お金で幸せは買えるか?

1945年3月10日未明、東京はアメリカの空襲を受けました。焼夷弾が降り、家々はどんどん燃え、防空壕は崩れ、人々は燃える町を逃げ惑いました。一晩で10万人が亡くなりました。それ以外にも大けがをして、それがもとで離婚させられた人、不動産の権利書が燃えてしまった人たちがいました。その日のその人たちから見たら、今は何と幸せかと思うことでしょう。しかし、幸せではないと思っている人もいます。どうしたら幸せになれるのでしょうか。

CNBCの2023年11月25日の記事を読んで見ましょう。以下は拙訳です。

6 in 10 Americans say money can buy happiness—here’s how much it would cost


アメリカ人10人に6人が「幸せはお金で買える」と回答-その金額は?

銀行に十分なお金があれば、ストレスを低く抑え、全体的な幸福感を高めることができるのは周知の事実だ。

金融サービス会社Empowerの最近の調査によると、10人に6人が「お金で幸福を買える」と答えている。

しかし、それは安くはない。幸せになるにはいくらお金が必要かという質問に対して、アメリカ人は平均で約120万ドル(1億8千万円)の純資産が必要だと答えた。

しかし、ミレニアル世代は、幸せになるためには約170万ドルの純資産が必要だと答えている。X世代は120万ドル程度、ベビーブーマーも同様に100万ドル弱の純資産があれば幸せになれると答えている。

Z世代は本当の異常者である。最も若い世代では、平均48.7万ドルの純資産があれば経済的な幸福を得られるという。

幸せの値段はミレニアル世代が最も高い

ミレニアル世代の約72%が、お金で幸せが買えることに同意している。また、ミレニアル世代は幸せになるために必要な年収が最も高い世代でもある。

Empower社によると、各世代が幸せでストレスの少ない生活を送るために必要だと答えた平均年収は以下の通り:

Z世代:        128,084ドル
ミレニアル世代:   525,947ドル
X世代:       130,344ドル
ベビーブーマー世代:124,165ドル

回答者がストレスが減ると答えた年収の中央値は、年間95,000ドル。現在の給与の中央値は65,000ドルなので、これを達成するには50%近い昇給が必要ということになる。

中央値とは、全回答の中間の数字であることを忘れてはならない。回答者の半数はより高い数字を、半数はより低い数字を挙げている。一方、高い数字や低い数字がいくつかあると、平均値が上下に偏る可能性がある。

相対的に言えば、人々の生活を向上させるために必要な金額はそれほど多くないことが、Empowerの調査でわかった。25,000ドルの臨時一時金があれば、アメリカ人の42%の経済的幸福が増加する。15,000ドルの大金があれば32%の回答者が同じようになり、5,000ドルのボーナスがあれば17%の回答者がより幸福になる。

経済的幸福とはどのようなものか

幸福を感じるには高給を得るか、超高額な純資産を持つ必要があると答えたにもかかわらず、ほとんどのアメリカ人は、それらそのものが幸福なのではない。

Empowerの調査によると、67%のアメリカ人にとって経済的な幸せとは、すべての請求書が期限内に全額支払われることである。

「借金がないこと」(65%)、「日々のささやかな贅沢を楽しむこと」(54%)は、アメリカ人が経済的に幸せになる方法として最も人気のある他の2つである。ある一定の純資産に達すれば、経済的に幸せになれると答えた人はわずか17%だった。

一般的に、ほとんどのアメリカ人は幸せであり、75%の人が全体的な幸福度を10点満点中7点以上としている。しかし、経済面はアメリカ人の幸福度が最も伸びる余地がある分野である。

以下は、アメリカ人が生活の中で最も満足している分野である:

家庭 80%
人間関係 72%
仕事 68%
経済的な目標 63%
経済的目標を達成するための計画がある 62%
経済的自由がある:61
経済的な味方(メンターなど)がいる: 58%
経済的余裕(純資産など)がある: 58%


PRESIDENT Onlineの記事を見てみましょう。

「幸せな人生」に必要なものはなにか…ハーバード大学が80年かけて出した”最終結論”

742人の追跡調査で明らかになった”たった一つのもの”

幸せな人生には何が必要なのか。明治大学の堀田秀吾教授は「ハーバード大学が742人を80年にわたって追跡調査した研究結果によると、人の幸福と健康を高めてくれるのは、家柄や学歴、職業、家の環境、年収や老後資金の有無ではなく、『信頼できる人』の存在だった」という――。

世の中の3割近くの人が、「職場の人間関係」に悩んでいる
さて、みなさんの中に、上司や同僚とそりが合わない、コミュニケーションがうまくとれない、何らかのハラスメントや嫌がらせを受けているという人や、「上司や組織の仕事の進め方が合理的でない」「真面目に働き、成果を上げている人間と、そうでない人間がいる」「自分の働きに対する評価や待遇が適切でない」「飲み会など、時間外のイベントに参加させられる」といったことに、ストレスを感じている人はいませんか。

ちなみに、厚生労働省「令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、25.7%の人が職場の対人関係に強いストレスを抱えていると答えており、日本労働調査組合が2021年に行った「職場の人間関係に関するアンケート」でも、16.5%の人が「職場の人間関係に疲れて悩んでいる」、12.7%の人が「職場の人間関係にストレスを感じている」と答えています。

意欲や生産性を上げるのは、賃金ではない

職場の人間関係は仕事の効率や生産性に大きく影響します。組織のあり方や人間関係に問題があると、当然のことながら、仕事への意欲が下がったり、意思疎通やコミュニケーションがスムーズにいかなくなり、業務に支障が生じたり、離職率が上がり、優秀な人材が流出したり、人手不足に陥ったりしやすくなるからです。

職場の人間関係と仕事の効率の関係性については、「ホーソン実験」という有名な実験によって明らかにされています。ホーソン実験は1927年から1932年にかけて、当時ハーバード大学教授だった、ジョージ・エルトン・メイヨー教授らがウエスタン・エレクトリック社のホーソン工場で行った研究のことを指します。

教授らは、生産性を上げるために何が必要なのかを見つけるため、さまざまな実験を繰り返した末、生産性の向上にもっとも大きな影響を与えるのは、労働時間や休憩時間、賃金や物理的な労働環境ではなく、人間関係であるという結論に至ったのです。

組織の人間関係は、そもそも破綻する運命にある

ここで、みなさんに知っておいていただきたいことがあります。それは、組織の人間関係は、そもそも破綻はたんする運命にあるということです。なぜなら、基本的には、人が増えれば増えるほど、一人ひとりの当事者意識が減るからです。

その結果、組織全体としての生産性が下がったり、さまざまな人間関係のトラブルが起こったりするのです。

本当に大切にするべき人を見極めたほうがいい

どれほど人が多い組織でも、中には必ず意欲を持って仕事に取り組むメンバーがいるはずなのですが、やる気やモチベーションの低いメンバーが多いと、意欲の高いメンバーの負担が増え、モチベーションの低下が伝染したり、離職率が高くなったり……といったことが起こりやすくなります。そのような組織は、衰退の一途をたどるしかありません。

あなたが仕事へのモチベーションを維持し、仕事に積極的に取り組み、より高い収入を得たいと考えるなら、働きの悪い上司や、意欲やモチベーションの低い同僚に期待したり、不満やストレスを抱いたりしている場合ではありません。

傍観者効果やリンゲルマン効果が作用してしまう以上、組織において、そうした人が一定数生まれてしまうのは仕方がないことなのです。

そこにエネルギーや時間を割くよりも、組織の中で本当に大切にするべき相手と理想的な人間関係を構築すること。

それが、限られたあなたの時間を有意義に使い、パフォーマンスを高め、あなたがビジネスで成功し、豊かな人生を送るための鍵となります。

「たった一人」でも温かな、信頼できる人がいればいい

本当に大切にするべき相手と理想的な人間関係を構築することは、ストレスを軽減し、脳の機能や仕事のパフォーマンスを高め、人を健康に、幸福にします。

ハーバード大学には、1938年から80年以上(発表された研究では75年分のデータを検討)にわたり、「幸福な人生」について研究している研究者たちがいます。彼らはその間、次のような形で、約700人の被験者たちの追跡調査を行って人生を記録し、現在は2000人以上に及ぶ、被験者の子どもたちについての研究も行っています。

幸せに必要なのは「家柄、学歴、年収、老後資金」ではない

この研究の結果、人の幸福と健康を高めてくれるのは、家柄や学歴、職業、家の環境、年収や老後資金の有無などではなく、質の良い人間関係であることがわかりました。

しかも友人の数は関係なく、たった一人でも心から信頼できる相手がいる人、温かい人間関係の中で生きている人は、脳が健康に保たれ、心身の苦痛が和らぎ、より長生きします。

逆に、孤立感を覚えている人は、自分を周りよりも不幸だととらえ、中年期以降に健康を損なったり、脳の機能が衰えたりしがちで、孤立していない人に比べて寿命が短くなる傾向にあったのです。

ほかにも、「嫌な上司のもとで働く従業員は、好きな上司のもとで働く従業員に比べて、心臓発作や脳卒中で死ぬリスクが60%高くなる」「人間関係が悪い会社では、社員が高血圧や高コレステロール、糖尿病に悩む確率が20%増加する」といった報告もあります。

職場でも、信頼できる人は一人いればいい

もちろん、仕事の人間関係においても同じことがいえます。何事にも積極的な人といると積極的に、モチベーションが高い人といると意欲的になりやすいといえるでしょう。

一方で、ネガティブな人、消極的でモチベーションが低い人との人間関係に時間やエネルギーを費やすことは、あなたのビジネスにおいて、決してプラスにはなりません。また、職場にたった一人でも信頼できる人がいるかどうかは、職場の人間関係への満足度を大きく左右します。