長期運用の個人投資家をミスリードするリスクを測る期間

家族全員が投資信託に投資

私は個別株式は持たず、すべて投資信託、上場投資信託に投資しています。連れ合いも、娘も息子も同じです。

投資信託は、リスクがあると言われます。リスクっていうくらいだから危険だと思われがちですが、「リスク」=「危険」ということではありません。投資信託でいう「リスク」とは基準価額の値動きの大きさのことです。価格の振れ幅が大きいと「リスクが大きい」、小さいと「リスクが小さい」と言います。

長期運用の個人投資家をミスリードする1年という計測期間

この振れ幅をとる期間は、通常1年間です。投資信託やディーラーの成績を評価する期間が1年間なので、それをそのまま長期運用する個人投資家にも当てはめているのでしょうが、それでよいのでしょうか。

年率リターンは変動しなくなる

下のグラフは、2018年からの私のつみたてNISAの年率リターンです。1年目はマイナス15%近くまで下がりましたが、2年目の2019年にはプラスマイナス5%程度に納まり、最近は7%程度であまり大きな変動がありません。それでも、20020年3月のように新型コロナウイルス・ショックがあると、一時的に大きく下落する可能性があります。

引き出すときにも分散するとリスクは減る

このグラフはつみたてNISAのグラフですから、一度に多額のお金を引き出す場合もあり、その時には受取金額は目減りします。一方で、数回に分けて少しずつ引き出せば、評価額が高い時も低い時もあるでしょうから、変動幅は小さくなるはずです。

投資も引き出しも長期分散

このように、長期運用する個人投資家にとって、投資期間・引き出し期間が長くなればなるほど株式市場の変動に左右されずに、お金を受け取ることができます。

確定拠出年金は一層長期分散

確定拠出年金の場合は、つみたてNISAよりもさらに長い期間(30~40年)かけて貯蓄し、引き出し期間も10~20年という長期間に亘るのですから、さらに変動は小さく、もしかすると、外国株式パッシブファンドで運用しても、銀行預金がインフレによって受ける影響と大差ないかもしれません。

我が家は全員、外国株式パッシブファンド

したがって、私自身も子供たちにも、確定拠出年金は100%外国株式パッシブファンドで運用するように勧めています。

投資信託のリスク・リターン表示の問題点

それなのに、投資信託の成績を表すリスク・リターンは、1年間という短期間で計測する機関投資家の指標ばかり使っています。それでよいのでしょうか?

投資信託に関しては、相変わらず投資家本意ではなく、販売側の都合が優先されていますので、その一例を見てみましょう。

  1. 信託報酬などのコストは、月次報告書の一番後ろの方に小さな文字で書かれている。1ページ目の名称の隣に大きな字で表示してほしい。
  2. 信託報酬などのコストは、会社、商品によって含まれる中身が違うので、個人投資家にとって、何を信じてよいかわからない
  3. 信託報酬などのコストの実績が月次報告書に表示されていないので、実態が分からない
  4. 信託報酬という名称は、顧客本位ではなく、会社本位なので、初心者の中には、報酬をもらえると勘違いする人もいる

最後にリスクについておさらいをします。

肥後銀行のホームページから


リスクをしっかり理解しよう

「リスク」と「リターン」とは?

投資の世界では価格の振れ幅のことを「リスク」といい、一般に「標準偏差」という数値で表します。この数値が大きければ振れ幅が大きく、小さければ振れ幅も小さいというように、投資資産の価格変動の大きさの目安にします。

平均リターン3%、標準偏差4%のイメージ図:10,000円が1年後10,300円 上ブレした場合+4% 10,700円 下ブレした場合-4% 9,900円 1年後の価格がこの間に収まる確率が約68.3%

例えば、ある資産の過去の値動きから、平均リターンは年率3%、標準偏差は年率4%と計算されたとします。
そうすると、この資産は過去さまざまな価格変動があったものの、1年間では概ねプラス7%からマイナス1%(リターン3%±標準偏差4%)に収まるような値動きをしたということが分かります。

  • 「概ね」とは約68.3%の確率を指します。

GPIF 年金積立金管理運用独立行政法人のホームページ

投資のリスクとは

リスクという言葉は日本語で「危険」「良くないことの起こる可能性」といった使われ方をしますが、資産運用の世界では「リターン(収益)の変動」、つまりリターンのブレの大きさを指すことが一般的です。株式や債券のリターンは、配当や利息によるインカムゲインと、価格変動に伴うキャピタルゲインで構成され、将来のリターンは確定していません。それぞれの資産のリターンが毎年どのように推移してきたかを見ることで、各年のリスクが分かります。下のグラフのブレ幅はそれぞれの資産のリスクを表しており、ブレ幅が大きいほどリスクが高いことを示しています。

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主な資産のリスク・リターン

運用の世界では一般的に、株式や債券など各資産のリスクを、リターンの「標準偏差」を使って表します。「標準偏差」とはリターンのブレの大きさを表す数値で、標準偏差が大きい(リスクが高い)ほど、リターンのブレ幅が大きいことを意味します。下のグラフはGPIFが2020年4月1日より適用した基本ポートフォリオを策定した際に使った「期待リターン(予想される収益率)」と「リスク(標準偏差)」の関係を、主な資産ごとに比較したものです。運用資産にはそれぞれ異なった特性があります。一般的に、リスクの小さな資産は得られる収益(リターン)が小さく、リスクの大きな資産は高いリターンが得られると言われています。これを「リスクとリターンのトレードオフ」と言います。

グラフ:各資産のリスク(標準偏差)と期待リターン

もう少し詳しく知りたい方へ:リターンの分布とリスク(標準偏差)の関係について

資産運用におけるリスク(標準偏差)とは、リターンの分布の広がりがどの程度の大きさかを表す指標であり、1年間のリターンがどれくらいブレそうかということを示そうとするものです。株式など有価証券のリターンの分布は、統計学で用いられる正規分布の形状に似ています(一方で、裾野の部分の確率が正規分布よりも高いことが知られています)。正規分布は左右対称の釣鐘型の形をしています。各資産のリターンが正規分布に従うなら、リターンは約3分の2の確率で中心から±1標準偏差に収まり、95%の確率で±2標準偏差に収まることが想定されます。

「日本株の期待リターンは5.6%、リスク(標準偏差)は約23%」*という数値を使って具体的に見てみましょう。
*GPIFが2020年4月1日より適用した基本ポートフォリオを策定した際に使った数値。期待リターンは賃金上昇率を加えた名目値。

リスクは通常、1標準偏差で表されます。「日本株の期待リターンは5.6%、リスク(標準偏差)は約23%」であれば、1年間のリターンは期待リターン5.6%を中心にして、上下23%の間で変動する確率が約3分の2(約68%)であることを意味します。言い換えれば、1年間のリターンがプラス5.6%からプラス28.6%の範囲に収まる確率が約3分の1、プラス5.6%からマイナス17.4%の範囲に収まる確率が約3分の1であると想定しています。逆に言うと、毎年のリターンがマイナス17.4%より大きく下がる確率は約16%、プラス28.6%より大きく上がる確率も約16%となります。

グラフ:日本株の値動きのイメージ