社会人とお金2

若い人へのアドバイス

私は長いサラリーマン人生の間に、資産運用関係の仕事に携わって来ました。その知見をもとに、就職が内定した自分の子供にお金のアドバイスをしました。このブログでは、数回に分けてそれを説明します。

失敗談

それに先立ち、私が長年のサラリーマン人生で携わった資産運用の商品や制度について、ユーザーの立場から振り返った時に、失敗した、こうすればよかったということを述べたいと思います。

① 確定拠出年金(DC)

DCは、それまでの制度だった税制適格年金の問題が発覚したことと、1990年頃のバブル崩壊で株式相場が低迷したことなどで導入された制度です。税制適格年金は、従業員の退職金等の原資として会社が積み立てた資金を経営者が使ってしまい、従業員には支払われないという問題が発生しました。税制適格というのは名ばかりで、税制上の優遇措置が取られ節税にはなるものの、その積立金が使い込まれてしまったため、従業員にその恩恵が届かなかったのです。そこで原資を会社が支払い、その資金を従業員の指示に基づいてほかの金融組織が運用する仕組みとしてDCが導入されたのです。私が勤めていた会社も2000年頃にこの制度を導入したのですが、今から思えばいくつかの問題がありました。

・みずほ銀行に任せたこと

みずほ銀行は各種手数料と信託報酬(経費)が高いという問題があります。また、私の会社の従業員の9割が、DCの運用を銀行預金にしたのです。この人たちは退職後に年金を受け取るとき、なぜ増えていないのかと不思議に思ったり、不満を口にしたようです。しかし2000年頃は、確定拠出年金に関する知識をほとんどの人が持っていなかったのですから仕方がないのかも知れません。現在は投信ブロガーも増えましたが、ブログが広まったのは2002年からといわれていますので、一般のサラリーマンは情報入手先が少なかったと思われます。しかも、2008年にリーマンショックが起こったため、その直後、銀行預金で運用していた人はホッとし、株式で運用していた人は大変な目に遭ったのです。しかし、リーマンショック直後に退職し受給時期を迎えた人は損失を被りましたが、その後も株式で持ち続けた人は、株式の投資信託で運用してよかったと思っていることでしょう。私自身も、内外の株式で運用したので、原資の2倍にまで増えています。

・初期設定(デフォルト)を銀行預金にしたこと

りそな銀行が2018年5月から確定拠出年金の初期設定を「定期預金」ではなく「投資信託」に変える方針を表明しました。つまり、それ以前は定期預金がデフォルトだったのです。確定拠出年金は税制上の優遇措置があるので、リスク・リターンの高い株式で運用するのが常道ですが、銀行預金がデフォルトだと、それを推奨しているように受け止められた可能性が高かったと思います。なお、私はその時に全額を外国株式で運用することを選択しました。今から振り返ると、確定拠出年金の特長をよく理解していたのだと思います。

・選択肢が多すぎたこと

運用商品の選択肢が少なければ、一つ一つについて良く調べますが、選択肢が20、30もあると説明文を読むだけでもうんざりしてしまい、まじめに検討し無くなってしまします。選択肢が多いのは、金融機関側の作戦であると同時に、「選択肢はたくさん用意しました。」という責任逃れだと思います。このやり方は非常に不親切です。

・経営も労働組合も運用損を過度に恐れたこと

経営側、労組側とも、運用損が出ると社員から苦情が発生するので、元本を確保できる銀行預金に逃げ込みたくなるのです。その結果、確定拠出年金のメリットを発揮できない人が多いという問題があります。