<昨日の続き>
結論は、インデックスファンドが有利と言うことです。
基本をインデックスファンドとして、一部をアクティブファンドや個別株式で運用する「コア・サテライト方式」と言う方法がありますが、それは、アクティブファンドを運用・販売している会社が、金もうけのために宣伝していると考えたほうが良いでしょう。どうしても、アクティブファンドに投資したいというのであれば、それは趣味の範疇に入ります。趣味には、低リターンとコストがかかりますから、儲けは減ります。個別株式は、リターンは同じでコストは減りますが、リスクは高くなります。
YAHOO!JAPANニュース 8/25
急速に人気高まる「アクティブファンド」だが…理論上「インデックスファンド」が有利といえるワケ【公認会計士が解説】
最近とくに人気が高まっているアクティブファンド。関心を持っている人も多いのではないでしょうか。しかし、ノーベル経済学賞受賞者による「現代ポートフォリオ理論」に基づいて検証すれば、実情が見えてきます。公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
ここ最近、急に「アクティブファンド」が人気になったワケ
生徒:最近の新聞に「アクティブファンドが人気」という記事がありましたが、アクティブファンドとは「メリットが高くない運用」ではなかったのでしょうか? 私は、大学の金融論の講義で「インデックスファンドのほうがメリットが高い」と学んだ記憶があります。なぜアクティブファンドが人気なのでしょうか? 先生:おそらく、金融庁が公表した「資産運用業高度化プログレスレポート」が理由でしょう。10年間の運用成績がインデックスを上回ったアクティブファンドの割合は、日本では33%、アメリカでは13%、ヨーロッパでは21%となっていると報告されており、アクティブファンドの勝率は日本が1番高いと称賛されています。この結果を見て、アクティブファンドへの資金流入が増加しているのかもしれません。 生徒:どうして金融庁がアクティブファンドの成果を称えるのでしょう? 先生:アクティブファンドが、資産運用会社の調査活動によって長期的に成長性の高い企業を発掘する機能を担っているからだと思われます。日本企業の企業価値を高めてくれる役割が期待されているのです。 生徒:しかし、日本の資産運用会社が、中長期の資産形成に向かない金融商品を多く作るといった問題は長年指摘されており、その代表例がアクティブファンドではなかったでしょうか? 岸田文雄首相も「資産運用業等を抜本的に改革することが重要」と言っています。それなのに、なぜいまになって金融庁はアクティブファンドに注目を集めようとしているのでしょうか? 先生:鋭い指摘ですね。個人投資家の金融リテラシーは、近年向上しつつあります。一番人気のインデックスファンド「イーマクシス・スリム米国株式(S&P500)」は、残高2兆円を超える規模まで巨大化しました。おそらく個人投資家が「アクティブ運用はパッシブ運用に勝てず信託報酬も高い。インデックス型を選ぶほうがいい」という真実を知ってしまったからでしょう。
「全株式を、時価総額の割合に応じて投資する」のが理想だが…
[図表1]リスク、リターンと満足度の関係
生徒:金融論の授業では、ノーベル賞学者のハリー・マーコウィッツの現代ポートフォリオ理論を学習しました。それによると、「投資家は、高いリターンと低いリスクを求めている。たくさんの投資対象を組み合わせたポートフォリオで、リターンとリスクの色々な選択肢を集めてグラフにすると、左向きに凸になるような領域として描かれる。そこで、投資家は、リターンが高く、リスクが低くしようとするので、その領域のなかでは、できるだけ左上のあるポートフォリオの選択肢を選ぼうとする」ということですね。
先生:その通りです。
生徒:国債や預金など、リスクの低い資産との組み合わせまで考慮するなら、国債のリターンである国債利回りと、リスク資産を組み合わせたポートフォリオのリターンの加重平均になるため、右上がりの直線を描くことができます。投資家は、高いリターンと低いリスクを求めますから、その直線をなるべく左上に位置させるように描きたいのです。すると、リスク資産の組み合わせは、投資可能な領域のグラフと、右上がりの直線の接点となる1点に決定するわけですね。
先生:そうです。この1点を「接点ポートフォリオ」といいます。これが、だれでも投資することが可能で、最も高いリターンと最も低いリスクを実現できるポートフォリオなのです。現代ポートフォリオ理論によれば、リスク資産への最適な投資比率は、すべての投資家間で同一となり、すべての投資対象を時価総額の割合に応じた比率で投資するものになるといわれています。
生徒:理想は、すべての株式を、時価総額の割合に応じて投資するのが最も効率的だということですね。
先生:そうです。それを個人で実行するのは困難なので、接点ポートフォリオと同じ考え方を持つ株価指数に連動するファンドに投資するのが、現実的なのです。接点ポートフォリオと近い株価指数は、全世界株式を対象とする「MSCIワールドインデックス」でしょう。
理論的には「インデックスファンド」のほうが効率的
生徒:なるほど。インデックスファンドは理論的に正しい運用方法なのですね。ちなみに、一番人気のある「S&P500」が、一番効率的だというわけではないのですか?
先生:理論的には、アメリカだけでなく全世界株式を対象とするインデックスファンドのほうが効率的です。ここは人気の違いでしょう。リターンとリスクに大きな違いはありませんから、好きなほうを選べばいいと思います。
生徒:アクティブファンドの人気が出てくると、インデックスファンドがいつか負けてしまう日が来るのではありませんか?
先生:アクティブファンドが高いリターンを狙うのは、むしろ歓迎すべきことなのです。それによって成長性の高い企業が発掘され、企業価値が高まれば、証券市場全体の時価総額が増大しますね。時価総額が増大すれば、インデックスファンドの時価も上昇するので、インデックスファンドが負ける日は未来永劫やって来ないでしょう。今後もアクティブファンドは負け続けるでしょう。現代ポートフォリオ理論に従えば、負けるのが当然だといえます。
生徒:わかりました。私はこれからもインデックスファンドでの資産運用を継続するようにします。
日経 2023年8月28日
新NISA成長枠の株式投信、指数連動型が成績優位
投資信託協会が8月1日、来年始まる新しい少額投資非課税制度(NISA)の「成長投資枠」の対象銘柄リスト第3弾を公表した。対象となった国内公募の追加型株式投資信託(上場投資信託=ETF=を除く)のうち、7月末時点で運用中の株式型(QUICK独自の分類、以下同)ファンドは919本。分類別の構成比率や過去のパフォーマンスなどを調べた。
まず、成長投資枠対象の株式型ファンドを本数ベースでアクティブ型(積極運用型)とインデックス型(指数連動型)に分類すると、アクティブ型が72.7%、インデックス型が27.3%と、アクティブ型が大半を占めた(図表1)。
さらに投資対象地域で区分した投信分類別に見ると、最も多いのは先進国株式型の47.0%(アクティブ型34.6%、インデックス型12.4%)、次いで国内株式型の32.0%(同22.2%、9.8%)となっている。最も少なかったのは、グローバル株式(先進・新興複合)型の9.1%(同6.2%、2.9%)だった。
次に2023年7月末までの運用期間を調べたところ、919本のうち5年未満は33.5%にとどまり、約3分の2のファンドが5年以上のトラックレコード(運用歴)を持っていた(図表2)。運用期間が1年に満たないファンドが6.9%あるものの、運用期間の平均は約9.8年となっており、中長期の運用実績のあるファンドが数多く含まれる。
運用期間が25年を超える長寿ファンドも4.5%あり、なかには野村アセットマネジメントが運用するインデックス型の「積立て株式ファンド<愛称:MIP>」のように、運用期間が54年強という超長寿ファンドもあった。
中長期のパフォーマンスを確認するため、7月末時点で運用期間が5年以上の株式型ファンド611本について、投信分類別に直近5年間のリターン(分配金再投資ベース、年率換算)の単純平均値を図表3にまとめた。
成長投資枠対象の株式型ファンド全体では、23年7月末時点の5年リターン(同)の単純平均は8.9%。これを上回ったのは先進国株式型とグローバル株式(先進・新興複合)型だった。また、投資対象地域で区分した投信分類別にインデックス型とアクティブ型のリターンを比較すると、新興国株式型以外は全てインデックス型のリターンがアクティブ型のリターンを上回る結果となった。
国内株式のインデックス型はアクティブ型を2.0ポイント上回っており、同様に、先進国株式は3.0ポイント、グローバル株式(先進・新興複合)は3.3ポイントそれぞれ上回っている。計測期間の影響もあると考えられるが、年間の差としては比較的大きい。
新しいNISAの成長投資枠では対象のアクティブ型の本数がインデックス型の2倍以上あり、個人投資家がインデックス型のパフォーマンスを上回るアクティブ型を選択するのは容易ではなさそうだ。現在のNISA(一般・積み立て型)でコストの安い海外のインデックス型ファンドに人気が集中するなか、個人投資家の資金をアクティブ型ファンドに呼び込むためには、パフォーマンスの底上げが不可欠だろう。