アーリー・リタイヤメント
各種調査によると、日本人はできるだけ長く働きたいようですが、アメリカ人は富を蓄えて早くリタイヤ―することが夢だと言われます。フロリダ州マイアミビーチを朝早く散歩すると、大きな犬を老夫婦が散歩させている風景に出会います。
アンケート調査は質問の仕方で変わる
しかし日本人も、「十分なお金がたまった場合には、いつまで働きたいですか。」と聞くと、早めに引退したい人が増えるのだそうです。さらに、「奥さんから、できるだけ長く働いてちょうだい。」と言われないとしたら、という条件を加えたら、一層アーリー・リタイヤメントが増えるのではないでしょうか。
サラリーマンの楽しみ
永六輔がこう語っていたことがあります。「僕は会社勤めをしたことがありません。でも、サラリーマンになった時の楽しみって言うのは、それを辞めるときだと思っています。どういう風にすれば楽しく辞められるか。それを考えてるうちに定年になると思います。」
USA TODAYの2019年12月8日の記事は、アーリー・リタイヤメントに関するものです。私の拙訳です。
仕事に就いている間は、お金を稼ぐためにせっせと働きます。リタイヤすると、お金のために働いてきたのと同じくらい一所懸命に、お金に働いてもらう必要があります。そうして、給料をもらわなくなったら費用を賄ってもらうのです。そこまで到達することは大変なことです。しかし、いったんそうなって、金銭的独立から得られる自由は、残りの人生をすっかり変えてしまうかもしれません。
その自由を手に入れれば、今までとは全く異なり、自分の人生を自分の思い通りにできるのです。そして早くそうなればなるほど、長い間維持できるのです。このことを念頭において、できるだけ早くリタイヤすべき5つの理由を以下に述べます。
第1番目の理由:それだけ良い人生を送れる
米国における平均寿命は78-79歳の間です。願わくば、平均を引き上げる人になりたいですが、もしそうでも、現実は加齢とともに活力が衰え、健康や費用に関する不安が増していく傾向にあります。従って、若くリタイヤできるほど、リタイヤを楽しんで過ごすことのできる人生、そして健康な人生の期間が長くなるのです。
第2番目の理由:誰かがあなたのお金を使うことになる――それはあなた自身だった方が良い
ことわざにあるように、「お金を墓場にもっていくことはできません。」その場合にも、そのお金を愛する人にうまく残せるかどうかも明らかでは有りません。もしあなたの目標が、近い将来にわたって御家族が快適に生活できる財産を形成することであったとしても、残念ながら、たぶんあなたの望むように将来はならないでしょう。相続財産の大部分は子供の世代が使ってしまい、孫の世代までに家族の財産の90%は消えてしまいます。
お金を使うのはいとも易しいことであり、大金は使うことを誘惑してくるものなのです。稼ぐために一生懸命にならなかった人にとって、このことは特に当てはまるのです。ウォーレン・バフェットの言った言葉は有名です。子供には、「何でもできると思える十分な額なら残したいが、何もできないと思うほどの額なら残したくない」。ですから、「子供たちが相続する財産を私たちが使ってしまいます。」と公言する人々の仲間に加わって、仕事で稼いだお金を楽しく使いましょう。
第3番目の理由:死に際のもっとも有名な後悔
死の床についた人々が最も多く口にする言葉は、人生を通してこんなに一所懸命に働くんじゃなかった、ということです。この世のお金を全部集めても、人生の最後に追加の時間を買うことはできません。しかし、一度「十分だ」というところまでたどり着いて仕事を辞めれば、リタイヤの最初の部分でもっと時間を手にすることができます。リタイヤの最初の部分で、死に際の後悔をしないような対応策を講じ、また、本当に大事な人と過ごす時間を味わうことができるのです。
第4番目の理由:もし辞めなくても、辞められるということが大事
世界で最も裕福な人の一人であるバフェットは、優に80歳を超えていますが、近い将来に引退するつもりは無いと表明しています。人がこの決定をどう考えようとも、彼は好きなことをして収入を得る方法を見出したというのが現実です。そして、彼が今の道を選ばなければ、老後(英語で golden years )になっていたであろう時間を楽しめているのです。
もし必要な費用をカバーできるだけの十分なお金があったら、自分の時間をどう過ごしますか。
もしその回答が、他人のためにある種のサービスを提供する、というものだったら、引退した後に、その仕事に対してわずかばかりのお金を払ってもらうことが、できるかも知れません。金銭面でいったん不自由し無くなった時でも、稼ぐために働くということは悪いことでは有りません。しかし、本当に楽しめる仕事を見つけようとして、稼ぐための仕事を辞めることが可能であるなら、そうした方が良いでしょう。そのプランがバフェットのために良いものなら、あなたにとっても良いものです。
第5番目の理由:人生を超えてもなお残る思い出を作るため
あなたが亡くなった後、子供や孫は一緒に過ごした時間や、ともに分かち合った経験があれば、あなたを思い出すでしょう。もしその経験が、庭の辺りでボールをなげたり、一緒に散歩に行ったり、近くの公園を探索するようなお金がかからず単純なものであっても、思い出してくれるのです。
あなたが亡くなった後、彼らが大事な思い出を抱いてくれるためには、やはり、あなたは彼らと一緒にいて思い出を作る必要があります。遺産――愛、時間、助言、方向性の遺産――は、何世代にもわたって存続し、家系の行く末を良い方向に変えられる可能性があります。単にお金だけではできないような意味があるのです。