孤独力 1

わたし終いの極意

NHKラジオ第1のラジオ深夜便という番組で精神科医の保坂隆が、「わたし終い(しまい)の極意」を放送しました。その内容を記述しました。

保坂隆

保坂隆は、精神科医、クリニック院長で、慶應義塾大学医学部卒業後、同大学精神神経科入局。米国カリフォルニア大学へ留学後、東海大学医学部教授、聖路加国際病院リエゾンセンター長、同精神腫瘍科部長などを歴任しています。

1952年、山梨県生まれで、今年で69歳、ガン患者とその家族の心のケアに当たるサイコオンコロジーが専門です。

この人の本は既に何冊も読んでいて、とても勉強になります。

今日のテーマは「孤独力です。」

10年ほど前から人生100年時代を健やかに生き抜くためのキーワードとして、「孤独力」を挙げています。

孤独力とは

中高年になってからの一番深い孤独は、定年になってからは、仕事がなくなる、名刺がなくなる、どこどこ会社の何とかです、ていう挨拶ができなくなるということです。この喪失感は、非常に孤独を感じる、つまり、組織を捨てて、肩書や名刺がなくても、それでも一人で生きていける力、それが「孤独力」ということかなと思います。

もちろん、孤独力には、一人だけじゃなくて、みんなでも楽しめる、つまり、「一人で」と「みんなで」の間を自由自在に行き来できる、しなやかな能力のことを「孤独力」と名付けました。

その孤独力を身につけて、どのように磨いていけばよいのか

ちょこっとずぼら

非常に生真面目な人が多すぎて、どこかでぽきっと折れちゃうんじゃないかなと思うような生真面目な人が多い。そこまで頑張らなくてもいいんだよ、そのことを、「ちょこっとずぼら」という言い方にしています。

孤独力の身につけ方

50代になると、どこからともなく、同窓会をやろうよという話が舞い込みます。50台になると、子供が成長して、やや手を離れる。仕事でも充実してきて、時間が取れてきます。こういう時にみんな過去を考えてみる、振り返ってみる。そういうときがくる。それが具体的には、同窓会という形で呼びかけあう。

山梨県出身

僕も、大学、高校、中学、小学校までさかのぼった。小中高は山梨県なので、そこまで出かけて行って出席した。結構出席率が高い。

過去を美化する

そのときにどういう話をするかというと、「俺ってさあ、野球上手かったよな。」とある人が言うと、それを聞いていた誰かが「お前違うよ、お前いつも補欠だったじゃないか。」という話になったら、みんながワイワイ集まって来て、野球の話になってきたように、「俺ってかけっこ速かったよな。」っていうと、「お前いつもびりだったよ。」とかね。つまり人間ていうのは、30年、40年経つと、過去の自分をやや美化して、記憶するんです。これ重要なんです。みんなこういう傾向があるんです。それもとんでもない美化ではなく、やや美化してとらえてるんですね。

現実検討

しかし、同窓会っていうのは残酷で、それを修正させられるんです。「いや、違うよ。」ってね。それは心理学の用語では、現実検討と言います。過去のことについて、やや自己愛的に、飾って記憶していた自分自身を、それを聞いていた周りの人間が、現実的な話で突き落とすわけです。現実検討させられる会が同窓会です。でも、何度も何度も出て行って、例えば中学の同窓会に出ていくと、その東京バージョンを東京でやろうとか、いろんな広がりができる。

自分史につながる

そうして、自分の歴史、自分史を作っている。つまり小学校は、こんな人間で、中学はこうなって、高校でこうなって、大学でこうなって、という心の記憶の定かでなかったところを埋めていったり、やや美化したことろを現実検討してもらったりして、自分とは何ぞやという本が書けるくらいに、自分史を作る作業が50代に10年間続くのかなと思う。

還暦を迎える

それが完成したときに還暦を迎えるのかな、と思うことがある。そこで、60からの人生が始まる。だから、50代というのは、ものすごく意味がある。

ソーシャル・サポート

還暦を迎えたり、65歳になる前の助走期間だから、孤独になった老後の準備をしなければいけない。そこで、心理学で使うソーシャル・サポートという言葉を紹介したい。

自分の周りにいて、自分自身のためにいてくれる人、のことをいう。僕は便宜的に3種類に分けている。

50代はソーシャルサポートの準備期間

自分の場合、誰だろうと考えてください。それぞれについて、2,3人いると良いと思う。一人もいなければ、これから補充すれば良い。50代はまだまだ準備期間なわけだから。

① 情緒的ソーシャルサポート

この人といるとホッとするな、この人と話しているとなんか和むよな、ここに来ると癒されるよな、そういうような心が癒されるような、お友達、配偶者が2,3人、ぱっと浮かびますか。

これは、2,3人思い浮かぶことが多い。

2番目は厄介な奴です。

<明日に続く>