金融広報中央委員会の2016年金融リテラシー調査 5

<昨日の続き>

金融広報中央委員会の金融リテラシー調査(2016年)の質問項目を題材に、個人のお金のことを考えてみたいと思います。

なお、私の意見は、⇒の後に示してあります。

Q13 一般に「人生の3大費用」といえば、何を指すでしょうか。(1つだけ)
1. 一生涯の生活費、子の教育費、医療費
2. 子の教育費、住宅購入費、老後の生活費
3. 住宅購入費、医療費、親の介護費

⇒ 人によって費用の大きさは変わるかもしれません。例えば住宅は親から相続して、あまり修理の必要がなければ、住宅費はあまりかかりません。親を介護するために、仕事を辞めざるを得ない人にとっては、その機会損失は数千万円に及ぶかもしれません。

しかしここでは、一般的に、という条件が付いていますので、2.子の教育費、住宅購入費、老後の生活費、が正解になります。2.を選んだ人は47.6%で、次に多かったのが、1.の25.4%ですが、これは、不正解というよりは、「人生の3大費用」の定義によるものでしょう。1.を選んで、間違えたからと言って、リテラシーがないということではありません。

Q14 契約を行う際の対応として、適切でないものはどれでしょうか。(1つだけ)
1. 自分にとって、その契約が本当に必要なのかを、改めて考える
2. 解約できるかどうかや、解約時に違約金が発生するかを確認する
3. 業者から詳しく説明を聞いて契約し、契約書は後でゆっくり読む
4. 契約締結に当たり、必要に応じて、第三者にアドバイスを求める

⇒ 3. 業者から詳しく説明を聞いて契約し、契約書は後でゆっくり読む について考えます。

保険の契約を結ぶ時に、契約書をしっかり読む人はいるでしょうか。インターネットでSBI証券や楽天証券などの口座開設の時に、同意文書などをしっかり読む人はいるでしょうか。普通の人は契約の後にも前にも、契約書は読まないでしょう。なぜ読まないのでしょうか。

  • 読んでも、すべてを理解することはできないと思う
  • 大手の企業は顧客に損をさせる恐れはないという前提に立っている

ということが挙げられます。

ここで検討対象を二つの例に絞りましょう。

  1. 大手証券会社に口座を開設する
  2. 銀行で保険に加入する

1.大手証券会社に口座を開設する

野村証券、大和証券、SBI証券、楽天証券などに口座を開設する場合には、あまり細かい契約内容、同意文書までは読まなくても、問題はあまりなさそうです。現実的なことを言えば、1行1行を正確に読み込むことは、私には不可能だと思います。したがって、大手証券会社を信頼することはやむを得ないでしょう。

2.銀行で保険に加入する

こちらの方はとても問題です。例えば私が三井住友銀行を訪問した時に、外貨建て一時払い保険を勧められました。この商品は、

  • 仕組みが複雑である

  • 銀行など金融機関の手数料が多い

  • コスト・リターンがブラックボックスの中にある

という問題点があります。この商品に比べて、ETFやインデックスファンドは、

  • 仕組みが単純

  • 金融機関の手数料が少ない

  • インデックスが公表されているので透明性が高い

というメリットがあります。これ以外にも、銀行、証券会社では、ラップファンド、外貨預金、個人年金保険などがありますが、これらの商品には近づかず、話も聞かない方が無難だと思います。その理由は、銀行などは

  • 給料の高い社員が時間をかけて説明する
  • 説明用のパンフレットなどを作成し、顧客からの質問に答えられるように、時間と費用をかけて準備している
  • 支店は駅前などの好立地にあり、経費が高い

という状況をみれば、上記の商品は金融機関にとって儲かる商品であることが分かります。銀行などが儲かるということは、顧客がそのコストを負担するということです。逆に、顧客に説明してくれない商品は、顧客にとって良い商品である場合が多いのです。その代表例が、ETFの1306(TOPIX連動型上場投資信託(ETF))、SPY(アメリカSPDRのS&P500のETF)などです。コストは年間で0.1%以下で、証券会社が力を入れているアクティブファンドの2~3%より大幅に低いのです。金融機関が熱心に進める商品には近づかないことが大事です。

Q15 金融トラブルに巻き込まれないための行動として、適切でないものはどれでしょうか。(1つだけ)
1. 自分の個人情報はなるべく言わない
2. 金融経済に関する知識を身に付けるよう努力する
3. 判断に迷ったときは、業者を信じて一任する
4. 購入しようとする商品の評判をインターネットで確認する

⇒ 業者は自分の給料、会社の経費分を稼ぐために、顧客の負担するコストが高いものを売る場合が多いのです。したがって、業者を信じて一任するのは絶対にダメです。

業者の中にも良い人はいます。しかし、それは、その家族にとって良い人、勤めている会社にとって良い人、友達にとって良い人です。企業にとって優秀な社員は、会社の利益を増やしてくれる人です。会社の利益を増やすためには、顧客にコストを負担させる行動をとるのが普通です。

参考 三井住友・みずほ・三菱UFJ銀行・郵便局訪問記

<明日に続く>