読書術 6

<昨日の続き>

読書術の最後は、齋藤孝です。キャリアサプリを見てみましょう。


齋藤孝さんに学ぶ「読書を加速させる方法」

明治大学文学部教授・齋藤孝さんは様々な読書術の本を執筆しながら、自身も忙しい時間の合間をぬって1日で10冊の本を読むこともあるというほどの読書家です。齋藤さん曰く、読書の量や質、アウトプットの量や質は「生まれ持った頭の良さ」ではなく、「技術」です。

技術は何度も繰り返し実践していれば、少しずつでも自分のものになっていきます。そのためある程度読み方(=読書の技術)を確立してしまえば、あとは息をするように本を読んでいくことができるのです。ここではその読み方のお手本として、齋藤さんの『大人のための読書の全技術』を参考にご紹介します。

Contents

もっと速く読みたい!を叶える4つの読み方

1.目的と締め切りを同時に設定して読む
2.「最終章」から逆算して読んでいく
3.複数冊の本を並行して読む
4.「重要な2割」だけを読む(上級者向け)

読書の質を格段に上げる3つのワザ

1. 精読の基本「音読」
2. 3色のペンを使って本に線を引く
3. 自分の「引用ベスト3」を作る

読書の幅を広げよう!4つの本との出会い方・選び方

1.「芋づる式読書」に自分を委ねる
2.難読書には「解説本」から当たる
3.本の海「図書館」で買うべき本に出会う
4.漫画を通じて人と出会う

読書で「変わっていく自分」を楽しもう

もっと速く読みたい!を叶える4つの読み方

1冊よりも10冊、10冊よりも100冊、100冊よりも1000冊読んでいる人の方が読書のスピードは速くなります。なぜなら本は知識で読むものだからです。知識が増えていけば文中の言葉の理解も素早くでき、その本にどんなことが書いてあるかを瞬時に理解できるようになります。

また同時に量を読んでいると自分の中で「本はこう読むもの」というコツが見えてきます。知識ばかりは読まなければ手に入りませんが、コツは教えてもらえばある程度習得できます。以下は齋藤さんがおすすめする「速読の技術」です。

1.目的と締め切りを同時に設定して読む

→目的の設定とは「誰かに本の内容を説明するぞ」と決めること、締め切りの設定とは「この本を○時間で読む」と決めることです。誰かに説明するためには本の内容を体系立てて理解する必要があるため、より集中して読むようになります。締め切りを設けると急いで読みます。

しかし誰かに内容を説明しなければならないので、きちんと理解しなくてはいけません。するとスピードと質を両立しようと脳がフル回転し、鍛えられていきます。その結果速読力が上がっていくというわけです。

2.「最終章」から逆算して読んでいく

→論説文に限ってのことですが、たいていの本は最終章に全体の要約とそこから導かれる結論が書かれています(特に新書に多い)。そのためはじめに目次を開いて結論らしき部分を見つけたら、そこから読み始めてしまいましょう。

そのあとはじめから読み始めれば、その本の「ゴール」を知っているので、途中の内容をどのように理解すればいいかもわかりやすくなります。ただしこの技術は純文学や推理小説ではご法度ですのでご注意を。

3.複数冊の本を並行して読む

→読書量が増えない原因の一つは「1冊全部を読破してから別の本を読み始める」という習慣にあります。実は知識がある人ほど1冊の本の読破にこだわっていません。それよりもとにかく「今読みたい」という本をその時々で手に取り、読んでいく方が知識や教養にはつながりやすいのです。

そのため複数冊の本を並行して読むようにして、気に入ったものをしっかり読むというスタイルを身につけてみましょう。飽き始めている本を無理して読むよりも、よっぽど記憶にも残るはずです。

4.「重要な2割」だけを読む(上級者向け)

→これは目次を見て自分が読みたい内容や本全体にとって重要な部分の目星をつけたら、その部分を断片的に読んで本の概要を掴んでしまう方法です。200ページの本なら40ページ、300ページの本なら60ページなのであっという間に1冊の内容をインプットできます。ただしこの読み方では「重要な2割」がどこかを見極める力が必要です。

これを身につけるためには他の読み方で読書量を増やさなければなりませんが、身につければ格段に読書スピードはあがります。まずは「この本の重要な2割はどこだったかな?」と考える癖をつけることから始めましょう。

読書の質を格段に上げる3つのワザ

読書の速度を上げながら読んだ内容のインプット率を高める方法、それが「精読」です。読んだ本の重要な部分や、古典などの教養に直結する文章はぜひ精読して自分のものにしておきたいところです。以下の3つのワザは齋藤さんが実践する「精読の技術」です。

1. 精読の基本「音読」

→黙読では目と頭しか使いませんが、音読をするとそれ以外に口と耳を使います。またきちんと文章を音読するためには内容を理解している必要があります。字面を追っているだけではイントネーションや声の強弱がおかしくなるからです。

そのため本当にその文章を自分のものにしたければ、内容が頭に入ってくるまで音読をするのが一番の近道です。齋藤さん曰く雑学王・やくみつるさんは齋藤さんに「実はほとんどの本を音読してるんだ」と語ったそうです。音読の効能はやくさんのクイズ番組での活躍から推して計るべし。

2. 3色のペンを使って本に線を引く

→「音読はちょっと……」という人は、赤・青・緑の3色のペンを使った精読を試してみましょう。赤のラインは本の内容において非常に重要な部分、青のラインは「まあまあ重要」と思う部分に、緑は主観的に「面白い!」と思える部分に丸をつけるために使います。

この中で最も重要なのは意外にも「緑の丸」です。これを強く意識することで読書の時の「おもしろセンサー」が鍛えられ、どんどん読書が面白くなるからです。おもしろセンサーがある程度鍛えられた頃には読書量も増え、自然と赤と青のラインを使いこなせるようになっています。

3. 自分の「引用ベスト3」を作る

→これは「引用したい文章を探す」姿勢を身につけるための精読方法です。まずは本の中から引用ベスト3をノートなどに書きぬきます。そしてその1つずつに「どうして気に入ったか」をメモしていくのです。

これによって簡単な読書記録が作られ、いつでもその本を読んだ時の感動を思い出せるようになります。齋藤さんは「引用力こそが教養である」と言います。この精読方法によって引用力が身に付けば、加速度的に教養も身についていくのです。

読書の幅を広げよう!4つの本との出会い方・選び方

読み方を身につけるためには「読みたい本・読むべき本」と出会い、それを選びとらなければなりません。しかし「本を読むぞ!」と意気込んでいる人に限って、本との出会い方・選び方を知らなかったりするものです。ここでは齋藤さんがすすめる4つの出会い方・選び方を紹介しましょう。

1.「芋づる式読書」に自分を委ねる

→齋藤さんが大切にしている読書の極意の1つ、それが「芋づる式読書」です。芋づる式読書とは「好きな著者の本」「好きなキャラが出てくる本」「好きなジャンルの本」を片っ端から読み漁ることを言います。本を選ぶ際に「好き」という気持ちは読書の量と質を格段にアップさせてくれます。

やり方は熟知しているけど好きではない仕事と、あまり熟達はしていないけど大好きな仕事、どちらから学ぶことが大きいかは言うまでもないはず。これは読書も同じです。何を読んでいいかわからないという時は自分の中の「好き」に従ってみましょう。

2.難読書には「解説本」から当たる

→名著と言われる本には少なからず難読書があります。いくら一言一句調べながら読んでみても、さっぱりわけがわからない本です。確かに自分なりに読むことは大切ですが、あまりにも理解が追いつかないと自分なりの読み方もできません。そこで齋藤さんがおすすめするのが難読書の解説本から読み進める方法です。

そのうえで難読書に当たれば、初見の時よりも格段に理解が進むはずです。。難読書には様々な解説本が書かれるので、それだけでも何冊か読書の経験を積むことができますし、名著の内容を自分なりに理解できるようになれば稀有な読書体験にもなるでしょう。

3.本の海「図書館」で買うべき本に出会う

→「本を探すのは通販サイトか本屋」という人が多いかと思いますが、実は図書館は買いたい本・買うべき本を探すにはもってこいの場所です。本屋と違って内容は確かなのに売れない本や、出版から時間が経ったためにスペースを追いやられた本もたくさん置いてあります。

閉架図書ではどこの本屋でも手に入らないようなマニアックな本にも出会えるでしょう。しかし図書館の本は自分の本のように3色のペンでラインを引いたりできません。その意味で図書館は買いたい本・買うべき本に出会う場所なのです。

4.漫画を通じて人と出会う

→「本を読むぞ!」と意気込むとついつい読書リストから外してしまうのが漫画です。しかし漫画には単なるエンターテイメントとしての役割以外に、コミュニケーションの幅を拡げる役割もあります。

名作漫画には必ずどこかにコアなファンがいて、漫画をきっかけにこれまで出会わなかった人とも出会えるかもしれないからです。難しい本の合間の清涼剤として、そして人間関係を広げるためのツールとして、漫画も読書リストにぜひ加えてみましょう。

読書で「変わっていく自分」を楽しもう

読書をすると自分の頭の中に自分以外の人の価値観や人生観が入ってきます。それを知ったからには「読書前の自分」と「読書後の自分」は同じではいられません。むしろその2つが同じままの読書に、ほとんど意味はありません。

読書は「変わっていく自分」を楽しむ行為でもあるからです。自分の中にいろいろなものの見方・考え方が入り混じり、少しずつ変わっていく楽しさを知れば、自ずと読書の量は増え、質も上がっていきます。まずはここで紹介した11の読書のテクニックを1つずつでもいいので取り入れてみてください。きっとそこからあなたの読書はどんどん変わっていくはずです。