読書術 4

<昨日の続き>

読書術の二人目は、池上彰・佐藤優です。東洋経済 Onlineを見てみましょう。

(注)私は、この二人の読書術にはほとんどついていけません。


佐藤優「月間300冊の読書は、これで可能だ」

「2種類の速読」に池上彰も驚く、その秘訣は?

池上 彰 : ジャーナリスト / 佐藤 優 : 作家・元外務省主任分析官

  • あらゆるニュースをわかりやすく「解説」することで国民的な注目を集めている池上彰氏。世界情勢から政治・経済・宗教まで誰にもマネできない鋭い「分析」を出しつづけている佐藤優氏。
  • 2人が膨大な知識を蓄積し、世の中を読み解きつづけられる「知の源泉」は、彼らが毎日実践している「読み方」にある。
  • 2人の「新聞・雑誌・ネット・書籍の読み方」の極意を1冊にまとめた新刊『僕らが毎日やっている最強の読み方』が発売され、早くも14万部を突破するベストセラーとなっている。
  • 「何を」「どう」読めば、2人のように「自分の力で世の中を読み解ける」のか?「知識と教養」を身に付ける秘訣は何か? 新刊『僕らが毎日やっている最強の読み方』の内容を再編集しながら、その極意を紹介していく。

驚異的な読書量をこなす秘訣

池上:私は日々、複数の新聞や雑誌に目を通すだけでなく、子どもの頃から本が大好きで、NHK時代も年間300冊以上は通勤時間を使って読書していました。佐藤さんは、ベストセラーになった著書『読書の技法』にも書かれていましたが、「月平均300冊、多い月は500冊以上に目を通す」ということですよね。

佐藤:はい。複数の新聞や雑誌のほかに、そのくらいの書籍には、毎月目を通しています。

池上:これは、かつての私の10倍以上の冊数です。原稿の締め切りが毎月90本近くある中で、その読書量を維持しているのは驚異的ですね。

佐藤:といっても、私も最初から大量の本を読みこなせたわけではありません。試行錯誤の末、「熟読」と「2つの速読」を使いこなすことで、大量の本を読みこなせるようになりました。

池上:なるほど。では、今回は佐藤さんの「本の読み方」を、ぜひお聞かせください。

佐藤:効率的に本をたくさん読もうと思ったら、まずは「本の仕分けをする」ことが大切です。

まずは「本の仕分け」をする

【佐藤優の読み方1】「熟読する本」と「速読する本」を仕分ける

佐藤:本の仕分けには「仕事や勉強で読む本」と「趣味や娯楽で読む本」など、いくつかの分け方がありますが、大量に本を読みこなすには、「時間をかけて熟読する本」と「速読で済ませる本」に、まずは仕分ける必要があります。

池上:なるほど。知りたいテーマがあれば、本を大量に購入して片っ端から目を通し、「熟読用」と「速読用」に分けるやり方ですね。実は私も同じやり方をしています。

佐藤:あらゆる本を速読するわけではなく、基礎知識を身に付けるための基本書や、書評を書く本、半年から1年後の仕事に直結するような本は、時間をかけてじっくり熟読しなければいけませんから。

池上:「熟読」というのは、どの程度しっかり読むのですか?

【佐藤優の読み方2】「熟読」は、書き込みをしながら、しっかり読む

佐藤:「熟読」する本は、一行一行じっくり線を引いたり、重要箇所を囲んだり、余白に書き込みをしたりしながら読みます。よくわからない部分には、「?」マークを書き込むこともあります。

池上:私も、気になる箇所はページの角を折ったり、速記用のシャーペンでメモしながら読みます。熟読する本は、月に何冊くらいですか?

佐藤:月300冊、目を通すうち、熟読するのは平均して4~5冊です。熟読する本は、同じ本を3回読みます。1回目は線を引きながら通読、2回目はノートに重要箇所を抜き書きしながら読み、最後の3回目にもう一度通読します。だから、熟読する本を増やすのはそう簡単ではありません。残りの本は、すべて「超速読」か「普通の速読」のいずれかで処理しています。

池上:「超速読」と「普通の速読」は、具体的にどうするのですか?

佐藤:私は速読を、1冊5分で読む「超速読」と、1冊30分で読む「普通の速読」の2種類に分けているんです。

「熟読」と「速読」で違う読み方をする

【佐藤優の読み方3】1冊5分の「超速読」のやり方

佐藤:まず「超速読」は、本全体の印象をつかみ、熟読に値する本かどうかを見極めるための読み方です。

池上:先ほど伺った「熟読する本」と「速読する本」の仕分けを、「超速読」によって行うわけですね。

佐藤:はい。具体的には、「はじめに」の1ページと目次を読み、それ以外はひたすらページをめくっていきます。このとき、文字は読まずにページ全体を見るようにして、目に飛び込んでくる見出しやキーワードを頭に焼き付けます。そして、結論部分の1ページを読むのです。

池上:そのジャンルの基礎知識さえしっかりあれば、そのやり方でも本のおおよその内容はつかめそうですね。

【佐藤優の読み方4】「超速読」で「読むに値しない本」を排除する

佐藤:「超速読」にはもうひとつ目的があり、それは「読むに値しない本を排除する」ことです。先ほどの「本を仕分ける」話にもつながるのですが、本には「現時点で自分が理解できる本」と「理解できない本」があります。「理解できない本」の1つ目は、自分の基礎知識が欠けている場合です。

池上:基礎知識がないのに、いくら難しい本を読んでも理解できませんからね。

佐藤:はい。そしてもうひとつ、説明がいい加減だったり論理の整合性が崩れているといった、よくいえば「独創的」な、率直にいってしまえば「でたらめ」な本があるんです。そういう本は、いくら読んでも知力が向上しないので、入り口で排除する必要があります。

池上:時間は極力、有効に使わなければいけませんし、無意識のうちに間違った知識がインプットされるという恐ろしいリスクもありますからね。

佐藤:もうひとつの「普通の速読」は、1冊を30分程度で読むやり方です。

速読に必要な「基礎知識」は、熟読で身に付ける

【佐藤優の読み方5】「普通の速読」は重要部分を拾い読み

佐藤:「普通の速読」では、まず「はじめに」と目次、そして「おわりに」を注意深く読みます。それによって、その本のどこが重要なのか、どこをきちんと読むべきかのあたりをつけます。

池上:「はじめに」と「おわりに」は重要ですよね。私も速読用の本でも、そこだけは必ず目を通すようにしています。

佐藤:そして、重要だとあたりをつけた箇所については、文字をできるだけ速く目で追い、1ページ15秒で読むことを目標にします。それ以外のページは、超速読のやり方と同じです。

池上:そのやり方なら、30分程度で1冊に目を通すことができて、内容のポイントもつかむことができるわけですね。

佐藤:はい。「普通の速読」の場合は、気になる箇所には印をつけたり、重要な本についてはノートに読書リポートを作成したりするので、少なくともその程度の時間はかかりますね。

池上:そうやって佐藤さんは、月間300冊もの本に目を通しているわけなんですね。

【佐藤優の読み方6】「速読」するために、「熟読」で基礎知識を身に付ける

佐藤:「速読をしたいけれど、うまくできない」という相談をよく受けますが、「速読」でその本の内容をきちんと理解するためには、その分野についての一定の基礎知識があることが大前提なんですね。

池上:基礎知識のない分野の本は、飛ばし読みでは理解できませんからね。

佐藤:「基礎知識のない知らない分野の本は速読できない」というのが、速読法の大原則です。ロシア語がわからない人が、いくらロシア語の本を一生懸命読んでも、それは目の運動にしかなりませんから。

池上:「速読」したいと思ったら、まずは基本書をしっかり熟読して、基礎知識を身に付ける必要があるということですね。

佐藤:そう思います。読まなければいけない本はたくさんあるのに、なかなか時間がとれないという人は多いでしょう。私も外交官時代に、大量の本を読む必要性に迫られて、試行錯誤をしながらいまお話ししたような読書法を編み出しました。みなさんもぜひ、私たちの「読み方」も参考にしながら「自分なりの読書法」を磨き、現代を読み解くための「知識と教養」を身に付けてほしいですね。

◆佐藤 優(さとう まさる)/作家・元外務省主任分析官。1960年、東京都生まれ。2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。『読書の技法』(東洋経済新報社)など多数の著書がある(撮影:今井康一)

◆池上 彰(いけがみ あきら)/ジャーナリスト。1950年、長野県生まれ。NHKで記者やキャスターを歴任後、2005年よりフリージャーナリストとして多方面で活躍中。現在、東京工業大学特命教授。名城大学教授(撮影:今井康一)