介護保険と死ぬまでの生き方

在宅ひとり死のススメ

20年前と数年前に両親を見送って、次は私の番です。今のところ、特に健康上問題になるところはありませんが、いつどうなるか、わかりません。

『おひとりさまの老後』の著者の上野千鶴子が、『在宅ひとり死のススメ』を書きました。

その自己PRをYouTubeで語っています。

『おひとりさまの老後』を出してから14年。最後まで3部作、完結しました。最後からもう5年経っています。その間も現場は急速に変わりました。最初に取材を始めたころには、「おうちで一人で死ねますか?」って言ったら、「ご家族いないと無理ですね。」と言われたもんですけど、ここ数年、現場の人達の答えが急速に変わって、「外野のノイズが少なければ少ないほどやりやすい、お一人様でもお気持ちさえはっきりしていれば、私たちがお家からお誘いして、お送りできます。」と言っていただけるようになりました。お年寄りはおうちが好き、だあれもいないおうちでも、おうちが好き、お一人様の私はやがて、要介護になり、ある日おうちで一人で死んでいく。それでも孤独死と呼ばれたくない、そう思って、今度の本を書きました。現場はほんとに変わっています。皆さん方にも安心していただきたいと思います。そう思って、この本を書きました。

団塊の世代

上野千鶴子は昭和23年生まれの72歳で、団塊の世代に入ります。団塊の世代とは昭和22年から24年までに生まれた人たちで、昭和の時代の受験戦争、高度成長期の中心にいて、今は後期高齢者の仲間入りする2025年問題が注目されています。しかし、そのうちのかなり多くの人達がすでに亡くなっていて、後期高齢者の仲間に入れない人もたくさんいます。

団塊の世代の4人に1人は死亡

団塊の世代を含む5年階級の人口は以下の通りです。10年で1割弱の人達が亡くなります。それどころか、昭和22年から26年までに生まれた人は1200万人いますから、既にそのうちの4分の1に当たる300万人以上が亡くなっています。

2019年10月       70~74歳            8,686千人
2014年10月       65~69歳            9,154
2009年10月       60~64歳            9,413

それよりも5歳若い世代は、10年で5%が亡くなっています。

2019年10月       65~69歳            8,709千人
2014年10月       60~64歳            8,980
2009年10月       55~59歳            9,133

60代、70代は、死を具体的に考えなければならない年代です。

上野千鶴子は、ラジオ番組:文化放送『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』で、もう少し具体的にこの問題を取り上げていますので、確認しましょう。

残間:私も「おひとり様」ですと言って任じてます。

上野:大きい顔ができるようになりましたよね。

残間:そうそう、上野さんのおかげですよね。「私お一人様なの」ていうのはむしろ、かっこいい方になっていますもんね。

上野:介護保険が成人式を迎えて21歳になったんですよ。だから介護保険とともに歩んできたって感じですよ。

残間:勇気づけられている人、いっぱいいますよね。私も孤独死っていうのは、何かコメントするときに、「そう言わないで下さい。孤独かどうかわかんないでしょ。」って、いつも突っかかってましたが、一人で死ぬってことについても、ポジティブなイメージになりましたね。

上野:言葉がないから、勝手に作っちゃってね、こういうタイトルで本が売れるとは思わなかったですよ。最初のころは編集者から、タイトルが過激だからって、言われたりして。でもこういうタイトルで本が出せるようになって、本当に良かったです。

大垣:逆説って言えば逆説なんですけど、正論ですよね。

上野:在宅死は、家族がいないと無理ですと言われていたんです。厚労省は在宅誘導してますんでね、『おうちにいてください、おうちでどうぞ死んでください。なぜなら、それが一番安上がりですから。』不純な動機なんですが、お年寄りがそれを望んでおられるのでね。動機が違うんでも同じ方向向くんなら、呉越同舟。上野は今、国策協力者となっています。

残間:終わりまで、みんなで介護保険を一緒に育てていかなければだめだと、おっしゃってて、これは本当にそうですよね。

上野:育てていかなきゃ以前に、育ったんですよ。私は現場の進化をずーとみてきまして、私が研究を始めたころは、「お一人様なんて無理ですよ、おうちで一人で死ぬのは。」だったんですが、ここ2、3年現場は急速に変わって、「外野のノイズが少なくなるほどやりやすいです。ご家族いらっしゃらなければ、ご本人のご希望をかなえられます」って、現場の方がおっしゃるようになったんですよ。だから、ご家族がいらっしゃるほうが、最後はパニクッたご家族から最後は施設か病院に追いやられるかもしれません。

これからは死ぬまでが長いんです。ちゃんと要介護認定を受けて、医療保険も受けて、訪問の医師も看護師も介護士も入っていただいて、支えていただいて、ゆっくりなくって下さいませ。

残間:子供から「一緒に暮らさない?」という悪魔のささやきを待っている人がいるんですよ。

上野:最近の週刊誌に、在宅ひとり親という言葉が出てきて、両親の片方に死に別れた時、やってはいけないリストがありました。

  • 子供と同居する
  • 再婚する
  • 家を売る
  • 施設に入る

これらは、全部やってはいけないこと。

私が研究を始めて10年ちょっとで、常識がこんなに変わっちゃったか、という感じで、びっくりしましたよ。

大垣:最後の期間にどれくらいお金がかかりますか?

上野:30万から300万の間です。

大垣:日本人の終身生命保険の保有高がちょうど400万円ちょっとなんです。非課税枠500万円を生保レディーがローラー作戦で売られた結果だと思う。でも、年々、コロリ系の亡くなり方だと、先にもらえない。先に使えるお金にできればいいんですけど、生保業界は、頑なにやらせない。

上野:でも、高齢者の方は小金をためておられる。独居の方が、相続する人がいなくて、国庫に召し上げられる平均が600万円ある。使ってもらったら良い。健常者にお金はいらないことも分かった。最近現場の方の経験値があげって来て、介護保険が進化したというよりは、介護保険の担い手の経験値が進化した。「僕、独居の看取り、経験が増えたから、医療保険と介護保険の本人1割負担だけで、ちゃんと看取りができます。」とドクターがおっしゃって下さる。ナースは、「死ぬのにドクターは要りません。ドクターは死亡診断書書いてくれるだけで良い。お看取りは私たちだけでできます。」と言い、介護職は「お看取りに、医者も、ナースも要りません。私たちだけでできます。」とおっしゃってくれるようになりました。しかし、介護保険の前の家族の負担は大変だった。でも、人生で一番お金と労力を使ったのは子育てでしょ。だから、ピンピンコロリじゃなくて、ネンネンコロリで、すこしくらいは背負える程度の負担は背負っていただいて、見送った時に、ちゃんと診てよかったね、と言えるくらいことをして、やっとこれで肩の荷が下りたねという解放感と、両方味わえるくらいはやってくれてもいいじゃないと、私は思う。ひっくり返って、おむつを取り替えてもらう姿を見せて、こうやって人間は死んでいくんだよ、というのを教えたら良い。」

残間:おむつを替えるのってどうなるんだろうと、心配していたけど、親にシャワーを浴びさせていたら、シャワーとは別のものが上から降って来て、そしたら、こんなもんかと思って、それで覚悟が決まりましたね。

上野:もう一つは意思決定ですね。それくらいは責任もって、ちゃんとやれよ、と言いたい。

残間:必読書だと思います。晩年に向かって置いておこうと思います。