富裕層に学ぶ外貨投資術の検討5<ポイント4>危機は投資のチャンスと考える

「富裕層に学ぶ外貨投資術」(日本経済新聞社:尾河眞樹)の「参考になること、実践できること」を検討します。

◎今日のテーマ:富裕層に学ぶ外貨投資術の検討5

<ポイント4>危機は投資のチャンスと考える

理屈はそのとおりだが、資金はどうするか

インタビューした6名の富裕層に共通していたことの一つが、大きく相場が下落したタイミングで、比較的大きな規模の投資をしていたそうです。ウォーレン・バフェットも、「チャンスが巡ってきたり大きく勝負に出る。」と言っているそうです。なるほどと思う反面、それができるのかという疑問もあります。

ドンドン値上がりして買いそこなうこともある

もし、その通りにできたとしたら、投資する人はみんな富裕層になれるのではないかという疑問を持ちます。最近の経験では、2017年の初めころのことを思い出します。2015年から2016年にかけてチャイナショックが発生し、株価が大きく下落したことがありましたが、比較的短期間で持ち直し2017年初めには、アメリカの株式市場はかなり高い水準にありました。その頃評論家は、もうこれ以上上がるとバブルになるので、上げ相場もそろそろ終わりだと言っていたのです。しかし、現実にはその後1年間、相場は上げ続けたのでした。つまり危機は来ずに、投資のチャンスがなかったということになります。

相場が下がると買う気が失せる

それでは、リーマンショックの時に、チャンスだと思って投資できるのでしょうか。私の連れ合いは、リーマンショックの直前に1000万円投資して、評価額が半分以下になった時には、売りたいとは思いましたが、追加で買いたいとは思いませんでした。私自身も、株価が上昇しているときは買いたいと思いますが、下がっているときは、どこまで下がるか不安で、追加購入したいという気持ちにはなかなかなりません。何時が株式市場の底かが分からないのです。そのチャンスをものにするには、何回か修羅場をくぐって、冷静さを失わないようにならなければなりません。

手元資金を用意することは機会損失

もし、投資のチャンスが冷静に判断できたとしても、投資するためには、手元に現預金の資金を持っていることが必要です。ところで、チャンスを生かすには、どれほどの資金を用意しておく必要があるでしょうか。例えば、手元に1割の資金しかなければ、それを全額、底値で買って、その後1.5倍になったとしても

0.9+0.1✖1.5=1.05

ですから5%しか増えないことになります。その5%に期待して、手元に現金を常に1割用意しておいてもチャンスは10年に1回しかやってこないのであれば、たいしたことはありません。

今度は、手元資金を5割にしたらどうでしょうか。

0.5+0.5✖1.5=1.25

となりますから、25%増えることになります。0.5の資金が0.75に増えるわけです。1.5倍になるのが10年に1回の割合で訪れるとすると、複利では1年約4%増えたことになります。4%の利回りなら、チャンスを待たずに最初からアメリカのSPY(アメリカSPDRのS&P500のETF)に投資して、8%の利回りを狙った方が、成功する確率は高いのではないかと思います。

チャンスを待たずに最初から投資する方が良いのでは?

結論としては、危機を投資のチャンスとしてとらえるより、最初から全額をSPY(アメリカSPDRのS&P500のETF)やVOO(バンガード社のS&P500のETF)に投資しておいた方が良いのではないでしょうか。