老後資金における年金・商品等の利率比較・利用 4

<昨日からの続き>

老後資金には様々なものがあります。それらについて、現状の利率を確認し、資産全体の中で、それぞれの資金をどう利用するかを考えます。

4.国民年金基金

予定利率は1.5%で、私は利用していません。

自営業の人と会社員等との年金額の差を解消するために創設された公的な年金制度です。

自営業者など向け

国民年金基金制度は、国民年金法の規定に基づく公的な年金であり、国民年金(老齢基礎年金)とセットで、自営業者など国民年金の第1号被保険者の老後の所得保障の役割を担うものです。

2階建て

この年金額の差を解消するための自営業者などの上乗せ年金を求める強い声があり、国会審議などを経て、厚生年金などに相当する国民年金基金制度が平成3年5月に創設されました。これにより、自営業などの方々の公的な年金は「二階建て」になりました。

自営業者とサラリーマンの年金制度の比較

予定利率は1.5%

予定利率は、2020年6月時点では1.5%。 国民年金基金では、掛金がすべて「所得控除」の対象になります。 所得控除は、所得税を計算する元となる所得額から減額できる制度のことで、所得控除が増えれば支払う所得税が減り、この制度の利用で節税も可能です。

安易に脱退できない

国民年金基金の問題点は、一度加入すると、途中で任意で脱退することができない制度となっています。しかし、これは安易に脱退したり換金できない仕組みなので、人によっては良い制度かもしれません。

インフレになると損をする

それよりもインフレになった時には、損をしてしまう方が問題かもしれません。国民年金基金は、加入時の予定利率(現在は1.5%)でずっと運用され、将来的には加入時に約束した年金額を亡くなるまで受け取れる制度です。

予定利率の推移

予定利率の推移は以下のようになっています。加入した時期によって決定した予定利率は生涯に渡って続いていく

・ 平成3年の設立当初:5.5%
・ 平成7年以降:4.75%
・ 平成12年以降:4%
・ 平成14年以降:3%
・ 平成16年以降:1.75%
・ 平成26年以降:1.5%

2%インフレだと損

平成初期に加入すれば5.5%の予定利率が一生適用されるので、かなり有利と思われれますが、今は1.5%ですから、政府・日銀が目標としている2%インフレ率が実現した場合には、損することになります。

イデコより損

私の場合には、40年以上サラリーマンでしたから、国民年金の第1号被保険者ではありませんので、利用したことはありませんが、イデコで外国株式インデックスファンドを利用すれば8%程度のリターンがある状況では、国民年金基金を利用する気にはなりません。

5.小規模企業共済

予定利率は1%です。私は利用していません。

小規模企業共済は、中小企業基盤整備機構の運営する、小規模企業の役員や個人事業主が退職等で事業をやめた場合における、生活の安定や事業の再建を図るための資金をあらかじめ準備しておく共済制度です。小規模企業の役員や個人事業主の退職金制度と言えるもの。毎月の掛金額は、1,000円から7万円までの範囲内で自由に選択できます。掛金は税法上、全額を小規模企業共済等掛金控除として課税所得から控除できます。

予定利率

現在の予定利率は1.0%となっています。

予定利率の変遷

開始日 予定利率
1965年4月 6.6%
1996年4月 4.0%
2000年4月 2.5%
2004年4月 1.0%

加入時期で利率が決まる

これまでの「予定利率」の変更においては、加入してから「予定利率」が変更されるまでの掛金納付月数に相当する共済金等の額は、変更前の「予定利率」に基づく共済金等の額が保証されています。

最高額7万円の掛け金は得か?

私の知り合いで、小規模企業共済に最高額の7万円を毎月かけていた人がいて、自慢していました。2000年以前から始めていれば、予定利率は6.6%、4.0%という高い数字でしたが、これから入ろうと思っても予定利率が1.0%しかないのでは魅力を感じません。

低金利と天下り役人の人件費

国民年金基金や小規模企業共済、あるいは厚生年金基金は、高金利を前提として始められた制度で、2000年以降の低金利下ではあまりうまく機能しないのではないかと危惧します。しかも、これらの制度には、役人の天下りが絡んでいて、それらの人の人件費を払うために、利用者からみると不必要な経費をとられているように思います。

透明性と中抜きのイデコ

それに比べて、最近の企業型確定拠出年金、個人型確定拠出年金(イデコ)、つみたてNISAは、透明性が高く、中抜きをしているので、利用者本位の制度になっているようです。

20年で2.8倍

現に、私が運用している企業型確定拠出年金は、低コストの外国株式インデックスファンドで運用できたので、約20年間で2.8倍以上に増やすことができました。

魅力がない制度

それに比べて、2000年以前にできた国民年金基金、小規模企業共済、厚生年金基金、財形年金は魅力がなくなりました。もし利用するとしても、あまりウェイトを大きくしない方が無難かもしれません。