連れ合いの運用実績2022年6月:海外ヘッジファンドの日本国債売り

最高値水準

世間では、株安のニュースが頻繁に取り上げられていますが、連れ合いの運用実績は、過去最高水準で推移しています。最高値より5%程度低いのですが、1割減までは行っていません。

最近のニュースとしては、株安、円安に加え、債券安のリスクが出てきました。イギリスのヘッジ・ファンドが日本国債を売ったのです。各メディアの報道でその内容を確認しましょう。


ブルームバーグ 2022年6月14日

日銀が屈するまで日本国債をショート-ヘッジファンドのブルーベイ

ヘッジファンドのブルーベイ・アセット・マネジメントは日本銀行と闘うつもりだ。

日銀は債券利回りを抑える取り組みを強めているが、ブルーベイは他の主要先進国・地域の金融当局の方向性に反するこの政策を日銀が放棄せざるを得なくなるとみている。ブルーベイの最高投資責任者(CIO)、マーク・ダウディング氏(ロンドン在勤)によれば、日銀のイールドカーブコントロール(YCC)は「維持不可能」だ。

同氏は13日のインタビューで「かなりの額の日本国債をショートしている」と語った。

インフレ高進で世界の債券利回りが上昇する中、トレーダーはますます日銀を試しつつある。元ゴールドマン・サックス・グループのチーフ通貨エコノミスト、ジム・オニール氏やJPモルガン・アセット・マネジメントのシーマス・マクゴレーン氏も日銀が最終的に金利を巡る姿勢を転換させると予想している。オーストラリア準備銀行(中央銀行)は昨年11月にYCCを放棄した。

10年物日本国債の利回りは13日に日銀がYCCで許容する変動幅の上限を突破し、日銀が国債の買い入れを加速させてより長期の国債をオペに含めることにした後も、高水準にとどまっている。


現代ビジネス 7/3(日) 

金利抑制を巡る日本銀行と海外ファンドの死闘、制するのはどちらか

日本銀行は世界の大勢に逆らって金利を押さえ込んでいるが、いずれ政策転換を余儀なくされるだろうと予測する海外のファンドが、日本国債を売り浴びせて、日銀に挑戦している。もし彼らが勝てば、巨額の利益を手に入れることになる。

海外のファンドが日銀に挑戦

現在、日本の金利水準は、主要国(とくにアメリカ)の水準に比べて低い。このため、円資産を売って、ドルなどの資産に乗り換える動きが続き、金利に上昇圧力がかかっている。 これが、急速な円安をもたらしている基本的な原因だ。

これに対して、日本銀行は、国債を無制限に買い入れる政策をとって、対抗している。 最近では、海外のファンドが日銀の金融政策に真っ向から挑戦して政策転換を促し、日銀が応戦している状況が鮮明になってきた。

6月16日付の日本経済新聞によると、イギリスのヘッジファンド、ブルーベイ・アセット・マネジメントは、長期金利を抑制しようとする日銀の政策は、いずれ放棄せざるをえなくなるので、それを促すために日本国債を売っていると明言している。

同ファンドのマーク・ダウディング最高投資責任者(CIO)は、世界の金利が上昇しているなかで、日銀だけが長期金利の上限を0.25%にとどめようとしているが、それを維持するのは難しいとし、「7~9月のどこかで、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)政策を修正するだろう」と述べている。

ファンドは、なぜ日本国債を売るのか?

確かに、こうしたファンドが国債を売れば、国債の価格に下落圧力がかかる。つまり、金利上昇圧力が強まる。

ところで、このファンドは、なぜ日銀の金利政策を解除させようとしているのだろうか? 日銀の政策を正常化させて日本国民の役にたちたいというようなことではではないだろう。何らかの利益が得られるから、このようなことをしているのだろう。

「将来金利が上がる(国債価格が下落する)だろうから、価格が高いいまのうちに売ってしまおう」ということだろうか?

そうした消極的理由もあるかもしれない。しかし、実は、ヘッジファンドは、もっと積極的に、現在の状況を利用して、巨額の利益を得ようとしているのである。

日本国債の「ショートポジション」を取った

このことは、ダウディング氏にインタビューしたブルームバーグの記事(2022年6月14日)をみると、分かる。

同氏は、「かなりの額の日本国債をショートしている」と言っているのだ。単に、保有している日本国債を売却するのではなく、「ショート」しているのである。こが重要なポイントだ。

「ショート」と言うのは空売りのことだ。国債を借りて売る。 そして、一定の期間後に、借りていた国債を返却するのである。 この取引をすると、金利上昇によって利益を得ることができる。その理由は、つぎのとおりだ。

現在は金利が低い。つまり国債の価格が高い。その価格で国債を売り、それによって国債の価格に下落圧力を加える。それが成功すれば、国債の価格が下がる。そこで、安くなった価格で国債を買って返せば、利益がでる。

なお、空売りでなく、国債の先物取引を行っても、同じ結果が得られる。つまり、将来、国債の価格は低下する(金利が上昇する)と予測した上で、「将来時点で国債を売る」という先物契約を結ぶのだ。

思惑通りになれば、将来時点で、現物価格より高い価格で国債を売れるだろう。だから、安く国債を買って、先物取引の実行で高く売れば、やはり利益を得ることができる。

将来の金利が低下すればヘッジファンドは負け

もちろん、上で述べた取引には、リスクがある。仮に何らかの理由で、将来、金利が低下してしまったとする。つまり国債価格が上がったとする。空売りの場合には、借りた国債を返すために、価格が高くなった国債を買わなければならないので、損失が発生する。

国債の先物取引の場合にも、その実行によって、市場価格より安い価格で売らなければならないから、損失が発生する。 ブルーベリー・アセット・マネジメントは、「金利が将来下がる可能性は非常に低い」と読んでいるのだ。

前記のインタビューの中で、ダウディング氏は、つぎのように述べている。「金利が0.18%を超えて低下する可能性はかなり低い。一方、日銀がYCCの修正に動いた時の債券価格の下落(金利の上昇)は非常に大きいものになるだろう。」

どちらが勝つか?

日銀とヘッジファンドのどちらが勝つかは、資金力の違いに大きく影響されるから、ファンドが中央銀行に勝てるはずはないように思える。

しかし、同じような取引を仕掛けているのは、ブルーベイだけではないはずだ。巨額の利益を得るチャンスがあるのだから、多くのファンドや投機家が同じようなことをしているに違いない。

実際そのようなことが起きていることを示す状況証拠がある。これまで述べてきたような取引によって、日本国債のマーケットは、最近、きわめて異常な形に歪んでしまっているのだ(これについての詳しい説明は、ここでは省略する)。

中央銀行が負けた例も

中央銀行とヘッジファンドの戦いで、中央銀行が負けた例もある。最近では、オーストラリア準備銀行(中央銀行)が、昨年11月に金利のコントロールを放棄した。

もっと前では、アメリカの投資家、ジョージ・ソロス氏が、イングランド銀行を打ち負かした例が有名だ。

1990年、イギリスはEC諸国の為替を一定の枠に収めようとする通貨管理体制ERM(欧州為替相場メカニズム)に参加した。当時、イギリス経済が低迷していたにも関わらず、ポンドが過大評価されていた。

しかし、イギリスはERMの規制に従って切り下げができなかった。この状態に着目したソロス氏のクウォンタムファンドが、ポンドを売り浴びせ、ポンドの切り下げ圧力が強まった。

1992年9月16日(水)、ついにイギリス通貨当局が攻防に敗れ、ポンドは、ERMを脱退し、変動相場制へと移行することになった。

「合理的なものが勝つ可能性が高い」

前記のダウディング氏のインタビューで興味深いのは、「日銀が国債を買いながら財務省が円を買う介入をしようとしているのは、アクセルとブレーキを同時に踏むようなもので、一貫した政策とは言えない」とコメントしていることだ。そして同氏は、「一貫性のないものに対しては、投資家は挑戦をしたくなる」と述べている。

確かにその通りだ。現在の日本政府の政策は、ちぐはぐなものになっている。「物価対策が必要」ということで、ガソリンなどの価格をおさえている。ところが一方では、物価高騰の重要な要因である円安を放置している。つまり、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるのだ。

一貫性のない政策を継続することは難しい。どこかで破綻する。事実、現在の日本の国債市場は、そうした状況になりつつある。

「合理的なものが勝つ可能性が高い」という考えは、大変説得的だ。