高校向け 金融経済教育 5

<前回の続き>

学習指導要領の改訂で4月1日から高校で本格的な金融教育が始まりました。どのような内容なのかを金融庁の金融経済教育指導教材をもとに覗いてみましょう。なお、飽きないように断続的に掲載します。

黒字はパワーポイントのスライド、紺色は発表者用のメモです。


高校生のための金融リテラシー講座

4-11.リスクとは?

  • お金を運用した結果、得られる利益や損失のことを「リターン」といいます。
  • このようなリターンの不確実性の大きさ、振れ幅の大きさのことを「リスク」といいます。

金融商品は自分の意思で選ぶため、利益・損失は自己責任です。(自己責任原則)

  • 「リスク」とは英語で危険と訳されますが、金融商品の「リスク」とは、リターンがプラスになるマイナスになる両方の不確実性のことを言うので、必ずしもネガティブなことではありません。
  • 一つ注意したいのは、自分の意思に基づいて金融商品を買うため、その結果に対しても自分で責任を負う必要があります。自己責任原則と言います。もし損失が出たとしても、それは詐欺ではありません。

4-12.リスク・リターンの関係

  • ここでは投資でよく出てくるキーワード、リスクとリターンについてお話します。
  • リターンとは自分が投資した元本が何%の収益を上げるかということです。そのまま皆さんのイメージ通りだと思います。一方で、リスクというのはそれが事前に確定できずに振れ幅を持つということ。例えば1年間でー10%から+10%まで振れる可能性があるということ、その振れ幅をリスクと言います。リスク一般的に危険という意味がありますがが、金融では必ずしもマイナスの意味を持つわけではありません。
  • (クリック)まず最初に預金は金利がほとんどつかない分、元本が保証されている。リターンがゼロ、リスクもほぼゼロということですね。
  • (クリック)債券とは国や会社にお金を貸す見合いで、金利を定期的に受け取り、最後に元本が返ってくる金融商品です。債券は5年後とかの期限が来ると元本が返済されます。ただ、途中で売却する場合の価格は、金融市場で左右されるので、預貯金よりも少しリスクが高めとなります。リターンも少し上乗せされるので、低リスク低リターンとなります。
  • (クリック)株式は、企業の業績が伸びることによって配当がもらえ、企業価値が増加すれば、株価が上がります。一方で、業績が悪化すると配当が減ったり、株価が下がり、元本割れすることもあります。業績の変動が大きいので、リスクも大きくなります。リターンもその分高くなるので、ハイリスクハイリターンになります。
  • (クリック)投資信託は運用会社などの専門家が多くの個人から少額の資金を預かって、まとめて運用する仕組みです。株式で運用するものや債券で運用するもの、株式と債券を組み合わせて運用するものもあります。リスクリターンは投資対象により異なります。投資信託を選ぶ際は、投資対象を確認してください。

4-13.預金と投資

  • 貯める・増やす、ここでは預金と投資について考えてみましょう。資産形成は少し難しいので、この投資の仕組みだけ理解してください。
  • 皆さん家庭から銀行に預金をして、銀行が企業や政府に貸し出しをするというやり方もありますが、先ほど見た通り、金利はほとんどつきません。
  • 一方で、証券会社などを通じて、債券や株式、国債を購入することで、企業や政府に皆さんの資金が渡ります。株式の場合は企業のオーナーになるということになります。
  • その資金は企業であれば、設備投資や商品サービスの提供、株主への配当や従業員への給与支払いに使われます。企業の経済活動を通じて利益が生まれ、投資家である家庭に配当金が支払われたり、株価が上がって資産価値が増えたりします。債券は企業にお金を貸すことになり、同じように企業の経済活動に使われますが、債券を持つ投資家には定期的に金利が払われ、最後には元本が返済されます。
  • 一方で、国債は政府にお金を貸すという債券と同じ仕組みです。政府の場合は、その資金を公共サービスに使い、投資家は定期的に利子を受けとり、最後には元本が返済されます。
  • 経済活動にお金を出すことで、経済がより豊かになります。
  • 同時に、家庭の資産も増えるというのが投資の仕組みです。

4-14.投資を通じて社会課題の解決に貢献

SDGsとは、「持続可能な世界を実現する」ことを目指して、国連サミットで採択された国際目標。貧困や飢餓、保健、教育、ジェンダー、環境、生産、雇用など、幅広く17のゴール・169のターゲットから構成される。

⇒ 消費(商品の購入)や投資(債券・株式の購入)等による資金提供 を通じて、社会をより良くすることに貢献できる

  • 社会課題を解決する投資という考え方があります。
  • みなさんもSDGsについてはよく知っていると思います。持続的な世界を実現するための国際目標で、17のゴール、169のターゲットで構成されているものです。このSDGsに投資でも貢献するやり方があります。
  • このSDGsの目標達成に努力をしている企業の債券や株式に投資をすることによって、リターンを得ると同時に、社会課題解決に資金を使ってもらうということができます。
  • 環境保全、貧困対策、クリーンエネルギーに対してビジネスを行っている企業に投資をするということですね。
  • 自分がボランティアでSDGsの課題解決に時間を使うことも良いことですが、お金でSDGs達成を支援することもできるというのを覚えておいてもらえたらと思います。

(体験)資産形成シミュレーターを使ってみよう!

  • 資産形成シミュレーターを使ってみましょう。
  • 上の段で、資産シミュレーターが青くハイライトされているのを確認します。
  • 投資金額は最初は100万円になっています。
  • それがどのように増えていくか、シナリオ1から3まで利率が入っています。シナリオ1の0.001%とは預金金利。シナリオ2の0.7%は国内債券の平均利回り。シナリオ3の7.2%は海外株式の平均利回りです。
  • 設定期間は20年にセットされています。

まとめ(4章のポイント)

(1) 目的別に金融商品を活用しながら、自分に合った資産形成を行い、将来に向けて準備しましょう。
(2) お金を預けると利子をもらえ、お金を借りると利子を払わなくてはいけません。利子は金額利率は%で示されます。
(3) 元本のみに利子がつくことを「単利」、利子も運用すれば利子にも利子がつくことを「複利」といいます。
(4) 金融商品の3つの基準「収益性」「安全性」「流動性」を全て満たす商品はありません。目的に応じて使い分けましょう。
(5) 「預貯金」「債券」「株式」「投資信託」の特徴を知りましょう。
(6) 投資とは自分の資金を経済活動に提供することで、利益の一部を受け取ることです。経済活動により、私たちの生活がより豊かで便利になります。