老後資金における年金・商品等の利率比較・利用 3

<昨日からの続き>

老後資金には様々なものがあります。それらについて、現状の利率を確認し、資産全体の中で、それぞれの資金をどう利用するかを考えます。

3.厚生年金

報酬比例部分の特別支給

金利は0%ですが長生きしても受け取れます。 65歳から受け取れますが、それとは別に64歳までは報酬比例部分の特別支給を受けることができます。

昭和60年の法律改正により、厚生年金保険の受給開始年齢が60才から65才に引き上げられました。受給開始年齢を段階的に、スムーズに引き上げるために設けられたのが「特別支給の老齢厚生年金」の制度です。
「特別支給の老齢厚生年金」を受け取るためには以下の要件を満たしている必要があります。

男性の場合、昭和36年4月1日以前に生まれたこと。
女性の場合、昭和41年4月1日以前に生まれたこと。
老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があること。
厚生年金保険等に1年以上加入していたこと。
60歳以上であること。
なお、在職中の方は報酬によって年金額が支給停止となる場合があります。

男女に3年間の差

男女に5年間の差があることは不思議です。その理由は、女性の方が会社員を退職する年齢が低いので、老齢基礎年金の特別支給を早期に実施する必要があったそうです。

収入が多いと減額

なお、特別支給は繰り上げ受給とは違いますから、これを受け取ったからと言って、将来の厚生年金が減らされることはありません。ただし、働きながら老齢厚生年金を受給すると支給額が減額されたり、停止されることがあります。

在職老齢年金の支給停止、減額

65歳未満

60歳以上65歳未満で、厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受けるときは、年金額の全部または一部が支給停止される場合があります。基本月額と総報酬月額相当額の合計額が28万円以下のときは、支給停止額0円(全額支給)となります。

65歳以上

65歳以上で厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受ける人は、65歳未満の人とは別の在職老齢年金の仕組みによって、年金額が支給停止(全部または一部)される場合があります。基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円以下のとき、支給停止額0円(全額支給)となります。

高年齢雇用継続給付と在職老齢年金(60歳以上65歳未満)

年金をを受けながら厚生年金保険に加入している人が高年齢雇用継続給付を受けるときは、在職による年金の支給停止だけでなく、さらに年金の一部が支給停止されます。

高年齢雇用継続給付とは

雇用保険の加入期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の加入者に対して、賃金額が60歳到達時の75%未満となった人を対象に呻吟額の0.44~15%に相当する額が雇用保険等から支払われるものです。

給付金を受け、支給制限をクリア

私は61歳から64歳まで、高年齢雇用継続給付金を受け取りつつ、支給制限を受けないように、ぎりぎりの時間パートタイマーとして働いて、親の介護、趣味、旅行をしました。

加給年金

厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある人が、65歳到達時点で、その人に生計を維持されている配偶者または子がいるときに加算されます。

対象者 加給年金額 年齢制限
配偶者 224,700円 65歳未満であること
1人目・2人目の子 各224,700円 18歳到達年度の末日までの間の子
3人目以降の子 各74,900円 18歳到達年度の末日までの間の子

例えば、本人が65歳になった時に配偶者が62歳なら、224.700円が加算されます。これは、会社員の扶養手当のような性格のものです。そして、配偶者が65歳になると、自分も年金を受け取れるようになるので、加給年金も終了します。

しかし、急に、加給年金がなくなると、かわいそうなので、振替加算が支払われます。

振替加算

夫(妻)が受けている老齢厚生年金に加算されている加給年金額の対象者になっている妻(夫)が65歳になると、それまで夫(妻)に支給されていた加給年金額が打ち切られます。このとき妻(夫)が老齢基礎年金を受けられる場合には、妻(夫)自身の老齢基礎年金の額に加算がされます。これを振替加算といいます。

ただし振替加算の額は少なく、配偶者が昭和30年代の生まれだと、5万~1.5万円程度です。

これらの制度は自己申告制ですから、よく勉強しておくことが必要です。

生活資金と厚生年金の比較

厚生年金制度の細かい仕組みは以上にして、老後の生活資金の中で厚生年金をどうとらえるかを考えます。65歳から実際に受け取るときには、老齢厚生年金ということになりますが、問題は、どのくらいの金額を受け取ることができるかです。そしてどれくらいの生活費が必要であるかです。

最低22万円、ゆとり36万円

生命保険文化センターが行った意識調査では、夫婦2人の老後の最低日常生活費の平均月額は22.1万円(年間265.2万円)です。ここに、旅行やレジャー、趣味・教養、耐久消費財の買い替え費用、人との付き合い、孫などへの資金援助などを上乗せすると平均月額は36.1万円(433.2万円)です。しかし、この金額は鵜呑みにできません。次の項目と金額を考慮に入れる必要があります。

  • 住宅ローン
  • 自動車関連経費
  • 固定資産税、所得税・住民税、国民健康保険料

住宅ローン

最近は70歳、80歳まで住宅ローンを組んでいる人もいますから、その部分を考慮に入れないと生活が立ち行かなくなる恐れがあります。

自動車

東京23区に住んでいるのであれば、基本的に自動車は不要ですが、地方都市の郊外であれば必要な場合も多いでしょう。自動車にかかる費用は年間50万円~100万円を覚悟する必要があるかもしれません。

税・保険料

固定資産税、所得税・住民税、国民保険料は、実際に払った金額を合計するとびっくりします。私は、年間で150万円支払っています。私の場合、住宅ローンはありませんし、自動車も持っていませんから、その分の負担はないのですが、税金と健康保険料が高いので、今後、株式ETFなどを少しずつ売却しなければ資金が不足することになるでしょう。

厚生年金は老後資金の基本

老齢厚生年金は、株式のような変動リスクがありませんので、老後資金の基本になる資金です。したがって、老齢厚生年金だけで生活費が賄えるのであれば、それ以外の資金は、思い切ってかなりリスクの高い金融資産に投資できる可能性があります。

9割を株式ETFで運用

私の場合は9割近くを内外の株式ETFで運用していますので、リターンも高く、10年で2倍にすることができました。ここまでくると、リーマンショック級の株価下落が来て、資産が半減しても元本を確保できます。

ロボアドバイザーは鵜呑みのできない

一般的なロボアドバイザーなどは、60歳を過ぎた高齢者には、決まって債券の保有割合を高くするようにしていますが、これは間違いです。ロボアドバイザーと言っても、そのソフトを組んでいるのは人間で、その人間が固定観念でソフトを組むと、「高齢者⇒債券割合増加」というステレオタイプの間違いを犯します。

資産運用は自分でよく考えた方が良いという実例です。