しばらく前に、TBSラジオの早朝番組で生島宏が投資で儲けた話をしていましたが、その後しばらくすると損をしたと話しました。それが仕組債です。
2023年6月10日(土)の「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」で取り扱いました。
仕組債
金融庁が金融機関に、顧客本位の業務運営に務めなさいと言っているが、本来そうすべきなのに、それをわざわざ役所が言うのはおかしい。
それは仕組債の話だが、この歴史はものすごく長い。1980年代の前半からある話。仕組債とは、ものすごくわかりにくくしてあるオプションや先物のデリバティブの商品。
投資には漠然と2種類ある。一つはお金を入れて仕事をして、事業をして、お金が増える。もう一つは、株を買って、良いことがあると株価が上がり、悪いことがあると下がる。一日で上下するから、安い時に買って高い時に売ればもうかる。一つ目は投資で、二つ目は投機。
経済的にはもうかる時代でなくなってきたので、儲かるものをくださいというと、安い時に買って高い時に売ることになるので、それだけを抽象化したものがデリバティブ。それに直接投資することもできる。例えば3か月後に小豆がいくらになるかということで、実際に小豆を売ったり買ったりしなくても、3か月後に上がっていたらもらうし、下がっていたら上げるという契約だけすれば、小豆は要らない。これがデリバティブ。
これを銀行が売るには、顧客から呼ばれて買いたいという場合にしか売ってはいけないという規制がある。これを不招請勧誘(ふそうせいかんゆう)と言う。この商品については、負けた時に払わなければいけないお金を全部預かって、損をしたらそこから引き出すし、儲かったらそのお金に儲かったお金を加えれば、ものすごく利回りが高くなる。
小豆なら口約束だが、お金を預けているので債権になる。再建になったとたんに、呼ばれて頼まれた人にしか売ってはいけないという規制がなくなる。でも実態は同じ。これは日本の規制のおかしなところ。
この商品を、よくわかっていない人に、「退職金をうちに入れても0.1%しか金利が付かない。この商品なら、うまくいけば、5%、10%儲かりますよ。」と売り込む。このような商品は、実は40年前からある。
そのころは、バブルでやられた会社が、飛ばし、と言って、損の出た商品をぷかぷか浮いているところに移した商品。
僕らからすれば、なんでそんなもの売るの?というもの。
個人にはよく説明していないし、ちゃんと説明してもよくわからない。
他に売るものがないので、仕方なく持って行ってるという感じ。
今は、いろんなところにハンコを押すので、まず、だまされたということにはならない。泣き寝入りになることの方が多いと思います。
やりたいんだったら、小豆みたいなもののほうが良い。なぜなら、最初、証拠金と言って、損をした場合のお金を少しだけ入れておく。やばくなってくると、追証と言って、追加金入れてくださいということになる。それだと、損切と言って、損が少ないけれど、仕組債は、最初から損の全額を払い込む。途中で止めようと思っても、売れないから止められない。本当にひどいことになると最後まで行っちゃう。そんなことが分からない人は絶対にやめたほうが良い。
これは違法でないので、「顧客の立場に立つように」という指導しかできない。違法ではないし、お客もハンコを押しているので、こういうまだるっこしい言い方しかできない。
今回面白かったのは、金融庁が監視するぞと言ったとたんに、ほとんどの銀行はやめてしまった。元々後ろめたいと思っていたということ。合法だと思っているなら、やり続ければよいけど。
こういう商品は、いくらでも作れる。今の状況で、価格が上がっていくものを作ってくれと言われてもできないので、賭けみたいなものを上手に仕立てるしかない。これからも別の形で、新しいものが出てくると思う。おいしい話は基本的に嘘だと思ったほうが良い。
それくらい、金融機関のモラルが低くなってきている。
仕組債のニュース Yahoo! 2023年6月9日共同通信
武蔵野銀行の行政処分勧告へ 「仕組み債」販売で監視委
リスクが高いとされる金融商品「仕組み債」を十分な説明をせずに販売したとして、証券取引等監視委員会が武蔵野銀行(さいたま市)を行政処分するよう金融庁に近く勧告する方針を固めたことが9日、関係者への取材で分かった。
監視委は同行と金融商品開発などで包括提携契約を結んでいる千葉銀行(千葉市)と、傘下のちばぎん証券を対象に同様の勧告をする。
関係者によると、ちばぎん証券は千葉銀や武蔵野銀から紹介を受けた顧客に仕組み債を販売していた。監視委はその際にリスクを十分に説明していなかったとみている。
Bloombergの同日の記事
鈴木財務相、現時点で行政処分求める勧告行っていない-仕組み債販売
鈴木財務相は、「仕組み債は商品性が複雑で、顧客によって理解が困難。購入した顧客がリスクやコストに見合う利益が得られない場合がある」と説明。金融庁では、金融機関が「顧客の投資方針や投資経験を適切に把握し、それに見合った販売勧誘を行っているか、顧客に分かりやすく十分な説明をしているかといった点を重点的にモニタリングしている」と語った。