長期投資における投信の考え方 下

<昨日の続き>

司会―それでは世界にも目を向けていきたいと思いますが、世界の投信市場はどんな具合でしょうか。

—アメリカは世界最大の経済大国ですが、投信でも世界一強という様相を呈しています。

国債投資信託協会の調べで、世界の投信残高4600兆円のうち、米国が半分を占めています。これは確定拠出年金制度などを通じて長期の積立投資をする風土が根付いていると思います。それから個別ファンドを見ても、上位10本のアクティブ投信はすべて米国です。こちらも米国一強です。

以下、ルクセンブルク、アイルランド、中国、ドイツ、オーストラリア、フランス、日本、英国、カナダの順です。

司会―アメリカの投信がここまで普及してきた背景は?

―制度的に極めて充実しています。

アメリカ人従業員の3人に一人が401kで運用していて、これは年金を積み立てていくシステムなんですけど、非課税で積み立てられるということで、これが相当効いているということだと思います。日本も真似をして、日本版401kを作って、確定拠出年金企業型とイデコを作ったりしたんですが、これはまだ3人に一人というレベルでは全然なくて、従業者の14%に過ぎません。

そういった広がりだけでなく、制度の中身も全然違って、アメリカだと、年間300万円まで非課税で運用できるんですけど、日本だと企業型で66万円ですから、4分の1とか5分の1程度しかなく、非課税で運用できる年間金額が限られています。このため、確定拠出年金の拡大は限られたものになっています。ただし、今、これを変えようとしています。

司会―制度の改良が課題というところでしょうか。日本で投資を選ぶときの注意点を見てみましょう。

―日本国内で販売された投信は、約6000本で、これは上場企業全体の数より多いのです。投信の投資対象は様々で、国内の株式、債券が代表的ですが、金や原油などのコモディティ、不動産を対象にしたものもあります。

投信の保有コストである信託報酬は、一般的に、パッシブ型の方が低いという特徴があります。

長期投資をする上で注意すべきは分配金の行方です。

投信は運用成績の一部を分配金として投資家に還元しているわけですが、そうすると定期収入を得られるというメリットがあります。一方で分配せずに再投資をする場合、運用する元本が増えますので、効率的な運用をしようとする場合には再投資した方が良いといえます。そして、絶対的に注意しなければいけないのが、特別分配金という制度です。例えば運用成績が上がらなくても、分配金を必ず出すという仕組みの場合には、元本を削って分配金を出している場合があって、結果的に元本がかなり少なくなってしまって、運用の効率が下がってしまうことが懸念されますので長期の運用をするのであれば、これを避けた方が無難です。

司会―長期投資に向く投信の選び方、コスト、分配金など、注意すべき点についてどのように考えたらよいでしょうか。

―分配金をもらうと、約20%税金が源泉徴収されて、税金を払うことになります。分配金なしの投信もあるので、今は税金を払わなくて済んで、税金の繰り延べ効果がありますので、税金を考えても有利かなと思います。

コストに関しては、投信を買うときのコスト、売るときのコストがかかることがありますが、一番問題なのは、保有している間にかかる信託報酬です。仮に1%の料率だとしても、10年持つと10%になってしまうので、これはきちんと見た方が良いと思います。それから、販売時のコストや信託報酬以外に、出てこないその他コストがあって、それは目論見書には具体的にいくらかを記載してないのですが、運用報告書には具体的にいくらという風に出てきます。それは監査法人に支払うコスト、売買するためのコストなど、組み込まれているコストが実際にいくらかかったかをチェックして、それで答申を決めた方が良いと思います。

司会―投信を選ぶ際の指標はどこに注目しますか?

―指標はいくつもあるのですが、今回はシャープレシオに注目してみました。

これは資産所得倍増プランとNISA抜本的拡充案の課題リスクに見合ったリターンを上げているかを見る指標です。

日本のグローバル株式ファンドのシャープレシオ

順位 ファンド名 シャープレシオ
1 iFreeActive EV 1.41
2 モビリティ関連 世界株式戦略ファンド 1.31
3 次世代モビリティ社会創生株ファンド 1.26
4 グローバルEV関連株ファンド(ヘッジなし)1.13
5 TRP世界厳選株式ファンドB資産成長H無 1.11
5 TRP世界厳選株式ファンドD資産成長H無 1.11
(期間3年、8月末時点)

数値が大きいほど過度なリスクをとらずに、効率よく収益を上げていることを示します。一般的な投信のシャープレシオは0.5~1.0で、1.0を超えると効率が良いと言われています。シャープレシオは、株と債券では比較できないので、種類ごとに比較することが重要ですし、これらの数値は、あくまでも過去の運用成績ですから、将来を予測するものではないということを踏まえるが重要です。

日本の場合ファンド・マネージャーの顔が見えにくいという特徴があるので、それが見えるという方が安心感があります。機敏に動くファンドマネージャーとそうでないファンドマネージャーには違いがあって、例えば、ウォーレンバフェットなんかは、1964年からバークシャーの株価は36,000倍になって100万円投資していれば、364億円になっています。コロナの時にエアラインの株を全部売ってるんです。それでエネルギー株をどんどん買ってるんです。非常に機敏の動いているんで、そういう株は安心感があります。

司会―投信の普及への課題を改めて教えてください。そして個人投資家へのアドバイスをお願いします。

―投信の場合、買われた方はわかると思うんですが、300万円持って行って買いますと言っても、いくらの基準価格のものがいくら買えたかどうかがわからないんですね。その日のうちには。やっぱり上場してないですから。アメリカでは上場しているものが結構流行っていて、これはETFと言われているんですけど。これは画面を見ながら買うことができて、しかも指値もできるんで、非常に使い勝手がいいです。しかも、信託報酬に当たるエキシペンシブ・レートが非常に低いんですね。こういったものは結構使い勝手がいいかなと思います。

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