◎今日のテーマ:リバランスは必要か?
個人の資産運用ならリバランスは必要ない
投資した資産は、放ったらかしにしないで、毎年リバランスすべきだという意見を時々目にしますが、本当にそうでしょうか。個人の資産運用においては、リバランスは必要ないと私は思います。
年金基金等ならリバランスは必要
厚生年金基金等、他の人のお金を預かって、資産運用方針を明示しているのであれば、リバランスが必要です。
放っておけば本来の姿に落ち着く
しかし、自分のお金なら、放っておいた方が、本来あるべき姿に近づいていくと思います。もし、仮に株式がバブルになったとしても、数年で本来の水準に落ち着くだろうと思います。
バブルへの対応は世界分散で
1989年の日本の株式バブルはひどいもので、本来の水準に戻るまでに10年以上の歳月を費やしましたので、あのバブルはあまりに異常だったと思われます。しかしそれは極めてまれなことですので、それだからリバランスが必要だというのは、少し行きすぎではないかと思います。しかし、今後もあのようなバブルが起きることがないとも言えませんから、日本など一国に投資するのではなく、広く世界に投資して資産を分散することが賢明だと思います。
リバランスの問題点を挙げると次の通りです。
① 手数料がかかる
現代は、ネット証券で行えば、かなりコストを抑えることができますが、ある程度は必要です。
② 資産が増えにくい
株式、そして、その中でも特に株価が上昇している市場のウエイトをわざわざ下げて、資産全体の増加を抑制しているは非効率です。
この表は1000万円の資産を、国内債券(利回り1%)、海外債券(2%)、国内株式(5%)、海外株式(6%)に250万円ずつ等分して、そのまま放置すると、20年目は合計で2142万円になります。一方毎年リバランスした場合には1990万円にしかなりませんから、150万円の差がつきます。一番右の欄は、期待される資本コストを8%として計算しました。資本コストとは、企業が資本を調達・維持するために必要なコストのことで、現代のヘッジファンドは8%が必要とされているそうです。8%が20年続くと、4661万円になります。普通の日本人から見ると、8%という数字は信じられないような高い数字かも知れませんが、SPY(アメリカSPDRのS&P500のETF)の過去25年の平均年利回りは9.70%ですから、アメリカ人にとっては、平凡な数字かも知れません。
資産 | 国内
債券 |
海外
債券 |
国内
株式 |
海外
株式 |
リバランス無し合計 | 毎年リバランスして4等分 | 期待される資本コスト |
利回り | 1% | 2% | 5% | 6% | 合計 | 3.5% | 8% |
0年目 | 250 | 250 | 250 | 250 | 1,000 | 1,000 | 1,000 |
10年目 | 276 | 305 | 407 | 448 | 1,436 | 1,411 | 2,159 |
20年目 | 305 | 371 | 663 | 802 | 2,142 | 1,990 | 4,661 |
30年目 | 337 | 453 | 1,080 | 1,436 | 3,306 | 2,807 | 10,063 |
③ 安全圏に逃げ込む時期が遅れる
株式市場の価格が上がれば、多少の価格下落でも問題がないという意味で、早く安全圏に飛び出せるのに、わざわざ株式のウェイトを落として、リスクの高い圏内に留まる意味はどれほどあるのかと思います。上記の表のとおり、8%の利回りなら、10年以内で2倍になりますから、ここまでくれば、かなり安全圏に来たと言えると思います。
④ 説明義務がない
誰に対しても説明義務を負わないで済むことを、わざわざ手間と手数料をかけて行う意味がない。
⑤ ジェレミー・シーゲル教授、ウォーレン・バフェット
ジェレミー・シーゲル教授は、長期運用なら株式、と言っていますし、ウォーレン・バフェットは、9割をS&P500で運用するのが良い、と遺言で言っています。アメリカの株式か、世界の株式か、あるいは、日米の株式に投資して、リバランスせず放っておくことがよさそうです。私は世界の株式、連れ合いは日米の株式に投資しています。
長期運用ならリバランス不要
リバランスが不要だという考えは、あくまでも長期での運用であって、近い将来現金が必要なら、その必要額を現金化しておけばいいと思います。