会社は誰のものか

◎今日のテーマ:会社は誰のものか

従業員の努力によって会社は成り立つ

会社に勤めて、会社のために苦労して働いているときには、「会社は従業員のものだし、従業員がちゃんと働かなければ、業績を上げることはできない、と思うものです。

JAL再建

2010年にJAL(日本航空)が倒産した時、稲盛和夫さんは政府から会社更生法に基づく会社再建のために会長を引き受けてほしいと頼まれました。彼は、社員に対して「会社は従業員のものである」と、本音を言ってしまったことがありました。

経営者と株主は別

経営者が、それだけの気持ちを従業員に対して持っていたから、再建できたのでしょう。しかし、それは経営者の発言であって、株主の考えではありません。そして、そのような考えが受け入れられるのは、日本だからであり、アメリカ、ヨーロッパでは、成立しえない考えでしょう。

20年前に決着済み

最近、ルノーが日産に対して経営統合を申し入れたとの報道がありましたが、ルノーは日産の株式の43.4%を持っていて、実質的に日産を子会社化しているのですから、日産の同意は不要であると思います。今から20年前、日産が経営危機に陥り、ルノーが36.8%の日産株式を保有したときに勝負はついていたのです。現在申し入れた経営統合によって、将来的に日産の力をそぐことになるかどうかは分かりませんが(おそらく問題ないと思いますが)、株主総会で決定できるだけの株式を保有しているので、やろうと思えばいつでもできます。

配当と自社株買いで株主がリターンを求める時代

現在、日本とアメリカの配当率は2%程度あります。それ以外にアメリカの会社は自社株買いを積極的に行って株主に利益を還元しています。昭和の時代には、日本では配当率が低く、自社株買いも行わなくても、株価はどんどん上がって行ったので、株主はあまり不満を持ちませんでした。しかし、そのような時代ではなくなってきました。従って、今後の日本の上場企業は、アメリカほど事業の成長が期待できなくても、配当と自社株買いで株価が上昇する余地があると思います。

利益の行方は従業員の給与ではなく株主へ

その時に、利益は従業員の人件費には回らずに、配当と自社株買いという形で株主に還元され、併せてストックオプションなどの形で経営層が受け取ることになります。

従業員は給与だけでなく株式のリターンを重視する時代

昭和の時代、従業員は株式を持たなくても、ベアという形で利益の還元を受けていましたが、これからは自ら株式や投資信託を通じて利益を取りにいかなければなりません。そして、その時に大事なことは、自分の勤めている会社の株式を保有するのではなく、数多くの会社の株主となること、具体的には、投資信託を保有することです。

個別株式でなく投資信託

私の連れ合いは、従業員持株会で積み立てた400万円が、会社の倒産の結果、ゼロになったという経験を持っています。1306(TOPIX連動型上場投資信託のETF)なら、約2000社に分散投資することになりますから、倒産のリスクを心配する必要はありません。そして、10年、20年の間、何もせずに保有し続けることによって、配当と基準価格上昇を期待することが賢い方法だと思います。