日銀異次元緩和の二つの目的

◎今日のテーマ:日本銀行の行っている「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の目的

異次元緩和強化

日本銀行の政策委員会・金融政策決定会合は、2018年7月31日「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の持続性強化しました。このいわゆる異次元緩和には、二つの目的があると思われます。

インフレによる景気向上

一つの目的は、表向きに言われていることです。つまり、市中に出回っているお金を増やすことによって、人々が「インフレになる」と予想する。そうすると、物価が上がる前にみんな物を買おうとするので消費が伸びる。そして景気が良くなる、という筋書きです。このような考え方の経済学者をリフレ派と言います。

2%目標達成できず

この考え方に基づいて、大胆な政策を打ち出しましたが、5年が過ぎても、2%のインフレ率は達成されていません。それどころが、マイナス面がどんどん膨らむばかりです。

マイナスの副作用増大

日本銀行のバランスシートは膨らむ一方です。異次元緩和はいずれ終了しなければなりませんが、出口がはるか彼方に遠のくばかりです。財政の均衡が実現できずに国の借金は膨らむばかりです。今は、日本人が十分な預金を持ち、企業の世界における競争力もあるので、大きな問題が起きてはいませんが、今後更に10年も経つと、手に負えない状態になっているかもしれません。

インフレ税で国債の実質負担軽減

二つ目の目的は、表向きには言われませんが、日本銀行幹部が思わず漏らしてしまっていることです。インフレを実現する手段を推し進めていくと、もし景気が好転しなくても、インフレさえ実現すれば、国の借金が大幅に減らすことができるということです。

日銀券の価値が減れば国債の実質負担も減る

つまり、現在のように日銀券をどんどん印刷して、国債や株式を買うことによって、その日銀券を市中に出していくとインフレになるので、昔からの借金である国債の実質的価値がどんどん減っていくということです。例えば、お札が現在の2倍になれば、物やサービスの値段も2倍になりますが、10年前の国の借金の額面金額は変わりませんから、国の負担は半分になります。

国債の負担を肩代わりする人は銀行預金保有者

国の負担が半分になると、その負担は雲散霧消するのではなく、誰かが肩代わりすることになります。それは、現在銀行預金にお金を預けている人達です。

インフレタックス

インフレによって、自分の財産が減るので、これをインフレ税、あるいは、インフレタックスと呼びます。一つ目の目的を達成するために行ったことなので、インフレ税を課すことになっても、言い訳ができると考えているのでしょう。

既に徴収が始まっているインフレタックス

リフレ政策を採って、すでに5年半が過ぎていますが、目標とする2%のインフレになっていませんので、マグマがどんどんたまっている状況です。ただし、インフレタックスは既に課され始めていて、2010年まで1%のインフレになると予想されています。銀行預金が1000万円あるとすると、1年で10万円ずつ、価値が減っています。日本円はドルに対して明治以降2回、急激に価値が減少したことがあります。1回目は明治時代に半分になり、2回目は第2次世界大戦後に200分の1になりました。完全なハイパーインフレです。3回目はいつやって来るのでしょうか。

オーバーシュート型コミットメント

いずれ、現在のインフレ率1%が、かなり高い水準まで飛び上がっていく恐れがあります。日本銀行は、オーバーシュート型コミットメントの方針だと言っていますので、2%を超えて数%になるまで、この政策を続けることになるかもしれません。政府は、「日本人の生命と財産は守る」と言っていますが、少なくとも財産は自分で守らなければいけないようです。

事情を一番よく知っている人たちは日本円を外貨に変換

日本銀行、財務省のOB達は、この状況が分かっているので、退職金を外貨に換えるそうです。私の友人の同級生が日本銀行の定年退職を間近に控えていますが、外貨への変換を真剣に考えているそうです。