は、日本国債を手放して得た円資金をドル資金に変え(円を売ってドルを買い)、そのドル資金で米国債を買い付けることになります。

円相場が対米ドルで161円台に下落した際には「37年半ぶりの円安・ドル高水準」など外国為替相場の状況が話題になることも多くなりました。この円安基調にかなりの影響を与えているのが日本より先に大幅な利上げを実施してきた海外との金利差です。為替の変動に大きな影響を与える金利動向にはこれまで以上に関心が高まっているといえるでしょう。

6.まとめ

長期金利は、1年以上のお金の貸し借りに使われる金利のことをいいます。指標となるのは10年物国債の利回りです。日々のニュースで「長期金利」と報じられるものは、この10年物国債の利回りです。

企業の業績が向上しつつ資金需要が高まっている場合は金利が上昇しつつ株価も上がりやすくなります。一方で、高すぎる金利は資金繰りを悪化させてしまい、株価の重荷にもなってしまいます。昨今の円安・ドル高基調には国内外の金利差が影響していることもあり、長期金利の動向にはこれまで以上に株式市場や為替市場の参加者から関心が高まっています

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