現在浮上している主な優遇案
- NISA対象への追加:投資枠に個人向け国債を組み込み、得られる利子や利益を非課税にする構想。
- 相続税の減免(特例):個人向け国債の保有・相続に対して相続税の軽減や非課税枠を設ける案。
背景と課題
- 国債の買い手確保:日銀による国債買入れが縮小する中、家計の貯蓄を国債へ誘導する狙いがあります。
- 公平性の懸念:富裕層が相続税対策として利用しやすく、税制の公平性を損なうという慎重論や指摘も根強くあります。
新NISAに国債追加 金融庁、税制改正要望で検討 慎重論も根強く
2026年8月20日 朝日新聞
財務省と金融庁は、個人向け国債の税制優遇措置について検討に入った。新NISA(少額投資非課税制度)の対象に国債を加えることなどが念頭にある。ただ、税制優遇までして国債の消化を後押しすることに慎重な声も根強い。
8月末にまとめる来年度の税制改正要望に盛り込む方向だ。いまは、家計が国債を保有する割合は2%にとどまる。日本銀行が国債の購入を減らすなか、買い手を増やしたい政府内の思惑が背景にある。
現在、新NISAの対象商品は国内外の株式や投資信託(投信)に限られ、国債は対象になっていない。構想は政治先行で浮上した。国民民主党は7月10日、個人向け国債を新NISAに加えることなどを盛り込んだ「国債NISA法案」を国会に提出。家計の安定的な資産形成を促し、国債の購入層を広げて、円滑な国債発行を進める狙いだ。自民党内にはほかに、個人向け国債にかかる相続税の減免を求める声もある。
個人向け国債、税優遇なら「預金100兆円シフト」 地域金融に逆風
2026年8月21日 日経新聞
財務省と金融庁は2027年度の税制改正要望に個人向け国債への税制優遇を盛り込む方針だ。急拡大する家計の国債投資をさらに加速させる可能性があり、100兆円規模になるとの試算もある。実現すれば預金不足に悩む地方の金融機関に逆風になる公算が大きい。
生命保険や年金などを除けば、家計が安全資産として選べる運用先は預金と国債が中心だが両者の差は開いている。
9月発行分の個人向け国債は期間5年の固定金利型で2.06%と過去最高を付けた。メガバンクの5年物定期預金の金利は1%にとどまる。日銀がマイナス金利政策を導入した10年前は双方の利回り差が0.04%程度だったが、現在は1%超まで広がった。

25年度の個人向け国債の発行額は6兆円を超え、19年ぶりの水準となった。26年4〜8月は前年同期よりさらに66%多い。このペースが続けば年度あたり10兆円弱となり、財務省が当初見込んだ5兆9000億円を大きく上回る。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志主席エコノミストは少額投資非課税制度(NISA)など税制優遇策の導入などを前提に10年間で100兆円程度が国債に流入する可能性があるとみる。家計が保有する現預金約1100兆円の1割にあたる規模だ。
上野氏は家計に占める国債比率が株式や投資信託などの投資を選好する米国を上回る水準まで上昇すると見通す。日本は現状1%未満で、米国の約3%まで伸びしろは大きい。
実際の資金移動の規模は税制優遇の内容や銀行側の預金流出対策に左右される。みずほ総合研究所の服部直樹チーフ日本経済エコノミストは税優遇がなくても「30年代までに数十兆円規模の資金シフトが起こりうる」とみる。

上野氏が懸念するのが金融システムへの影響だ。「地銀などからの預金流出も含め、日本の金融システムに与える影響は大きい」と指摘する。
日銀によると、2026年3月末時点の家計の国債保有は約20兆円と前年同月から26%増えた。一方、現預金の残高は1126兆円と微増にとどまった。
預金は融資余力を生む銀行経営の土台だ。メガバンクでは個人預金が預金全体の4〜5割程度を占めるとされ、地方銀行では7割近くに達する。預金流出が加速すれば貸し出しの原資が細り、特に地域金融に影響が出る可能性がある。
ある大手行内の会議でも「預金を代替する金融商品の存在感が高まっている」「特に個人向け国債の拡充策の影響は注視したい」といった議論が交わされている。
イタリアでは国債に税制面の優遇措置を設けた結果、国債の個人保有比率が8%弱から14%程度まで上昇した。日本でも同様の措置が導入されれば、預金から国債への資金シフトに拍車がかかりそうだ。
個人向け国債は元本割れリスクを避けたい高齢層などの投資参加を促す手段として有力視される。しかし「変動10年」「固定5年」「固定3年」の3種類が中心で、株式や投資信託に比べると商品ラインアップが乏しい。投資家の年齢や運用期間、リスク許容度に応じた選択肢は限られる。
日本総合研究所の桂田健吾氏は「年限が1〜2年の短期債や少額から毎月購入できる積み立て型の導入など商品性の改善を進める必要がある」と指摘する。預金の流出懸念が高まれば「国債の購入額に上限を設けるような制度設計も求められる」と話す。